表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
153/216

36-04 【大激戦へ向かう者達】 Ⅳ

美味しい胃薬 発売中(何


 会議の結果、件のダンジョンに向う2パーティが決定した。

 他の冒険者達は万が一の為の町の防衛に回る依頼を受ける事になっている。拘束期間は、復活しかけているボスモンスターを撃破するまで、何日かかるか分からないが、それでも一週間はかからないだろうと思っている。


 調査班が既にその再生中のダンジョンを調べてきた結果、フィールドとは思えないほどの大量の瘴気、そして其処に雪崩れ込んでくる様々なモンスターが確認されているらしい。オッターさんの進言がなかったらフィールドで冒険者と一般人が死んだだけの事故で終わる所だった事を考えると、背筋が寒くなる。


 何も知らないでフィールドに出てモンスターの集団に巻き込まれるなんてのは…流石に僕もごめん被りたい。それでなくても一度死にかけたのだから。



 今回ダンジョン跡地に向うパーティはアルスさんを始めとする中級クラスパーティだ。


―リーダーのアルスさん

―アコライトのマリーさん

―メイジのティルさん

―シーフのイクスさん

―メイジのオッターさん


 この合計5人にアリアちゃんを加えた後衛重視のパーティだ。唯一アリアちゃんだけ中級じゃないが、特殊スキルの事もあって参加する事になった。前衛を全体を纏めて防御する事が出来るアルスさんで固め、アリーさんが全体の回復や支援、ティルさんとアリアちゃんが後衛で魔法攻撃を行う。


 イクスさんは途中の罠や周囲の探索などのシーフとしての仕事をメインにして、オッターさんは阻害魔法や支援魔法で闘う事になりそうだ。寧ろこれで勝てなかったら上級冒険者を都市まで行って雇うしかないな、とファッツさんが笑いながら言っていた。僕もそう思う、あれほど強い人達が負けるのが想像出来ない……これで中級なんだから上級ってのは人外魔境か何かだろう。



 そしてもう一つのメインパーティを補佐するのが僕達のパーティだ。僕の実力では役に立てないだろうが、アルスさん達が行くのなら手伝いたいと自ら参加した。一応今いる冒険者の中では、割りと上の方だったらしくてすんなりと参加が決まった。


 僕の方のパーティメンバー構成はこうなっている。


―汎用型ファイターの自分

―メイジのカノン

―アーチャーのノーヴァ君

―シーフのミキ


 この4人で支援を行うことになっている。

 主な役目は、周辺の雑魚討伐や周囲探索。必要な物資を運ぶ係等―

主力であるアルスさん達を出来る限り消費なくボスの所まで運ぶのが僕達の役目になる。確認されているモンスターはブラウンベアー…つまり熊が最高なので全力で戦えば問題なく倒せるから、皆の体力を温存させる事が出来るだろう。


 4人、とメンバーが少ないのは冒険者の数が少ないのもあるけど、町の防衛に割く冒険者が多いからだ。カトル君は参加したがったたが、他のメンバーを置いていく訳にもいかないので、防衛の方に回る事になっている。ウォルクさんウォレスさん兄弟も町の防衛だ、中級クラスに近い二人が居てくれるなら自警団の人も沢山居るんだしきっと大丈夫だろう、フラグでもなんでもなく。


 そして……今ここにいないフィル君は、町の防衛に回る。

 彼は自警団であり、町を守るのが本来の仕事だ。でもあの表情はとても悔しそうだった…もしかしなくても僕達と一緒に行きたかったのだと思う。彼がいっつもパーティを組んでいる僕達だけが向う事になったのが…尚更なんだろう。



 出発は明日、馬を借りて向う予定だ。

 徒歩なら大体13~15時間掛かる場所なので、馬が必須なのだ。これで大体半分以下の時間で到着する事が出来る、馬は勿論自警団から借ります。

 僕は馬に乗るのは初めてなので、恥ずかしながらノーヴァ君の後ろに乗せてもらうことになった。土壇場で簡単に騎乗できたヤッターなんて言うご都合主義は存在しませんでした。




 




…………








―ヤスオの自室



 現在家の中には、僕の他に、アルスさん達4人に、アリアちゃん、カノン、ミキ、ノーヴァ君が集まっている、明日の作戦会議件、雑談の様な感じだ。


「それにしても見違えたなヤスオ。もう一端の冒険者の顔をしてる」


「え、いや……あ、有難うございます」


「うむうむ! お姉ちゃんは鼻が高いお~♪」


 腕を組んで笑顔を見せるアルスさん、僕の後ろに回り込んで頭をぽふぽふと撫でるように触っているティルさん、見事にイジられている僕を見てミキが爆笑しているのがもうね…アリーさんは苦笑して見てるが止めてくれる気はなさそうである。知り合いが多い前でここまで猫かわいがりされると滅茶苦茶恥ずかしいのです…! これでも20歳の大人だからね…


「しかしまぁ、タイミングよく来てくれたものだ。ヤスオは町の貢献者の一人になれそうだね」


「いや、僕が何かしたわけじゃないし」


「運も実力の内さ、なにせステータスにあるなのだから」


 流石ノーヴァ君、何を言っても渋い……こんな大人になりたいなぁ…年齢的には僕の方が上なんだが、人生経験の方では大きく負けている。


「それにしてもダンジョン再構築かぁ…本で見たことある程度だよ、そんなレアな体験なんて」


「中級上位の貴方達でもそうなのです?」


 アリーさんの言葉にカノンが不思議そうに話しかけている。


「まだまだ中級だしね、これが上級とかになれば知ってる人も居ると思うよ? 私達じゃまだまだ分からない事だらけだね」


「とりあえずは、後でオッターさんって人ともう少し話し合ってくる。ティルとアリーはヤスオ達を見ててくれ、俺とイクスで向かうから」


「サプライズで来たらこっちがサプライズ受けた感覚だよね。あ、慌ただしくてあれだったから改めて自己紹介するよ。俺はイクス、シーフ技能特化の戦闘出来ない奴なんだ、よろしくね」


「イクスさんですね、僕は田中康夫です。どうぞヤスオと呼んでください」


 イクスさんと改めて自己紹介をする、カノン達もそれに習って一通り自己紹介を終わらせるとそれぞれ出来る事などを話し合っていく。その中でイクスさんの【戦闘技能皆無】という【デメリットスキル】がある事を本人から聞かされ、大変なんだなと感じてしまった。戦闘が出来ないのと、戦闘関連のスキルを取得でいないだけで、武具は問題なく装備できるし、シーフとしての技量は同レベル帯のシーフを大幅に逸脱しているとアルスさん達から聞かせて貰ったので、トラップや探索専用のシーフだと考えれば寧ろ戦えるより素晴らしいと思う。


 ミキのシーフとしての技量もかなり凄いし、イクスさんはとても頼りになりそうだ。


「デメリットスキルね。稀にそういうスキルを持つ人が居るって聞いた事はあるけど…この目で見たのはイクスさんが初めてね」


「これがもうね、戦闘に関する事はこれでもかって程無理でさ。短剣持ってハウンドと闘うでしょ? 普通に攻撃しようと短剣を振るうよね? ……短剣が意思を持ったかのように綺麗にハウンド避けてしまうんですわ、ははははは…」


「……うわぁ…」


 剣でダメなら素手でやれば、と試しても同じ。投擲をしたら命中直前に投擲物が落ちたり横にそれたりと、徹底して武器攻撃でダメージを与えさせてくれないそうだ……なんかもう色々ひどいスキルだなぁ……


 でもその分シーフのスキルはドンドン上がってるそうで既に感知系や解除系は最上級になっているらしい、更には【ゴッドハンド】という解除判定に修正を与えるスキルもこれまた最上級だ、うん、イクスさんが一人いるだけで罠とかは気にしなくてもいいな……なにこれチート。


 ちなみに先程から燻らせている煙草…に見えたのは煙状の胃薬らしい……戦闘できないせいで色々あったらしくて、胃がやばいそうだ。


「胃薬ってね、種類によって美味しいのやまずいのがあるんだよね、やっぱり効果があって美味しい胃薬を」


「……なんつーか、流石にミキ様でも突っ込めないんだけど…」


「言うな、言うなミキ…!!」


 イクスさんには幸せになってほしいと思う。



 そんな物悲しいやりとりをしながら僕達はこれからの相談や雑談を交えていく。明日は皆でモンスターに挑みに行く、闘うのはアルスさん達で、僕達はその支援で向うだけだが、それでも……


「ん? ヤスオどうしたんだお?」


「…いえ。………明日、頑張りましょう」


「うんうん、ヤスオ達も頑張るんだお? なぁにボスなんてボク達で焼いてくれよう! こんがりと!!」


 僕は、尊敬するこの人達と冒険に行くんだ―

 それだけでいつも以上に気合が入るのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ