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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
17/216

05-01 【死と病気と恐怖 そして火】 Ⅰ

沢山の感想、誤字指摘など有難うございます。

皆さんに楽しんでもらえるように頑張りますね。

―【森の中】




「【蓮華】っ!!」


 全力で駆け抜ける。

 目指すは槍を背中から生やして動きが極端に鈍っているウサギ。開幕で槍を背中に突き刺したのだ。狙う所はその頭部…! 右腕を思い切り振りかぶり、技の発動とともに振り下ろす―!


―ヤスオの攻撃!! 【蓮華】発動!!

―ファングラビットに即死ダメージ!! ファングラビットを倒した!

―ヤスオには経験値が入らない!

―ファングラビットの牙1個獲得!

―ファングラビットの毛皮1個獲得!


 ログを確認し消えていくウサギから目を離し警戒を続ける、なぜならば―


―ファングラビットBの攻撃!!


「ぐっ! ま、だだぁ!!」


―ヤスオに小ダメージ!!


 2匹目のウサギが突っ込んできたのを横に飛びのいて直撃を回避する。それでもウサギの攻撃は鋭く牙が僕の太腿を斬りつけた、飛び上がるほどの激痛ではないけどズボンが綺麗に切り裂かれ血が滲んでいく。


 僕は剣を構え直しすかさず距離をとる。

 目の前には後2体のウサギ、逃げ道は…いや、逃げきれる可能性は低い。ならば、戦うしか無い。今僕は初めて複数を相手に戦っていた。望んで戦っている訳ではない、途中でモンスターが増えたのだ―





…………






 ショートソードの消費を出来るだけ抑えようとこの日も槍をもってモンスターの狩りに出かけていた。


 使用回数が残り【5】回になっているこの剣をこれ以上酷使するのは気分的にも戦闘的にも厳しい、ハウンドが現れた時だけは最悪使おうと思っているけど、後は護身用のつもりで持ち歩く予定だ。これからはこのファングスピアがメインの討伐武器になる。


 ちなみにこの槍、食料集めには結構便利だったのでそこそこ愛用している。川辺の魚を屈まずに指し抜いたり、小動物を刺したりだ。勿論使用回数が減ってたので今持ってきている槍は2代目だったりする、初代は1回もモンスターを倒さずに亡くなった。でも役に立ってくれたからきっと満足だと思う…多分。


 この数日安定してウサギを数体倒す事が出来ている、その内1回は槍でウサギを倒す事に成功していた、最初は刃の部分がいつ壊れるかとひやひやしていたけどこれが思いの外頑丈で緩んだ紐を追加して縛り直すことで問題なく扱えている。使用回数はちゃんと減っていたけど…


 ショートソードと違ってリーチがあるこの武器は基本的に両手を使って戦うので力を入れやすい。ただ振り回したりなどは意味が無いので自動的に【突き刺す】行動しかとれない、動かない物やゆっくりなものならともかく戦闘中襲い掛かってくるウサギに当てるのは至難の技だった。それでもウサギとは何回か戦ったお陰でパターンが読めてきていたので、攻撃時の隙や奇襲での確実ヒットと何とか倒せている。


(今日使ったら明日はまた作り直しだな、使用回数8回程度って事はウサギを倒すのに3回使ったから頑張っても2体まで、【槍修錬】とかそう言うスキルは覚えてないし、数を揃えて持っていくしか今の所数を倒す方法はないか。)


 ウサギと戦うのは相変わらず怖い、ハウンドなんてその倍は怖い。でも僕はちゃんと戦えていた、ちっぽけな勇気でも僕は確かに明日に向かっているんだと思う。少しは立派になれているだろうか…


(なんて、この程度じゃ話にもならないよな。)


 自分で考えて自分で苦笑しつつ何時も通り茂みの中を歩いて行く。

 茂みの中を歩くのにも慣れたもので、息を殺して身長に進む。流石に動けば音も聞こえるけど、奇襲が見破られた事は今の所ない、但し動物は除いて…ウサギなら簡単な音でも見破られそうだけど、モンスターの聴覚は動物より精度が悪いんだろうか? あれだけ近づいているのに気づかれた事がない。

 それとも、ウサギはモンスター…動物とは違って強い存在だから逃げる必要が無いから油断しているだけかもしれない…まぁ、勝手な想像だけど。


(…っ…居た…数は…よし、1体だ。)


 幸先良く1体のウサギを発見出来た、槍を持って相手の隙を探っていく。

 槍では【蓮華】はおろか【先手】も使えない、純粋に今の僕自身の力だけで戦わないといけないのだから、確実に勝てる状況を作らないといけない。

 額から流れる汗も気にせずに浅く呼吸をしながらいつでも飛びかかれるように準備する、今日も勝つ、勝って生き残るのだから。


(その為にも…強くなるんだっ!)


最高のタイミングで僕は飛び出した―!!




…………




 あの後槍で奇襲したまでは良かった、後は槍を使って勝つだけ…そう考えていた所にこのウサギ達が乱入してきたのだ、1体目のウサギに突き刺した槍はすでにウサギが消えているので其処に転がっているけど、それを取りに行く時間はないしあれ1本でこいつらに勝てるとは思えない。

 だからこそ今ショードソードを持って構えている……


(残り使用回数は4回…【蓮華】は今のHPを考えて後1回が限度…焦らなければ…)


 だけど目の前には複数のウサギがいる…1体でも辛いというのにさっきの倒したウサギを含めれば3体も居るのだ、心臓がバクバクと鳴り響いている逃げきれるなら逃げてしまいたいが逃げ切れなければ…? 更に追加してしまったら? もしかしたらハウンドまで追加してしまえば…


 こいつらならちゃんと戦えば1~2回攻撃すれば倒せる。ダメージを覚悟で戦うしか無い―!


「油断はしてなかったのにな…僕は肝心な所で駄目だ…いくぞウサギ共…! 僕は生き残るからな!! 【蓮華】!!」


―ヤスオの攻撃!! 【蓮華】発動!!

―ファングラビットBに致命的なダメージ!!


「ギュイイイ!? シャアアアアアアッ!!」


 全力の一撃を叩き込んだにも関わらずウサギに耐えきられてしまった、まずい…僕のHP的にも、使用回数的にも…! 


―ファングラビットBの攻撃!!

―ミス! ヤスオは回避した!!


 今にも死にかけているウサギの攻撃はなんとか避けれた―が、今まさに飛びかかってきているウサギを避ける術は僕には無い…!


―ファングラビットCの攻撃!!

―ヤスオに大ダメージ!! 残り4割


「ごっ!? ……ま、だだぁああああ!」


 突撃をモロに食らってしまう、牙が脛を切り裂き血がみるみる内に溢れていく。あまりの激痛に涙が出てくるがその場に倒れる事無く僕は死にかけているウサギ目掛けて剣を突き刺す―! 


「し、ねぇぇぇ!!」


―ヤスオの攻撃!!

―ファングラビットBに絶大なダメージ!! ファングラビットBを倒した!

―ヤスオには経験値が入らない!

―ヤスオは【速】が1上がった!

―ファングラビットの牙1個獲得!


 ズキンズキンと足が痛むし、血が出てきているせいでフラフラしてきている。

だけど泣いたり叫んだりしている暇などない、生き延びるためには目の前のウサギを倒すしか無い―!


「後はぁ! お前だけだああああああっ!」


「ギイイイイイイイイイイイイイッ!」


―ファングラビットの攻撃!!


「何度も何度も同じ攻撃じゃ! 僕でもいい加減に慣れるんだよぉ!!」


―ミス! ヤスオは回避した!!


 何度も何度も命をかけて戦っていれば馬鹿でも戦い方なんて覚える。

 攻撃を外し着地したウサギ目掛けて「頼む、これで死んでくれ」と祈るような気持ちで僕は技を繰り出した。


「おおおおおっ!! 【蓮華】ええええええ!!」


―ヤスオの攻撃!! 【蓮華】発動!!


「ギュイイイイイイイイッ!」


 飛び跳ねてきたウサギを薙ぎ払うように全力の一撃を叩き込む!



 だけど―



「ちく…しょおおおおおおおっ!!」



 ウサギは―



―ファングラビットCに致命的なダメージ!!


 死んでいなかった。死にかけてはいるが未だに逃げず此方を睨みつけている。

そして僕も【蓮華】の連続使用でHPが限界だ、ずしっとのしかかって来るような疲労が全身を襲い…そして…


―ショートソード【01/40】


 残り回数たった1回…今からこれを投げ捨てて槍を取りに行くなんて今の僕の体力では出来ないしそんな余裕もない。死にかけているとはいえ素手で勝てるほどモンスターは甘くない…そしてダメージが深くて動けない今しか、チャンスは…無い。


「畜生…畜生……う、うわあああああああああああああああああああっ!」


―ヤスオの攻撃!!

―ファングラビットCに絶大なダメージ!! ファングラビットCを倒した!

―ヤスオには経験値が入らない!

―ファングラビットの牙1個獲得!

―【カードスロット】がランクアップ!

―使用回数限界。 ショートソードが壊れた。




 その日僕は、大切な物を一つ失った―







2015/09/11 ご指摘を受け修正完了です。

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