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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
144/216

SP-08 【ざわめく死者の通り道】 ※長期ダンジョンアタックパート

ここで数話程度、幕間の様なシーンが入ります。

自警団で騒ぎがあった数日前のヤスオ君達のお話です。


セリフだけでは台本小説になってしまう

地の文が多すぎては、逆に読みづらくなってしまう

表現が難しくて書ききれない、思うように書けない

小説と言うのは難しくて…そして楽しいものだと改めて気づきます。


 自警団で騒ぎが起こっていた数日前、その日の夜、ヤスオは鍛えたばかりのショートソードやミスリルのスピアを手入れしていた。

 

 黒く重厚な刀身が鈍い光を放っている。黒鋼の刃が前より少し重みを増し、柄を強く握ると感じる力強い重みが自分に安心感を与えてくれる。前までの様な羽の様に軽い状態でも頼もしくはあったが多少の頼り無さを感じていたのもある。


 激しい戦いにも問題なく耐え切ってくれたこの剣、そして道中のモンスターを倒すのに使っていたミスリル製の槍も同じく役に立ってくれた。


 あれから槍の修練を行いながら鍛冶の鍛錬もいつも以上のペースで行い、つい先日漸く黒鉱石のインゴットを用いた武器精錬を成功させる事が出来たのだ。



 今までの鋼鉄と黒鋼では強度も性能も何もかも違う。

 鉄の性能が【1】で鋼鉄が【2】だとすると黒鋼は【5】と言う感じだろう。【凄まじく重い】というデメリットさえ無視すればミスリルと同程度の強度や性能を誇っている。欠点としては先程の重み、ショートソードやナイフ系列の武器でもない限り、武器として扱うには余程の筋力が必要とされる。更にはミスリルにあるような魔法との相性も良くはない。大体の鉱山で取れる汎用的な鉱石としては最高峰ではあるが、最高では決して無い。重みを力に出来るファイターなどが好む程度で武具に使うにしてはあまり需要が無い素材だ。


 だが安価でミスリル並の性能を誇り、尚且つ鋼鉄と同等より少し上の制作難度しか持たない黒鉱石はヤスオにとって最高の精錬素材だった。


 何度も何度も失敗し、それでも諦めず精錬を続けた結果―

 前までの鋼鉄のショートソードを大きく超える、市販の武器レベルの武器を作成する事が出来た。


 流石に現在使っているミスリルのスピアに比べればまだまだ弱いが、それでも十分実戦に耐えうるだけの性能を得る事が出来た。ブラウンベアーの肉体も何とか切り裂ける程の性能になったのだから、もう【弱い武器】では無いだろう。それがヤスオにとって誇らしく、とても嬉しかった。


「……頑張ってくれたな。ありがとう…」


 手入れの終わったミスリルスピアを立掛け今度はショートソードの手入れを行い始める。強くなった剣だが、それでも今回の見せ場はブラウンベアー1体を倒しただけに過ぎない。だが…十分役に立ってくれただろう。


 刀身の一切も欠けることなく、純粋に耐久度だけが消耗されているが、この程度なら専用の手入れ用具を用いればたやすく回復できる。どうしようもない時のみ、【修繕】の魔法を使うだけだ。


「それにしても…………」


 先程までのダンジョンアタックを思い出す。

 いや忘れる事は流石に出来ないだろう………ある意味でもっとも死を覚悟したアタックであり、とんでもない奇跡を起こした日でもあったのだから――










…………











―【ざわめく死者の通り道】




 その日槍の扱いに慣れたのと、新しいショートソードを試す事もあり久方ぶりのダンジョンアタックとなった。


 メンバーはヤスオにカノン、フィルにファッツ、ミキにノーヴァという安定したメンバーだった。回復魔法の使えるアコライトが居ないのがネックではあったが、身内に中級手前クラスのアコライトが居ない事もあり、其処を万能タイプのヤスオが穴を埋める形で入っている。


―カトルのメンバーにはアコライトのスノゥ居るが彼等は彼等でフィールドに居る―


 ダンジョンアタックをする際に恒例となっている点呼をカノンが行っていた。


「それじゃ点呼開始よ、1ね」


 カノンの号令に従ってヤスオ達が次々に点呼を行う。

 その様子を見てカノンは―


【―のーないかのん― おおおおおおおお……今までは人形配置して脳内で人形の声色で点呼してました!! これが普通の点呼! 点呼なのよっ! もう何時倒れても構わないわっ!】


 脳内で泣き叫ぶほど感動していた。

 彼女にとってダンジョンアタックは本来一人でやるものだったからだ、友達や仲間が欲しい彼女にとってそれはとても辛く情けない思い出ではあったが、それを塗り潰すかの様な今をとても大事に思っている。


「早速変えた…いや鍛えたのか、期待できそうだね。そっちの槍はミスリルか、前衛として期待してるよ、勿論回復や魔法もね」


 ノーヴァがヤスオの装備している武器を見て微かに微笑む。

 意固地になるような男でなくて良かったと、ヤスオの評価をまた少し上方修正していた。


「今回は状況に応じてどっちも使っていく、前回の様な無様はもう見せないよ」


「その意気だぜヤスオ。お前さんがリーダーなんだ、ビシっと俺達に指示してくれよ?」


「うしっ! 俺もやるぜ! 団長にもノーヴァにも負けないからな!」


 自警団特有の腕章をつけている二人、ファッツとノーヴァが快活な笑顔を見せる。何だかんだと共に戦ったりする事が多い二人にとって、ヤスオは冒険者ではあるが、同時に町の住民の様に思っている。


 特にフィルの方は顕著で、一緒に戦ってきた期間が誰よりも長く、同時にヤスオを尊敬し同時に大事な友人だと認めていた。レベルが低い自分とずっと戦ってきてくれたヤスオに感謝し、ヤスオの強さを認め、彼に近づくために修練を欠かしていない。


 勿論ヤスオより強い輩などゴマンといる。それこそ魔法なら目の前のカノンの方がヤスオ程度では相手にならないほど強いし、ファッツとヤスオならまだ実戦経験の多いファッツの方に軍配が上がるだろう。熟練の戦士を思わせるノーヴァならヤスオが何かする前に射抜き倒してしまうのはフィルでも分かる。


 唯一ミキがこの中で一番弱いだろうが、ミキはミキで類まれなダンジョンでの性能を見せつけている。それでもフィルにとってはヤスオが追いつき並びたい相手なのだ。


(ダチと背中を護る…漢はこうじゃねぇとな。それにダメなアニキみたいだしよ)


 様々な魔法を使いこなし、剣と槍を扱い更には鍛冶までこなすヤスオ。槍一辺倒なフィルにとってこれほど多彩な術を持つヤスオは誰にでも誇れる友人であり相棒だ。だからこそ彼に追いつくために腕を磨いている。


「おーいさっさと行くぞ~?」


 気の抜けるようなミキの言葉にハっとしながらも、フィルは皆の後を付いて行った。




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