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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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38-02 【絶望的な戦い】 Ⅱ


 ビリビリとした威圧感の気圧されながらもケルベロスとの戦いが始まった。

 どう考えても今の僕達では勝つ所かダメージを与えられるのかすらわからない程力量差があるだろうが、それでもやるだけやらなければ此方が死ぬだけだ。


 ショートソードを構え【先手】を発動させ―


「っ!!」


【遅イナァ!】


 しっかりとケルベロスを見ていた筈なのに、僕の眼前にケルベロスが居た。

 そして僕が何をするよりも早く前足を叩きつけてくる。


「っあああああっ!」


 間一髪振り絞れるだけの力を振り絞り横っ飛びの飛び跳ねて攻撃を回避するが、直ぐ様もう一撃今度は反対の前足を叩きつけてくる。


 遊んでいるのか力を溜めているのか少しだけ上空に止まったままの足を見据え直ぐに転がって攻撃を回避する、同時に地響きが地面を少し揺らしている。何度も転がり体勢を整えて立ち上がると僕が先ほどまで居た場所に足を叩きつけたケルベロスが居た。


 ブラウンベアーの手より巨大な前足をあの威力と体格で叩きつけられれば今の装備やステータスでは死にはしないだろうが、動けるかわからない程のダメージを受けるだろう。幸い攻撃のモーションは少しだけ緩やかだ、其処を攻め立てていくしかない。


「おおおおっ! 【螺巻撃】!!」


 フィル君が高くジャンプし真上から技を放ち飛び込む。

 穂先がケルベロスの胴体に命中する、が。


「さ、刺さってねぇ!?」


【羽虫如キガ、我ニ痛痒スラ与エラレル訳モナカロウガッ!!】


「しまっ!! があああああああっ!」


 ケルベロスが着地しようとしているフィル君に全身を思い切り震わせた体当たりを仕掛ける。

 防御魔法を展開する時間すら与えず、フィル君を捉えた巨体はそのままフィル君を吹き飛ばしてしまう。


「がはっ!? ご……」


 吹き飛ばされ場所で起き上がろうとするが、ダメージが酷く呻くことしか出来ていない。体当たりで何処か折れたのだろう、口からは血が溢れている。


「【連操魂】!!」


 カノンが魔法を唱え剣や槍、盾を持った人形を動かしケルベロスに突撃させる。攻撃力は無いかもしれないが少しでも囮になってくれれば僕がフィル君を助けに回れると考えてくれたようだ。


 戦士の姿をした人形や少女の姿をした人形がケルベロスの周囲をクルクルと回転しながら攻撃し翻弄する。


【小賢シイナ、ソレシカ出来ヌ弱キ人間ノ悪足掻キカ…【豪炎のブレス】!】


 三つの口から炎のブレスが周囲に撒き散らされる。

 回避できない人形達が一瞬で焼き焦がされ炭化しボロボロと落ちていくが、それでもケルベロスがブレスを使っている間がチャンス、急いでフィル君の場所まで走りより【治癒】を唱える。


「フィル君! 大丈夫か!」


「ごほっ! あ…あぁ……ハウルからHP上がるカード貰ってて…良かったぜ…でも、すまねぇ、勢い込んでやってきて、役に立ててねぇ」


「あれに善戦出来るならそもそもメインメンバーに呼ばれてる。立てるかい?」


 僕が言うより前に槍を杖代わりにして起き上がっていく。

 治癒1回では回復しきれていないらしく、ケルベロスの隙がある内にもう一度【治癒】を唱えフィル君を回復させた。


「大丈夫だ、もう行ける! 攻撃してもダメなら引っ掻き回すしかねぇな…ヤスオ、指示を頼むぜ」


「わかった。絶対に奴の正面に立たないように、そして出来る限り後衛の3人からケルベロスの関心を僕達に向けるように動いて欲しい」


 フィル君が一撃で死にかける攻撃を喰らえば、カノンはまだしもノーヴァ君や混乱して動けていないミキじゃ確実に死ぬ。


「僕とフィル君で左右から牽制していこう」


「わかった!!」


 その場から離れケルベロスの両隣に走り抜ける。

 既に人形は全て散らされ、何本かの矢が突き刺さっているが、その動きは全く鈍っていない。


【フム……アレデ死ナヌカ。余程生キ汚イヨウダ】


 此方を嘲笑するケルベロス。

 人間に対して余程恨みでもあるのだろうか、その言葉全てが人間を否定する様な事ばかりだ。話を聴く限りではここに居たボスモンスターが倒され、復活したのが目の前にこれなのだろうから、人間に恨みがあるのは当然かもしれない。


「それが人間さ、だからこそ強くなれる物だよ」


 ノーヴァ君が周囲を回るように走りながら矢を射続けていく。

 中級に近い実力を持つノーヴァ君が放つ矢はまるでマシンガンの様に無数にケルベロス向かって突き刺さる。


【コノ程度デ強サトハ、笑ワセルナ】


 全身に矢が突き刺さっているというのにダメージを受ける所か怯みもしないケルベロス。あれだけの攻撃を受けて殆どダメージになっていないとなると、僕やフィル君の攻撃では牽制になるかどうかすら……


【ソロソロ目障リダナ。貴様等ヲ殺シ生皮ヲ剥イデ、アッチノ人間ドモニ見セツケナケレバ】


「フィル君!」


「おうっ!」


 動き出そうとする間際を狙い、剣で斬りつける。

 反対側からはフィル君が渾身の気合を込めて槍を突き刺した。

 だがそれすらも意に返さず、ケルベロスの6の瞳が動き続けるノーヴァ君とカノンに視点を合わせた。


「まずいっ! カノン! ノーヴァ君避けろ!!」


【【ダブルアタック】【遠双連牙】!!】



―ケルベロスの【ダブルアタック】!

―ケルベロスの攻撃! 【遠双連牙】発動!!



 立ち上がり両の前足を下に振り下ろす、たったそれだけの行動で両側に4の衝撃破が発生しノーヴァ君達を襲う。


「おおおお! 【土壁】! 【風壁】!!」


―【割り込み】ヤスオは【土壁】を唱えた!

―【割り込み】ヤスオは【風壁】を唱えた!


 直撃するまでに合った時間に何とか割り込んで防御魔法を発動させるが、土の壁も風の壁もあっさりと砕かれ、尚も威力を弱めずに衝撃破が二人を襲う。


「………ぐうぅぅぅ!!」


「フィル!? あああああああっ!!」


 ノーヴァ君の直ぐ近くに居たフィル君が目の前に立ち塞がり衝撃破の直撃を受け吹き飛ばされる。防いだのは2つの衝撃破だけで、残りの2つも吸い込まれるようにノーヴァ君を切り刻む。


「ちく……しょう……が…」


 立ち上がろうとするフィル君だが、既に力が入らずその場に倒れ気絶する。ノーヴァ君もギリギリ生きては居るようだが、全身から血が溢れだし動く事も出来ずにいた。


「っ! カノン!!」


 こっちはもっと悲惨だった。

 ミキを庇うように彼女が立ち塞がり、4回の衝撃破をたった一人で受け止めていたのだ。近くに居たノーヴァ君とは違い、完全に遠距離に居た彼女をカバーするには距離が遠すぎて、助けに行けなかった。


「………ぅ…」


 カノンもギリギリ生きていると言った方が正しいだろう。

 あの一撃だけで、僕達のパーティは僕とミキを残して全滅してしまった。


【サテ…後ハ、アノ後ロノ小娘ヲ殺スカ…貴様ハ最後ニ殺シテヤロウ。ソノホウガ、絶望モ増スダロウ。コノ程度デハ溜飲モ下ガラヌガ、我ガ復讐ノ糧トナレ、人間】


 ゆっくりとミキの方に歩きだすケルベロス。

 その前に僕は立ち塞がった。


「やめろ……」


【ドケ。貴様ハ最後ニ殺シテヤル。イヤ…逃ゲテモイイゾ? 我ガ恐怖ヲ伝エヨ。ソウスレバ、生カシテヤロウ】


「ふざけるな…! これ以上……これ以上やらせるかあああああっ! 【トランスブースト】!!」


―ヤスオの【トランスブースト】発動!!


 力が湧き上がり、漆黒の鎧が全身を覆っていく。

 目線が高くなり全体的な力が上がるのを感じた、切り札トランスブーストを発動し黒き鎧の騎士の姿になっていく。


「これ以上、誰も傷つけさせは…しないぞ!! モンスタァアアアアッ!」


 叫びケルベロスに突っ込むが、それでも尚ケルベロスは笑っていた。


【無為…アマリニ無為ヨ。我ガ慈悲ヲ無駄ニスル愚カモノ、ナラバ……コレハドウスル?】


 そう言って再び立ち上がり先程と同じ体勢を取る。

 ゾワリと、寒気と危機感を感じ、動こうとする前にケルベロスが技を放つ―


―ケルベロスの攻撃!! 【通双連牙】発動!!


 フィル君達を一撃で戦闘不能にした一撃が放たれる。



 僕ではなく………ミキに。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


「え……あ……わ、私…し、ぬ……?」


 あの攻撃を喰らえば、ミキならば確実に死ぬ。

 頭の中の思考を全て振り切って、ただ全力で走り抜けミキの前に両手を広げて立ち止まる。


 そして、僕の意識はそこで途切れた― 


―【行動放棄】! ミキをカバーした!

―ヤスオに絶大なダメージ!!

―ヤスオに絶大なダメージ!!

―ヤスオに絶大なダメージ!!

―クリティカルヒット! ヤスオに致命的なダメージ!!

―ヤスオは死亡した。






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