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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
132/216

33-02 【譲れない物と槍】 Ⅱ

皆さん明けましておめでとう御座います。

今年も一年よろしくお願いします。 皆さんにとって今年が良い一年で有りますように。

―ホープタウン フィールド


 武器を手に入れた後、早速と言うことでフィル君にお願いした所、問題なくOKをもらえたので町近くのフィールドに出てきた。ここなら強くてもハウンドで稀にスモールベアが現れる程度の場所なので新しい武器の鍛錬が出来る。


「フィル君が来てくれたしこれで問題なく鍛錬できそうね。………所で何でいるのかしら?」


 そこには微妙にバツが悪そうな顔をしたミキが居た。


「ヤスオの他にあんた達もいるし、フィルも誘ってたしダンジョンアタックだと思ってたのよ。んじゃなきゃ混ざるわけ無いでしょお金にならないんだし」


 とまぁ、フィル君を誘っていた所をミキが乱入して有無をいわさず付いてきたのだ。この辺で準備運動を初めて終始目が点になっているミキを見るのは楽しかったが。


「なら、戻ればいいんじゃねぇのか?」


 屈伸運動をしながらフィル君が言う。


「来たからには引っ込みつかないのよ、察せよ…」


「あー…なんとなくわかるよそれ」


 一度言った手前それを無かった事にするのって結構勇気が居るものなんです。例えばレストランで一度頼んだものを後で変えるとか…恐ろしくて出来ない。ナナさんにそんな事言ってしまったら最後、目の前には5番の料理が立ち並びそうだ……


「………??」


 キョトンとした表情でミキを見ているアリアちゃん。最近保護欲の様なものを感じるようになってきた。何というか守ってあげなくちゃ行けない気がする子だから…実力的には僕がずっと下なのがあれだけど。


「あんたは平気そうねその辺」


「……ぉー……えっ……へん……」


「いや褒めてねぇよ」


 腰に手を当て胸を張るアリアちゃん。表情が変わっていない分ちょっと変な感じがするが、これはこれで微笑ましい感じがする。


「つーか本当に多芸よねあんた? 槍も使えるなんて。そのうち弓や斧や鞭とか持ちだすんじゃない?」


「お前はほんとに僕をなんだと…」


「オモシロ人間」


「よーし、その喧嘩買った」


 こんにゃろう最近輪にかけて僕を弄ってくるようになりやがったなこいつ。近いうちに転がしてやる坂から安全帯つけて。


「しっかし他の剣を使いたくないから槍を使うって…ヤスオって剣に関しては本当に子供っぽいよな。でもまぁ、こだわりってのは戦闘じゃ結構モチベーション上げてくれるけどさ」


「なんかもう仰る通りで。今日は悪いけど槍の指導してもらえるかな」


「いいぜ。ヤスオには普段から世話になってるしな此れ位お安い御用だ」


「あーはいはい、だべってる所あれだけど早速来てるわよ。ウサギ2体って所ねどうすんの?」


 ミキが一瞬でこちらにモンスターが襲いかかってきているのを発見する。指し示す方向を見るとウサギ達がこちらに向かって飛び跳ねてきているのが見えた。たった2体じゃ今の僕はおろかミキにも勝てないのでそこまで危険性はない。それ所か槍を試す相手としては絶好のモンスターだ。


「…あらほんと。よくまぁ簡単に見つけるわね」


「そりゃそれがシーフだしね」


 ミキは軽く言うがそのスキルが生死を分ける時がある。特に先日のブラウンベアーの乱入などはミキが居れば防げた可能性がかなり高い。何だかんだと彼女の能力は皆認めるほど高いのだから。


「んじゃ片方は俺が受け持つからもう片方はヤスオに任せるぜ? 出来るだけ技使っていくから頑張って閃いてくれ。それと回復は頼んだ」


「了解!! カノンとアリアちゃん、ミキは後ろで! 何かあったら伝えてくれっ!」


 僕とフィル君がお互いに少し離れて槍を構える。力の強いフィル君は黒鉄の槍をメインの武器としている。攻撃力も高く同時にかなり重いがそんな重さすら攻撃力に変えるスキルがファイターにはあるのでその一撃はとても高い。大して僕の方は先ほど買ってきたばかりのミスリルスピアだ。攻撃ランク自体はフィル君の槍より高いが扱う人間が僕なのでその真価を発揮するのは難しい。


 システムログをonにする。

 ウサギ程度なら前衛で戦っていても余裕がある、システムログは味方や敵が何をしているかをある程度判別出来る利点がある。だからこそ全員を指揮するリーダーはこれを常に見れるようにしていかないとならないが、今の僕では前衛で戦っている時に頭に色々情報が流れていると混乱しそうになるからoffにしているが。


「さぁ…行くぞ!!」


―ファングラビットAが現れた!!

―ファングラビットBが現れた!!


 槍を持っての最低限の戦い方は身につけている、何はともあれまず槍初心者が出来る最高の攻撃は…!


「まっすぐに…突く!!」


―ヤスオの攻撃!!

―ファングラビットAに甚大なダメージ!!


 ウサギより早いモンスターとはもう何回も戦っている。

 だからこそこいつの動き方も遅く見えるようになったし、パターンはさんざん戦ってきたので頭に叩きこまれている。はねて着地した瞬間は僅かだが硬直時間が出来るので、そのタイミングを把握し両手で思い切り槍を突き刺す。


「ギイイイイイイイイイイッ!?」


 頭部は外してしまったが刃先がウサギの胴体に突き刺さる。流石に一撃では死なないようだ、突き刺さった槍をがむしゃらに暴れることで抜けだしたが、既にガクガクと震えている。多分さっきの一撃だけで致命傷になっているんだろう。


「技なしでやるじゃねぇか!! 俺も行くぜ! 穿け! 【螺巻撃】!!」


―フィルの攻撃!! 【螺巻撃】発動!!

―ファングラビットBに即死ダメージ!!

―ファングラビットBを倒した!!


 技を発動させ全身から紅いオーラを吹き上げウサギに突っ込んでいくフィル君。掬い上げるように槍をウサギに突き刺した瞬間きりもみ回転し高く飛び上がりながらウサギを突き刺した槍と共に地面に突撃した。


 モンスターを突き刺した槍が大地に突き刺さりその衝撃で地面が陥没する。いつ見てもとんでもない一撃だ…ウサギやハウンドはおろかヴァイパーだって直撃すれば一撃で倒せる今のフィル君の必殺技だ。まだレベルは低いし攻撃力を上げるバフも使っていないのにこの破壊力はとんでもない。


「おーおー男どもが頑張ってる頑張ってる。むちゃすんなよー?」


「流石にウサギには負けないわよね。あの調子ならハウンドも問題なさそうだわ。私は邪魔しないように見てましょうか」


―ミキは防御専念! このターンのみ防御ランク+1 ダメージ25%減少!

―カノンは防御専念! このターンのみ防御ランク+1 ダメージ25%減少!

―アリアオロは防御専念! このターンのみ防御ランク+1 ダメージ25%減少!


 直ぐ後ろではミキ達がそれぞれ応援しながら防御している。

 声援を受けながら戦うのは少し気恥ずかしいが、可愛い女性に応援されて嬉しくない訳ではないので地味に気力が上がっている。


「安いなぁ僕も……! 甘い!」


 突っ込んできたウサギを槍で払いそのまま弱っているウサギを攻撃する。


【―のーないかのん― いけー!! 其処よヤスオさん! よし! よく防いだわっ! あれなら隙だらけよ! さぁ! 技を閃いて! 頑張れっ! ふぁいとぉ~~~~~~!!】

 

 回避することも出来ず穂先は吸い込まれるようにウサギの頭部を貫いた。真上から頭部を突き刺し縫い付けたので絶叫を上げることも出来ずガクガクと震え消えていく。


―戦闘終了!!

―ヤスオを除く全員に経験値配布!!

―ミキはレベルが上がった!!


「ふぅ…ウサギ程度なら問題ないな…ってえぇぇ…?」


「はぇ…? マジで?」


 後ろで応援してたミキが何故かレベルが上がり彼女含め微妙な空気が流れている。そんな中アリアちゃんは我関せず地面に座って蟻の巣をご覧になっていらっしゃいました。


「別にお前が悪いわけじゃねぇけど、微妙に納得いかねぇ」


 これまた微妙な表情で言うフィル君。


「私悪く無いじゃん!?」


 実際何も悪くないが、こうなんというか間が悪かったよな。


「いや、そりゃわかるけどよ」


「ま、まぁ…レベル上がればHPも増えるだろうし、ダンジョンもやりやすくなるから」


「ヤスオくんや、あさっての方向向きながら言われてもフォローになってねーわよ」


「は…ははは、お、おめでとう!!」


「(あれかなー…一人でちまちまとウサギ倒してたせいで経験値増えてたんかな? ったく、後で驚かそうと思ってたのに)へいへい、レベルも上がったんだし今日はとことんまで付き合ってあげるわよ。でも取り分は多めにね? 奇襲は防いでやるからさ」


「最後の方のセリフがなければ殊勝な言葉なのにな」


「あによ? 殊勝な方がいいっての?」

 

「いや、お前にゃ合わないからそれでいいや」


 しおらしいミキなんて考えただけでちょっと怖いしな。何か絶対裏がありそうで……見てみたい気もするが。


「さて、どんどん行きましょう? ヤスオさんの戦力増強は私達の戦力増強でもあるのだから」


「だな、ほかならぬヤスオの頼みだ、全力で手伝うぜ」


 力強い二人の言葉に頷きながら僕達は鍛錬と周辺の狩りを再開した。

 



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