30-01 【慌ただしい平穏】 Ⅰ
30話開始です。 本格的なバトルは…もう少しでしょうか?
―鍛冶場
モンスター退治ばかりでは鍛冶の技術は身につかない、なので最低でも週に1回は鍛冶場を借りて鍛冶の鍛錬を行っている。今のショートソードをこれ以上に強化するためには経験の他に鍛冶スキルのランクアップが必要になる。なのでこういう日は手に入れたり買ってきた鉱石を使い数打ちを行い技術を磨く。この時親方に1から10まで教えてもらう訳にはいかない。なぜならそれはその人の技術であり、それを1から10まで覚えてしまえば出来上がるのは親方の技術を覚えただけの劣化鍛冶師になってしまう。単純に働くのならそれで良いかもしれないが、僕は違う…自分の宝物であるショートソードを自らの手で最高の一振りにしたいのだ。
技術を盗み、自分で勉強し必要な自分にあった鍛冶を行う。ダメだったらそれが完璧になるまで槌を振るい、自分の最高を自らで育てるしか無い。楽な方楽な方に進むなら元々鍛冶なんてしないさ……
「…………」
汗だくになりながらただひたすら必死に槌を振るう。どういう振り方が最適なのか、どこを重点的に打ち込むのか、どういう形にするのか。それを頭の中で描きながら自分の理想の剣を打つ―
いつかきっと、この剣を最強にしてやりたいから―
「……ふぅ………5本目完成と……粗悪品じゃ無いけどこれじゃあ売れないな」
作っているのは鉄のショートソード。
何度も何度も作っていく内にこれを作るのが一番得意になった。メイン武器がショートソードだから当たり前なんだけどね。次に得意なのはロングソード系。大剣類のグレートソードとかはまだまだ苦手だ。作る品種によって作り方は多種多様に変わる、同じ武器だって何が最適かは自分で理解して覚えなくちゃならない。鍛冶の道ってのは冒険してるよりも大変だ。
「…だからこそ、面白いよな」
今が何時かわからないが、これだけ打ったんだしいい時間になっているだろう。流石に体力も限界だし今日はこの辺で上がろうと片付けをしていく。
…………
―居間
「お疲れ様でした、今日はどうでしたか?」
風呂上がり、セレナちゃんはいつも居間で飲み物を用意してくれている。とてもありがたいけど、なんともこそばゆい感じだ。
「んー、まぁまぁって所かな。やればやるほど何処がダメなのかわかってくるからね、100%を目指すために1%を覚えようとしたら、そこからまた100%目指さないとって感じだよ」
「わぁ…やっぱり大変なんですね」
「この程度じゃ大変にもならないさ、まだまだスタートラインに足を踏み入れたばかりだからね」
「なら沢山頑張らないとですね」
ニコリと笑う彼女の笑顔を見ながらお茶を飲む。こういうのんびりとした感じは気が楽になっていい。精神的には元気でも酷使した肉体は休息を求めてるからこうしてゆっくりするのもまたいいもんだと思う。
「もうヤスオお兄さんがここに働きにきて数ヶ月以上経つんですね。なんだか時間が過ぎるのは早いです。町の皆さんとも仲良くなれてますし、当初此処に来た時から見たら凄い成長ですよね」
「ありがとう。正直自分でも驚くスピードで成長してるから何か反動があるんじゃないかって毎日ヒヤヒヤしてるよ」
「あ、分かります。調子のいい時が続くとミスが怖くなりますよね」
コミュ障は知り合った人となら結構会話出来る様になってきた、もう彼女やフィル君、アリアちゃんとなら目を見て話す事が出来る。何気ない会話をするだけで時々起こる目頭が熱くなるという事も少なくなった、かなり改善されてきたのかな…まだまだ尊敬する人や大人の人と会話する時はどもってしまうけどね。
「ほんと…この町に来る事が出来てよかった。今は本当にそう思うよ」
ふとセレナちゃん見ると優しく微笑んでいた。まだまだ遊びたいざかりの子なのに、母性的な感じのする子だと思う。
ミキがよく【恩を返す】って言ってるけど、僕もあいつの言葉の通りにこの町に恩を返したいと思っている。何かあれば率先してこの町の皆のために立つつもりだ、モンスターが襲ってきたなら冒険者として皆を守る。
「僕はさ…かなり自堕落で自由になるととたんに怠けちゃうんだ。今はそれ以上にやりたい事があるから頑張ってるように見えるけど、実はそうでもないんだよ」
「人間って二面性があるってお爺ちゃんが言ってました。今の頑張ってるヤスオお兄さんも、お兄さんが言う怠けてる時もどっちもヤスオお兄さんです。だから皆色々してくれるんだと思いますよ? 出来れば両方を安定してくれたら心配する人も減るかもですね」
「あはは…セレナちゃんは手厳しいなぁ。うん、頑張るよ。よっし明日は休んだ分頑張らねーと! 流石に身体が鈍っちゃうからね!」
「おーにーいーさーんー」
「へ……ひぃ!?」
そこには可愛い顔なのに夜叉が降臨したように見える彼女がおりました……
「いいですかっ! ヤスオお兄さんはもう少し!※クドクドクド」
「あ、はい…すいません、超すいませんです」
彼女には頭が上がりません、めっちゃ怖いから…うん。




