04-02 【強敵と死闘】 Ⅱ
ブックマーク【500】到達。
皆さん有難うございます、感想、評価、ブックマークなどとても励みになっています。これからも頑張りますね。
森編はまだ続きます。
森を超えてからがお話の本番です、皆さんもう暫くヤスオ君のサバイバルを
見てあげてください。
―4日後
最近一日が過ぎるのが早い気がする。
食料の確保や剣の鍛錬、魔法の本が読めるか調べたり武器を探しにでかけたり…ここでモンスターを倒したり、とか言いたいのだがそんな実力はないし、そもそもこの数日モンスターに出会っていない。
逃げたり隠れている時は結構出てくるのに探したりしていると出てこない、でも人生って結構そんなものかもしれない。
それでも一応成果の様なものは上げていた。
この2日ほど小動物…名前もわからないし見た目じゃ何かもわからない種類…うん、多分リスか何か…それを取る事が出来た。
殺しても消えない所を見ると動物で間違いないだろう。これでここに来て初めて魚以外の肉を食べる事が出来た。味も素っ気も無いし固くて筋張っていたが肉は肉、その日はご馳走だった。
余った部分の肉は乾燥させて干し肉みたいにして持ち歩いている。
さて、肝心の武器の確保だけど今まさに武器の作成中だ。
武器…必死になって落ちている木々や使えるものを探していた時にふと気がついたのだ、使えそうな太さの樹を切り倒してそれをナイフで削ったりすれば良いんじゃないかと。
【遅い】とか【そんな事にも気づかなかったのか】とか。もし見ている人が居たら呆れてしまうだろうけど、まず木を折るには斧がいるなんていう固定観念の所為で頭から無理だと思っていたのが原因だ。
丁度握れる位の木をなんとか見つけて気合を入れて折って持ってきていた。
完全に真っ直ぐとは言えないが武器として使うには十分な木の幹をナイフで先端などを削り整えていく。ヤスリとかそんな便利なものはないので平たい石を見つけてそれで木の表面を何度も何度も擦りなだらかにする。これが結構上手くいっているようでいい感じに握れるようになった。
ちなみにここまで作るまでに5本以上は既にダメにしていた。初めてこんな大変な作業をしているのもあるけど、そもそも僕は不器用なのだ。少し前までは日がな一日パソコンかコントローラー程度にしか手や指を使っていないし、ナイフなんて果物ナイフすら殆ど使ったことがない。大雑把に物を切る程度なら僕でも出来るが、武器を作る時の繊細な作業はどうしても気力を消費する。気を抜いてしまえば一発で終わりだ。
作成ミスでダメになった木は焚き火の薪として流用している。乾いた枯れ木じゃないけど、燃やせば普通に燃えてくれる、煙は凄いが其処は【弱風】で上に流しているのでそこまで煙いと思ったことはない。
「一応これで棒としては使えるけど、僕じゃこれでウサギを倒すのは無理だろうな…尖らせて簡易な槍って考えたけど多分直ぐ壊れるだろうし、やっぱり先端に牙を括りつけて蔦で縛るしかないか…」
イメージしたのは石器時代の石槍で、何となくだが作り方は覚えている。
まず用意するのは長い棒と石でメインの部分となる石を研いで云々だったはずだ。肝心の括りつける方法が曖昧だけど何となくで試していく事にする。
知らないのだから行き当たりばったりで試すしか無い訳で…
用意した頑丈な蔦数本、ファングラビットの牙1本、そして今まさに作っているこの棒だ。まず牙から精製していこうと思う―この牙は先端がとても鋭くて根本の部分が固く太い、槍にする為にはこの太い部分を削って平たくしないといけない。河原で拾ってきた平たい石を足で固定して少しずつ削っていく。
元々歯だからなのか結構削れるのが早い、途中で折れたりミスしたりしないようにゆっくりと確実に両面を削っていく。
「これ確か削るのに水があれば良いはずなんだけど、肝心の水がなぁ…流石に川でやるのは怖いし…剣の鍛錬なら剣を持ってるから動けるけどこれはその場で座り込んでやるから出来ないしな…」
ぐちぐちいいながらも削り続ける事早1時間。漸く歪だけど削ることが出来たので、次は棒の方の作業に移る。こっちは先程の牙以上に神経を尖らせて作業しないといけない。棒の先端部分の真ん中にナイフの刃を食い込ませ少しずつ削っていく…
そう、これで凹凸を作り牙を差し込んで固定して蔦を巻きつけて曲がらず抜け落ちないようにするのだ。此方の差し込み部分が広すぎると牙が直ぐずれてしまうし狭すぎれば差し込んだ時に棒の方が割れてしまう、集中しながらナイフを入れていく。
「………」
無言になりナイフで少しずつ削り落とす。中学校の頃に彫刻刀で版画などを削ったのを思い出す作業だ、少しずつ少しずつ差しこみ部分が出来ていく。木はともかくこの牙は何度もミス出来ない大事な素材だ、少しのミスで壊れました、じゃあ次のをという訳にはいかない、最新の注意を払いゆっくりとゆっくりと焦らずに壊れないように削り続けること数十分、漸く丁度いい感じの差込口を完成させることが出来た。
「…っはぁあああああああああ…で、出来たぁ…すげぇ疲れた。」
少しでも間違えれば壊れてしまう棒にナイフを入れるのは精神に来るものがある。背伸びをし一心地ついた後差し込み作業を開始する。牙を棒に差し込みそのまま何回か叩いて押し込んでいく、上手くいってくれたようで緩くもなければキツ過ぎでもない。完全に隙間を埋め…どうみても数ミリ位牙が飛び出ているがそれでも頑張ったものだと自分を褒めたい。
後は蔦を使って綺麗に縛り付け…隙間を埋めるように蔦を巻き、その後に飛び出ないように蔦を交差させてバツ印を作っていく。
―【粗悪な】ファングスピアが完成した!!
―ヤスオの【鑑定】!
―【粗悪な】ファングスピア レア:C 耐久:8 攻撃:5
―武器として最低限使えるようになっただけの槍。とても壊れやすい。
「な、なんとか出来たぁ…凄いボロッボロだけど何とか形にはなったなぁ…
武器としてのデータがなんかあるし…」
レア度がC…多分コモンか何かだと思うけど、とりあえず攻撃力が5もある上に耐久度が8もある所が一番の驚きだ。こんな素人が役に立たないな知識で作った槍がここまで使えるのなら十分過ぎる。ウサギの牙まだもう1本残っているし同じ槍を頑張ればもう1本作る事が出来る…これで武器の見通しはなんとか立った。後はウサギを倒してステータスを上げ、その後にハウンドを倒していく…
平行してショートソードとこのボロ槍の鍛錬も行っていかなければ。
「ウサギは剣と技を用いれば勝てる筈…問題はこのボロ槍でどこまで行けるか…か。これもやっぱり練習だな、頑張らないと。」
ウサギを倒すことを目標にしている自分…今更ながらに僕も慣れてきたなぁと感じる。初日なんてそのウサギに殺されかけて泣きじゃくってたのに、今じゃウサギを倒す事を考えている。いや逆に遅い位か…この森で暮らして一月はとうに過ぎたのにまだモンスターすら満足に倒せていないし。それでも、何も出来なかったキモオタがここまで頑張っている。人間、追い詰められたら何でも出来るんだなぁと苦笑する。
「元の世界だったら多分こんなに必死にはなってないんだろうな。楽しい物や楽になる場所が多い、あの場所じゃ結局僕はダメ人間のままで…今もそれは変わってないけど、多少はマシになれたのかな…」
ふと目を閉じれば黒い暗闇の中に両親の姿が見えた気がした―
父さん母さん、今自分は頑張っています。生きるか死ぬかのサバイバル生活でたった一人だけで生き抜いてます。きっともう家には戻れない、それでも生き残るために頑張って行こうって思ってます。今更遅いけど二人が僕を産んで良かったって思える貰える様に…
両親が居ると言うことがどれほど有難い事なのかこの世界に来てようやく気付くことが出来た。それだけは唯一、この世界にきて良かった事だと自分は思えたのだ。クズな人間からほんの少しだけマシになった……そう思えた。
「っ…そう毎回毎回泣いてられないっての…朝に備えて身体を休めないと、明日からはウサギを倒してステータス上げを頑張らなきゃ。絶対にこの森から抜けだしてやるんだ。」
明日も生き残れますように…
2015/09/06
ご指摘を受け修正しました。
2015/09/14
ご指摘を受け槍の作成時の加筆修正しました。