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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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32-03 【フィールドアタックと弓使いと兄弟戦士】 Ⅲ

 ダンジョンにいるような緊張感の中、探索を続ける。

 これが町近くならば少し違うが、この辺はもう熊が出てくる領域内だ。ミキ…シーフが居れば周囲の警戒等もしてくれて安心だが、ここにはファイターとメイジ、アーチャー、そして僕しかいない。シーフの仕事である周囲の確認やトラップの感知が出来ない以上、いつも以上に警戒するしか無い。


 このまま帰ると言う考えも浮かんだが、流石にここまで来て引き返すというつもりは無さそうだ。僕としてもこのメンバーで怖そうだから戻るとは口が裂けても言えそうにない。僕一人ならとっとと逃げるが…って一人ならそもそもここに来ないか。


 周囲からモンスターの気配は感じない、足音や息遣いも聞こえない以上近くには居ない事は確かだが、モンスターはその場にいきなり現れるという現象がある以上油断は出来ない。それを簡単に見破れるミキは凄いんだが…凄いんだけどなぁ…他がダメっぽいのでこう、ね…。


「近くにモンスターは見えないね、カノンどう思う?」


「フィールドである以上、見渡せる範囲にモンスターが居ないと言うのは少しおかしいわね。基本的にモンスターは群れを作らない。この前聞かされたモンスターの大襲撃も年に1回あるかどうかっていうほどの事よ。もしかしてまたモンスターが群れを作っているとなれば……何かがある…?」


「モンスターの大襲撃か…その時は僕も違う町に出ていたんだよね」


 大襲撃…あの時はオッターさんが居たからなんとかなった部分もある。あれから大して時間も経っていないのに同じ事があったら次は死者が出るかもしれない。ホープタウンは慢性的に人不足で冒険者の力を借りてある程度成り立っているから、冒険者が来なくなる状況は良くないのだ。


 だからこそ自警団の人達は欠かさずパトロールをして町の人や冒険者も守ってくれている。実力的には勝てなくても危機が迫っていることを教えてくれれば冒険者は自衛できるし町の人達も安心できる。モンスターの襲撃も冒険者さえ居てくれたら報酬さえ払えば戦ってくれる、この町はこうして回っている。


「今日が特別って訳ではなさそうだな…今日は狩りの予定だったが少し確認の後戻ることにしよう。ノーヴァ君や皆もいいだろうか?」


 ウォルクさんがそう提言するとノーヴァ君も皆も了承し、普通の狩りから状況の確認に変更する。僕もそうしたほうが良いと思っていたからウォルクさんの言葉はありがたい。


 話し合いも纏まった所でいざ調査という瞬間にアリアちゃんが持っていた杖を奥の方に向けた。


「…………ん……」


「アリアちゃん?? …っ!」


「……敵」


 その言葉と同時に咆哮と地響きが響き渡る。

 先程まで何も居なかったと思っていた方向からモンスター達が此方に向かって直進してきたのだ。その数…8体、その内熊が3体で残りはヴァイパーが3体とスモールベアが2体というフィールドではめったに見ない数が爆進して来た。


「随分と多いわね…。でもまぁ、崩せない数ではないわ」


「前衛は任せるよ、この数なら問題ないさ」


 カノンが後ろで魔法の本を開きノーヴァ君が弓を構える。 

 あまりの数に少し足が引けそうになったが、僕は今回前衛なのだからここで引く訳には行かない。盾とショートソードを構えて前に立つ。その両隣にウォルクさん兄弟が立ち並んだ。


 僕の身長を軽く超える体格がとても頼りになる。


「私達で熊を止めつつ後衛の魔法や弓で倒していくぞ。ウォレス準備はいいな?」


「あぁ、大丈夫だよ。ヤスオ君も行けるかい?」


「はい。行けます!!」


 頭の中のログは切る。前衛で大人数で戦う時には頭の中に乱雑に流れていくシステムログは邪魔なのだ。一瞬の判断で致命傷になる熊相手に前衛で余裕を見せられる程僕は強くない。


「ヴァイパーとスモールベアは僕が引きつけます! 二人は熊を後衛に寄らせないでください! カノン、アリアちゃん! 魔法は熊をメインに! ノーヴァ君はこっちのモンスターに対して攻撃を!!」


 モンスターとの距離はもう50メートルも無い、僕はそれだけ言うと自身に魔法のバフを掛けて突っ込んだ。


「【風化】!! 【炎与】!! そして…【先手】!!」


 自身の速度を一定時間高める魔法【風与】を掛けスピードを上げつつ、ショートソードに【炎与】を掛けて火属性と若干の攻撃力上昇を与える。そのまま【先手】を発動させ更に爆発的にスピードを上げヴァイパーに突っ込んでいく。


 此方に動きに対応出来ないヴァイパーに全力で技を叩きつける!


「【蓮華】っ!!」


 速剣術は速ければ速い程威力を増加する技だ、猛スピードでつっこみヴァイパーを駆け抜けざまに切り払い、その瞬間に湧いてくる力のまま高らかに叫び連鎖を放つ。


「【三散華】ああっ!!」


 一瞬の内に技の2連撃を放ちヴァイパーの胴体を断ち切った。一撃目の攻撃で既に半ば千切れそうになっていた胴体を力任せに反対から切り落とす事に成功する。少し前まで強敵だったヴァイパーを連撃を倒す事が出来るようになったが、一撃一撃はまだまだ弱いのが難点だ。


 モンスターを倒したと同時に残りのヴァイパーやスモールベアが襲い掛かってくる。左右から爪と牙が襲い掛かってくるが速さをブーストしている今の僕にとってはかなり遅い攻撃だ、後ろにジャンプするつもりで後退し距離を取る。これでヴァイパーやスモールベアのターゲットはこっちに移った。流石に熊も一緒に対応できる程では無いのでそちらは前衛二人とカノン達に任せておく。


「ガアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「ヴァイパー2体にスモールベア2体…普通にやれば逃げてるけど…」


「ギ?! ギャアアアアアアアアアア!!」


 もう一体のヴァイパーが飛びかかってこようとしたその瞬間吸い込まれる様に1本の矢がヴァイパーの頭部を貫通し、それと同時にヴァイパーの頭が爆発した。


 僕の後ろではノーヴァ君が正に射抜くような表情で矢を番えている。


「【極神撃】」


 呟くと同時に番えた矢が極光を放ち今度はスモールベアに突き刺さる。モンスターは叫ぶことも出来ずに吹き飛ばされると同時に消滅した。


 今ヴァイパーとスモールベアを一撃で倒したのは彼の必殺技で【極神撃】という弓技だ。その効果は自身より【器】がある程度低い対象を【即死】させると言うトンでも効果だったりする。つまり…強くなれば強くなるほど、あの一撃はどんな相手でも即死させる事が出来るって事だ…怖いよ弓技。


 それに彼が言うには【極神撃】は即死弓技の中で一番弱いって話だ…頼もしいが敵が使ってくるかもしれないと考えるとこれほど恐ろしい技はない。


「よし…! このままこっちを潰してウォルクさん達の支援に回る!!」


 戦闘はまだ始まったばかりだ。



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