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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
158/216

36-09 【大激戦へ向かう者達】 Ⅸ

除雪ばかりでテンションが下がります…ひ、膝がががが(汗


誤字指摘ありがとうございます。

今は色々あって時間が取れず感想返しや修正が出来ませんが

とても助かります。

 それは一番初めに誰が気づいたのか、僕達がどんどんと先に進んでいる最中に後ろの方から一直線に気配が近づいているのを感じ、全員が足を止めていた。初めはモンスターかと思ったが、ミキもイクスさんも妙な反応をしていたのでもしかしたら敵ではないのかもしれないと、今は気配を感じながら待機している。


 やや暫くして見えてきたのは僕達の殆どが知っている姿だった。黒鋼の防具に身を包み背中に槍を括りつけた少年の姿、そう、フィル君が此方に向かってきていた。


「はぁ…はぁ……やっと、追いついたぜ」


「フィル君…」


 先ほどアルスさんからもしかしたらフィル君が来るかもしれないとは聞いていたから、不思議と納得できた。きっと僕の予想が正しければ、彼は。


「ヤスオ、俺をお前のパーティに入れてくれないか、俺、自警団を辞めてきた。頼む!!」


 僕に向けて思い切り頭を下げるフィル君。


「何でまた急に? あんた金欲しいの?」


 ミキが心底不思議そうにフィル君に問いただすがそれをすぐに否定する。


「んな訳ねぇだろ。金がほしいならいつも通りにヤスオ達とダンジョン潜るだけだ」


「んじゃまたどうして?」


「これは俺のケジメなんだ。ダチに危ない戦いを任せて俺一人安全な場所で闘うなんて出来なかった。勿論あっちだって戦闘があれば激戦になる、でもあっちには沢山の頼りになる仲間が居た。俺は、ヤスオ達と一緒に戦いたかったんだ」


 しまいには恋人に最悪な役回りまでさせてしまったと、フィル君は自嘲する。


「俺がこうなる前にはっきりと答えを決めておけばって思うよ。後でエルには土下座しなきゃな。ヤスオ…頼む、俺をお前のパーティに入れてくれ!」


 頭を下げ続けるフィル君。

 その近くではティルさんが驚いた表情で僕とフィル君を見つめている。


「そうか、フィル。君もその道を選んだか。どうするヤスオ? 決めるのは君だ。彼はまだ未熟だけど潜在力は高い、この先も足手まといにはならないだろう」


 ノーヴァ君は僕の答えを待っている様だ、それがなんであれ彼は肯定してくれるだろう。カノンやミキ、皆もどうやら同じ様子で僕達を見つめている。


 今回の事、褒められた行動じゃないのは僕にも分かる。

 フィル君は自警団で、彼等には彼等の役目があった、確実に戦闘になるかもしれない状況で、戦力が土壇場でいなくなると言うのは、あってはならない事だろう。頼りにしていた味方が、自分の都合だけでいなくなられたら戦略の立てようも無くなる。


 でも……そこまで僕達と一緒に戦いたいと言う言葉が嬉しくない訳がない。僕達は彼に信頼されたんだと言う事がわかる。大切な仲間が自分だけを置いて戦地に向かってしまったと考えれば、今の僕なら手伝いたいと思ってしまう…きっと僕もフィル君も子供なんだろう。いや、フィル君はまだたったの15歳だ。高校生になったばかり位の子供が、命を掛ける戦いに自らの意思を持って向うのはきっと凄い事だと思う。


「自警団は大丈夫なのかい?」


「あぁ、団長…いやファッツもハウルも俺がこうするってわかってたみたいだ。流石に遅すぎるって怒られたけどさ。俺もガキだよ、もう少し早く決めてればこんな事にはなってなかったのにさ」


「きっと、フィル君は自警団が大好きだったんだよ、町を護る事に誇りを持っていた…だから決められなかったんだろう?」


「あぁ…挙句の果てにはエルに酷い事させちまった……なんて情けねぇ」


「後で僕も一緒に謝るよ、ファッツさん達や、エルちゃんにもね」


「おいおい、これをやったのは俺だ、ヤスオは…」


 慌てて止めようとするフィル君に僕は続ける。


「パーティメンバーがやったことだ、リーダーである僕にだって責任はある、だろ?」


「……ヤ、ヤスオ…!」


「僕達は補助だ、本格的に闘うのはアルスさん達だけど、その力貸してくれるかい?」


「あ、あぁ!! 俺の力をお前に託すぜヤスオ!! いや、兄弟!!」


 ガッシリと握手を交わし、僕達は本格的なパーティになった。

 フィル君が居てくれるならとても心強い。


(いいなぁ、男と男の友情とか…てか彼女までいるんだよなぁ…俺色々と負けてね…)


「おーい、其処の大根や、何力尽きたように倒れこんでるんだお?」


「え? ………あ、アルスさん?」


 ティルさんの呆れ果てた様な声に思わず振り向くと、其処には子鹿の様にプルプルと震えながら地面に倒れこみかけているアルスさんが居た。何かブツブツ呟いてるのは何なのだろうか。


「……ダメー……ジ……?」


「気にしなくていいよアリア。アルスのこれは日常茶飯事だから」


「前衛のファイターが日常茶飯事にプルプルしてるのはどうよ……」


 ミキの突っ込みに更に倒れこむアルスさん。

 な、何かあったんだろうか?


「ヤスオ君、ヤスオ君……」


「あ、はい。というか何故いきなり君付けに…」


「俺も友達と恋人が欲しいで、ごふっ!?」


 言い切る前にアリーさんに思い切り踏まれるアルスさんが其処に居た。


「お! おのれアリー! 其処をどけ! 俺の俺の未来が!! 男の友達増やす計画があああああ!」


「こんのお馬鹿!!」


 げしげしと蹴られるアルスさんを見て、アリアちゃんを除く皆全員が流石に微妙な表情をしていた。僕もまぁ…どうしたもんかと見ていることしか出来なかった。ボスモンスターを倒しに来ているのにこのゆるさは凄いなぁ。


「さて、そろそろ先に進みましょうか。おそらくボスも待っていると思いますぞ」


 オッターさんの一言で気を取り直した僕達は更に奥底にと進んでいくのだった。



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