SP-08 【探索中】
もう少し長く書きたいのですが、毎日投下と時間の都合で短くなってしまいます
どうかご了承ください。
「酷い目にあった……」
沼地から少し離れて全員に解毒の魔法と浄化の魔法を掛けていく。
あのあと直ぐ沼地の泥水が洪水の様にヤスオ達を飲み込んだのだ、直ぐに土壁を唱え周りを一時的に遮りながら、先ほどと同じ要領で道を作り難を逃れたが全員が全員泥を被り毒に侵されてしまう。
致死毒ではなく、徐々に生命力を奪うだけの毒だとは知っていたので慌てずに解毒の魔法を掛けて難を逃れていた。
「あの宝箱に罠は無かったけど、恐らくあの宝箱自体の聖なる力場が周囲の沼を押し留めていたんだろうね。そしてそれを開けてしまったことで力場が消えた」
「成程、ずっと堰き止められていた毒の沼と言う事ね」
「すんすん……匂いは消えたけど酷い目にあったわ…」
浄化の魔法で汚れや匂い、濡れた衣服などは全て元に戻っているがそれでも匂いが残っていないか確かめるミキ。
「こういうのもダンジョンの醍醐味ってもんよ、良い勉強になったじゃねぇか」
豪快に笑うファッツ。
単純に探索しモンスターを倒し、適度に宝箱を見つけるというのも有りではあるが、冒険をしている以上ハプニングなどが無ければつまらないと考えるタイプなので、今回の事を逆に楽しんでいた。
「アイテムとかは持ち出せたし、総合的に考えればプラス、かな」
「そうね、じゃあそろそろ進みましょう」
回復を終えてヤスオ達は再び探索に戻った。
毒の沼地を抜けた先は、また木々の覆い茂る林だった。ダンジョンであろうとも動物などは勿論存在する為、鳥などの鳴き声があちこちから聞こえてくる。鼻につく様な腐臭はしないので、近くにアンデッドなどは居ないのだろう、ミキが林の中をすり抜けるように先行していく。
先ほどは酷い目にあったが、それでも沢山のレアアイテムを手に入れる事が出来たので俄然やる気が出ているのだ、終わった後の分配が楽しみだとばかりに笑みを深めながら様々な音や気配を感じ取っていく。
【エネミー感知】のスキル所持者は生物やモンスター等が近くに来た場合、システムログにエネミーを感知したと言うメッセージが流れる。更にはこのスキルによって強化されている索敵能力のおかげで、様々なモンスターの気配、息遣いからどこに何が居るのか、どんなモンスターが居るのか、何体ほど居るのか、奇襲しているのかなどを全て把握出来るようになる。
下級の頃は範囲も狭く、100%見つけられるという訳ではないが、中級ともなれば視野なども高く強化され、自分より多少強い様なモンスターでも簡単に発見できるし奇襲などを防ぐことも容易になるという。
つまり――
「……ストップあんた達。奥のほうにモンスターが居るわ」
目視で確認するのとメッセージが流れたのはほぼ同時だった。
ミキの見ている方向の先にはブラウンベアーが2体にゾンビハウンドが1、そして普通のハウンドが1体確認できる。群れを作っている訳ではなく、単純に其処に集まっただけのようだ。ブラウンベアーに至ってはモンスターも無視して木の幹を食いちぎり食べている。
「熊2、ハウンド1、ゾンビハウンド1ね。どうすんの? 逃げる? ここで探索やめて移動すれば行けるわよ? 奇襲も出来ない事は無いけど、ここじゃヤスオ以外まともに戦えないっしょ?」
周囲は大小様々な木で覆われている為、フィルとファッツでは思うように戦えない。雑魚ならば問題なく対処出来るだろうが、ブラウンベアーが2体とかなりの強敵が居る以上、此方がデメリットを抱えたまま戦うのは良策とは言えなかった。
ヤスオもこの場所で戦うのはまずいと考えている。
スピアではまっすぐにしか突けないし、ショートソードは鍛えたとは言えいきなりブラウンベアーに対して使うのは難しい。下位のモンスターを相手にして徐々に慣らしていくのが普通だ。
そう考えていたヤスオの隣でノーヴァが多少口角を釣り上げた。
「狭い、良い事じゃないか」
「ノーヴァ君?」
「考えてみるといい、こんな狭い場所であのブラウンベアーがまともに動けると思うかい? 確かに細い木なら兎も角、太い樹木も沢山あるだろう? それを利用すればいい」
ブラウンベアーもモンスターではあるが機械ではない、どうしても無理な場所に向かって突撃などはしないだけの知能は持っている。あれほどの巨大でこんな狭い森の中、全力を出しきるのは難しい。寧ろ上手く立ち回る事が出来ればこの狭さがヤスオ達の味方になるだろう。
幸いここを簡単にすり抜けてくるモンスターはハウンドとゾンビハウンドだけなので、それさえ蹴散らしてしまえば思うように動けないモンスターを淡々とかるだけの戦闘と化す。
「な、成程なぁ…団長、ヤスオ。俺達で上手く撹乱すれば行けるかもしれねぇ」
「だな。後ろにはカノンとノーヴァって言う頼りになる奴等が居る、それに前にはヤスオとフィル、お前が居るからな」
「何私だけハブってるのよ」
「悪い悪い、ミキも頼りにしてるぜ?」
実力的にはハウンドやゾンビハウンドを倒せるだけの戦力しか無いのは確かだが数に数えられないなら数えられないで仲間はずれにされたようでむくれてしまうミキ。隣でヤスオがとりなして戦闘準備を開始する。
「俺とフィルでゾンビと犬を潰す、ミキとヤスオは早いからここでも上手く動けるだろうし、奴等を引っ掻き回すって感じだな」
「そうですね。一応鍛えたショートソードも試してみようと思います。土壇場でやるのはちょっと怖いですけどね。熊への攻撃はノーヴァ君とカノンお願いするよ」
「えぇ、任せておいて」
「了解した。射線には入らないようにしてくれよ?」
「了解……ミキ、行くぞ」
「うー、やっぱり下がってりゃ良かった…へいへい、行くぞ~」
そう言うとヤスオとミキは同時に駈け出した。




