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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
156/216

36-07 【大激戦へ向かう者達】 Ⅶ

最近特に寒いですね。

皆さん体調管理にはどうかお気をつけ下さい。

日々の精進が大切です(ぐっ

私はよく風邪を引きますが(何


プリンメンタルなので、否定オンリーだけの感想を見るとよく凹みます。

気をつけないといけませんね。 


―ホープタウン 門前 緊急会議室



 急遽設置されたテント型の会議室には冒険者や自警団がそれぞれ雑談を交わしていた。

 一部の冒険者達が監視に向かっているが、【念話】での緊急通達などは特にないらしく、それぞれが落ち着いて装備の点検などを行っていたりする。


 冒険者パーティであるカトル達もこれからの事で話し合っていた。

 但しこの中にシーフのコリーだけが混ざっていない。


「コリーの奴大丈夫かしら」


「念話で会話出来てるんだから大丈夫さ、それにしてもブラウンベアーが確認されてないのは有り難いね、あいつらが複数体混ざっているだけでかなり辛い戦いになるし」


「パライズモスも少ないみたいだねー」


 メイジのレティカが間延びした口調で続く。

 土属性がメインの彼女にはパライズモスはできれば戦いたくない相手だ。数が少ないと言う情報はとてもありがたかった。カトル達前衛はそれぞれ魔力を込めた水瓶を幾つか持ちあわせているので今回の対処は容易だろう。


「しかし…前回もここで大襲撃があったらしいじゃないか…僕達は丁度その時いなかったけど、珍しいな…こんなことが立て続けにおこるなんて」


「よくないことは連続で起きるものよ。とりあえず出来る所まで頑張りましょ?」


「そうだな…お? あれは、フィル君じゃないか。急いで走ってどうしたんだろう?」


 会議室に飛び込むようにやってきたのは先ほどまで居なかったフィルだった。






「ごめん皆! 遅れたっ!!」


「気にすんなフィル。まだまだ敵さんはやってきちゃいねぇよ。ったく、今年は笑えるくらいにモンスターに襲われてるな」


 おどけるように言うファッツに隣りにいたマリーが笑顔で続く。


「それじゃこれが終わったら今度は沢山良いこと有りますね」


「ははっ、違いねぇ!」


「笑い事で済めばいいのだがな。だが今回の冒険者の質はかなりいい方だ。基本俺達レベルの高いメンバーが冒険者と組み、防衛に当たる。自警団のメンバーは総じてレベルが低いからな、後衛支援に回らせる」


 逐一送られてくる念話での情報を整理しながらハウルはこれから起こるだろう戦闘に関して詳細を詰めていく。モンスターの数は前回より多少少ない程度で、大部分がハウンドで締められているという情報を得ていた。他のモンスターも少なからず居るがどれも少数で足の速いハウンドから引き離されているという。そうなれば1波~2波と流れるように襲い掛かってくる恐れもあるが、他のモンスターは強くてスモールベアが僅かに、ほとんどがファングラビットで構成されている為、慎重に戦えば冒険者が数十人も居る現状、負ける事はない。


 町の入り口は定時を持って固く閉ざし、モンスターの侵入を抑え。ここで全滅させる予定だった。


「通信班の連絡を絶やすな。これだけ凌げばどうにかなるという楽観視は捨てておかねばな。メインは俺達を含めた冒険者チームで対応。団員は後列でのポーションや投擲アイテムの使用要員だな」


「だな、まぁ……俺達のやる事は一つだけよ。モンスターをぶっとばして街を守る。それだけだ」


「だ、団長!!」


 そんな中自警団の一人が武器を持ちファッツに伺いを立てる。

 微妙におどおどしているのはこれからくるモンスターが怖いのもあるだろう。


「わ、私達も…私達も冒険者と一緒に…その…た、闘うべきです……自警団、自警団なら町を、町を守るのは当然の……ぎ、義務だから…!」


 自警団全てがファッツやハウル、フィルの様に強い訳ではない。あくまで町の保安を守る彼等がモンスターと闘う事事態が稀なのだ。これは他のどこの自警団でも一緒であり、モンスターと闘うのは冒険者であって、自警団の仕事はモンスター退治を多少含む、町の保安が主な仕事である。


 だからこそ目の前の震えている彼もまたレベルが3と低い。それでも町や人を思う気持ちは誰にも負けておらず、役に立たなくても冒険者と一緒に戦いたいと考えていた。


「レベル2~3で勝てると思ってんのかゴラァ!! お前らはお前らで後方支援の役目が有るんだ、それも自警団の仕事だろうがっ!」


 ゴツい黒鋼鉄の大剣を構えた重装備の男がそれを怒鳴り散らして止める。

 腰にはいつでも食べられるように塩を括りつけた男、道具屋のセイルだ。普段は道具屋の店主だが、彼も昔は冒険者になろうと戦っていたことがある。宝物が欲しいというよりは世界中の塩を探すために強くなろうとしていただけだが。


「う、セ、セイルさん…」


「お前らが機能しなくちゃ前の冒険者が大けがをする。後衛補助ってのも立派な戦いだって事を覚えとけよ?」


 口角を少し釣り上げて近くの椅子にゆっくりとすわるセイル。

 団員の人間も自分達の役目を頑張ろうと、再び動き出して行く。


「いいねぇ、うちの団員はどいつもこいつも熱くてよ」


「その分面倒だがな…やる気の無いやつよりは幾分マシか」


「そういうもんよ、気概のある奴は伸びるからな」


 二人で話し合っている中、フィルは意を決したように二人の前に立つ。


「団長、ハウル。話があるんだ聞いてくれないか?」


「おう! なんでも言ってみろ!!」


「…………」


「無茶言ってるのは解ってる…だけど、俺はあいつらと、あいつらと戦いたい!! 俺がヤスオ達の所に行くことを許してくれっ!! 頼む!! 漢の…一生の頼みだっ!!」 


 その場で足を付き頭を大地にこすりつける。

 皆が見ている前でフィルはそれを気にせずに土下座した。どよどよと辺りがざわめいている。フィルの土下座を見届けつつ、ファッツを頭を人差し指で掻きながら、少し力が抜けた口調で話しかける


「……お前なぁ……流石に遅いぞ? もう少し早く言えっての」


「………え…?」


 それは怒気でもなんでもなく、【漸く言ったのか?】という様な話し方だった。隣ではハウルが目つき鋭くフィルを睨みつける。


「フィル。お前は自警団だ、お前の言っている事がどういうことか理解しているか? 自警団のお前が町の防衛より冒険者を選ぶと言っているのと同義だぞ? 普段ならそれでもいい。だが今は有事の際だ…それでもお前はその言葉を吐くのか?」


 もっともな事を突きつけられる。今やっていることは確実に大人げないし馬鹿な行動だと自分でも理解している。


 だがそれでも、フィルは続ける。


「ごめん、ハウル。でも俺はもう自分の気持ちに嘘は付けない。俺はダチの手助けに行きたいんだ……頼む…!!」


「………ふぅ、まさにお前の言うとおりだったなファッツ。まぁいい、前も言ったがお前はまだ若い、人生を好きなように決めるのもフィル、お前自身だ」


「ハ…ハウル…?」


「意外か? お前一人居なくても既に十分回っている、どちらにしてもお前の役目は後方支援の予定だった。ならばその分をあいつらのヘルプに回す事に問題はない、自警団団員だけしないないならば、殴り倒してでも止めるが、今回の襲撃に対しては、既に十分以上の戦力が整っている」


「難しいこと言ってるだろ? お前の自由にしろってこった。なんとなく気づいてたぜ? お前がやりそうな事をよ」


 自警団としてはあまり好ましい行動ではないだろう。

 だがそれでも、命をかけて戦場で闘う友達の為に戦いたいというその心を切り捨てるほどファッツは非情ではない。


「自警団団長として、フィル。お前を自警団から除籍する!! これでお前は自由だ! お前の好きなように生きろっ!! 冒険者になるのも何になるのもお前の自由だっ! お前は自警団に縛られるようなタマじゃねぇ!!」


「だ…団長…!」


「ファッツだ、団員だったお前はもう居ない、だから俺はファッツでいい」


「………ファッツ…!」


「まっ、除籍つっても、一時的なもんだ。お前が戻りたくなったら戻ってこい、つーわけでだ。今から走ってもヤスオ達には追いつかねぇ。これを持っていけ。俺のとっておきだ」


 土下座していたフィルを起こし彼に1枚のカードを手渡す。


「こ、これは…?」


「【ハイホースカード】だ、使えば24時間だけ名馬を呼び出せる、これで向かえば直ぐに追いつくさ」


「ファッツ、それがまさか退職金とか言わんだろうな。やれやれだ、おいフィルこいつも持っていけ。俺の未練だったが今の貴様が使うには丁度いい。お前の弱点はその生命力だ、それを使って少しは耐えれるようになれ。さもなくば言った所で直ぐ殺されるのがオチだ」


 こうなることは大体予想していたハウルが、持ってきていたカードを数枚更に手渡す。



―フィルは【ヘルハウンドカード】を手に入れた。

―フィルは【ヘルハウンドカード】を手に入れた。

―フィルは【デーモンランサーカード】を手に入れた。

―フィルは【フェアリーカード】を手に入れた。



「…っ!! ありがとうファッツ、ハウル! 俺…行ってくる!!」


 こぼれ落ちる涙を拭い、フィルは一人ヤスオ達の追いつくため馬を呼び出し走りだす。その様子をカトルは羨ましそうに見ていた。



(いいなー…僕もあんな熱い展開やってみたいなー……無理かぁ)


「さて…【当初の予定通り】配置を進めていくか」


「だな。ハウル、フィルは強くなると思うか?」


「さぁな、だが……子供は無鉄砲で、そして…だからこそ先を見据える。導くのは俺達の役目だ、ガキはガキで、我武者羅に走ればいい」


「はっ! その通りだ! 皆、そろそろ奴らが来る! 前回に比べりゃ格段に楽な戦闘だ! 自警団の俺達は町を守るために! 冒険者のお前たちは報酬のために! 難しいこと考えずにぶっとばしてやろうぜ!!」


―!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 爆音の様な彼等の雄叫びが響き渡る―

 自分達の戦いは今正に始まるのだ。



「通信班から連絡!! モンスター群、到着まで後30分!!」


「野郎ども! 持ち場につけぇ! 出てくるモンスター1匹足りとも、町に足一本入れさせるなっ!」


 ファッツが長剣を構え誰よりも前に立つ。

 そしてその隣にハウルが短剣を両手に2つ持ちながら立ち並んだ。


「おっしゃああああああああああああ! 人間の底力見せつけてやるぞおおお!」



 遠くから見えてくる土煙、自身の中の弱さをかき消すためにファッツは吼えた――




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