表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
116/216

CP-14 【はじめてのプレゼントとふぃーば~】 Ⅱ

来年の目標だった総合評価5000をあっという間に超えてしまいました(汗

沢山の評価やブックマーク有難うございます。 まさかのレビューも頂きありがたくて少し混乱してるほどです。 相変わらず矛盾などが多いお話ですが生暖かい目で見てあげてください。

―いきなり頓挫



「あいつに剣? いや、ヤスオって自前のショートソード鍛えてるし他の剣貰っても嬉しくないんじゃないのか?」


 【ヤスオに剣をプレゼントしよう大作戦】はフィルの一言目で終了してしまった。確かに普通に思い返せばヤスオの持っているショートソードは鍛えて形こそ変わっているものの、一度たりとて手放したことが無いのだ。フィルも安物であるショートソードに何故拘っているかわからず聞いてみた事がある。


 確かに量産品の十把一絡げのショートソード、何の能力もあるわけでもない鉄の小剣だが、ヤスオにとってそれは自分の命を助けてくれた最高の武器なのだ、例え金銀財宝を積まれてもどれだけ最高の剣が目の前にあったとしても交換も売る気も無いとヤスオはショートソードを握りしめそう言った。


 人にとって何が宝物になるかは個人の想いに寄るものなのだろう。


【―のーないかのん― そーいえばそうでしたああああああっ!? 何浮かれて基本的なこと忘れてるのよ私っ!!】


 脳内でじたばた泣きながら騒ぐカノン。ヤスオがメイン武器のショートソードを大事にしていることは前々から知っているのにプレゼントを~と思考がそっちに行きすぎて忘れてしまっていたようだ。


「武器以外なら喜ぶんじゃないか? というかそれよりもカノンがお返しとか考えてたのが吃驚だよ。普段から超然としてるしそういうのはあまり気にしないタイプに見えたからな」


「あら、心外ね。こう見えても義理堅いのよ私? 御礼返し位考えるわ、彼には冒険で世話にもなっているしね」


「あはは、ごめんごめん」


「もちろん貴方にも世話になっているわ、有難う。何かあれば私を頼りなさい、出来る限りはしてあげるわ。出来ないことは出来ないけどね」


「カノンが力を貸してくれるなら百人力だよ、その時はよろしく頼むぜ。ダンジョンアタックでは俺の力を何時でも使ってくれよ」


 フィルにとってカノンはヤスオと同じく頼りになるパーティメンバーだ。だからこそそんな彼女に感謝をされれば嬉しくない訳がない。ミキについてはシーフの仕事はちゃんとこなすし、逃げもせず頑張っているから信用し始めている。元々おおらかな性格なので、一度気を許せば悪しように傷つける男ではない。


「そう言えばカノンってもう此処に来て3ヶ月位経つよな。まだこの町に残ってるのか? 俺としてもあんたがいるのは助かってるけどさ」


「……3か月……ね」


【―のーないかのん― すいません忘れてました!! あんまり幸せすぎるからそんなに経ってるなんて頭からぽーんっ! だったわ!? いつもなら長くても3ヶ月で他の町や都市に移動してたけど…今ここを離れたら………パーティ解散っ!? ダメよっこの幸せを自ら捨てるなんてっ! でも、一度言った手前…どうしよう、どうしたら、どうすればああああああっ!?】


 脳内で盛大にテンパっているカノン。ここでいつもどおりに町を離れてしまえば気の合う仲間達とのパーティは勿論解散、次の町や村でこの様に楽しいパーティを組めるかわからない…いや、カノンの普段の態度ならば畏怖されたり避けられこそすれパーティに誘われたり作ることは出来ないと自分が思っている。


 勇気を出して言えば行けるかもしれないが、長年ボッチだったカノンにそれをやれと言うのは10日で上級クラスになれと言われた方がまだ優しく感じる超絶難易度だった。ヤスオや皆の様に簡単に仲間になってくれる冒険者など少数なのだ、寧ろ見た目の良いカノン。その体を目的として集まってくる輩が確実に来る。実際なんどもカノンの身体目的で近づいてきた男性冒険者は両手の指で足りないほど居た。


【―のーないかのん― ………はっ!? 閃いた!!】


「そうね、いつもならそろそろ違う場所に行くのだけれど…今回は少し事情が変わったわ。あのダンジョン……まだ主を倒していない。あれをみすみす放置なんて出来ないわ、今のパーティなら倒せる可能性もあるしもう暫くは此処に滞在させて貰う予定よ」


 髪の毛を手櫛で梳きながら優しい笑顔で言うカノン。その瞳はとても真剣で確実のボスを倒そうという意思の光が見て取れる。フィルも何回か彼女とパーティを組んでカノンの性格を大体だが把握している。


 強く、沈着冷静で時と場合に寄っては冷徹な指示も厭わない氷の様な魔法使い。だが、その姿とは裏腹に仲間の状態を逐一確認し、指導し導いてくれる女性だ。そして、戦闘中は氷の表情の中に苛烈さを見せ敵を闇の魔法で潰す熱い面もある。優しく少しおっちょこちょいで日向の様なヤスオとカノンの仲が良い事から彼女も優しい人間なのだとフィルは思っている。


「成程………そうだよなっ! 俺達が頑張って強くなればあそこのボスも倒せるかもしれねぇし! カノンも俺と同じ考えで嬉しいぜ! ヤスオもきっと喜ぶよ」


【―のーないかのん― 言ってやった! 言ってやったわ! これでボス退治まで時間が伸びる! やったねカノン! 皆と冒険が出来るよっ】


 フィルの考えているカノンの中身はこんなもんである。


「俺も少しは強くなってきたしこのままレベル上げていかないと。カノンが残ってくれてヤスオや団長達が居れば行けそうだよな! よし! 絶対に頑張って倒そうぜっ!」


「えぇ、貴方の力期待しているわ。だけどあまり出すぎてはダメよ? ヤスオさんやファッツさんと違って貴方のHPは低いのだから、その場の状況をよく考えなさいね」


「相変わらず手厳しいな、おぅ! 任せてくれよ! 流石にヤスオみたいな無茶はしないさ! そうそうあいつに何か贈るなら雑貨屋か道具屋見に行くといいんじゃないか」


「ヤスオさんは少し頑張りすぎる所があるのよね…」


 彼等の中のヤスオ像は、常日頃仕事か訓練か勉強か狩りのどれかをやっている姿しか思い浮かばない。実際その通りなので間違っては居ないのだが。


「雑貨屋か道具屋ね、それが無難かしら。有難うフィル君その情報活用させてもらうわ」


「大したこと言ってないさ、それじゃあな」


「それでもよ、感謝しているわ」


 軽く手を上げてパトロールに戻るフィルを見送る。


「ふふ…元気な子ね」


 普段見せない柔和な笑みを浮かべて彼女もまた歩き出す。まずは道具屋に向かおうと歩を進めながら―


【―のーないかのん― なんか、なんか良いわね。仲間の会話…! あれこそ仲間の会話よね!! よーし! やる気が出てきたわっ! まずは道具屋に行ってみましょう!】


 脳内で相変わらずフィーバーしていた―




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ