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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
110/216

29-03 【上級の指南】 Ⅲ

整骨院通いは大変ですね。

来週からは本格的なリハビリと言われました、早く良くなりたいです。

―座学中



 実技の後は身体を休ませる事もあってか座学がメインになる。

 庭に用意されたテーブルで薬湯を飲みながらエスタさんに剣や魔法の効率的な使い方について色々教わっていく。初めは全く理解できなかったが、エスタさんはわからない場所はわかりやすく何度も重点的に教えてくれるので、物覚えが良くなってきたこともあってか、色々な戦い方を覚えてきている。


 僕の様な剣も魔法も使えるタイプはどちらを極めると言うよりは両方をまんべんなく高めていくほうがやはりいいらしい。剣を極める、魔法を極める…長い年月をかければいつかは到達するかもしれないが、そんな悠長にしているほどの時間はないし、そこまで行くとただの趣味の領域だ。


 これが同じ上級クラスの【ソードマスター】や【ナイフマスター】【スナイパー】などならそれぞれ得意とする武器を極めながら戦えるが、剣も魔法も両方共操らないといけない僕の様なタイプは一つにかまけてたら選択肢が狭まってしまう。


「やっぱり、色々あるんですね。自分はショートソードを愛用してますから、速剣術が一番使いやすいですし」


「良いチョイスだと思うよ。大剣は狭い場所では使いづらいけど小剣は大体の場所で扱える、それに軽いから盾も持ちやすいしね。二刀流もそれならいける。防御中心で戦えば護剣術ももしかしたら閃くかもしれない」


「護剣術ですか…名前からして防御中心みたいですね」


「うん、相手の攻撃を剣で反らしたり反撃したりとね、技に寄る威力増加は殆ど無いに等しいけど、生き延びる剣術としては最高峰さ。問題は剣を激しく酷使する技が多いから武器が直ぐ壊れてしまうという難点があるんだけどね」


「うわ……そ、それは出来ればあまり使いたくないですね…」


 少しずつ強化しているショートソードがあっさり壊れてしまったら精神にすさまじいダメージが来るよ…僕は速剣術でいいや。


「その辺は個人のやり方だね。ファイターの上級職【バトルマスター】とかは様々な武器を使い、各武器術を使えるけど僕らは其処まで器用じゃない、魔法と1~2つの剣術で戦うのが基本だよ。色々覚ればたしかに便利だけど、それだけ戦闘中に何を使うかと意思を割かなくちゃいけない。強敵戦では1ターンも遅れたら死ぬからね」


「やっぱり速攻で押し切らないと大変ですか」


「タンク…盾衛術を覚えて皆をカバー出来るメンバーが居るなら耐え切る戦いも出来るね、下級はまだ大丈夫としても中級~上級ともなれば後衛のHPでは1撃だって耐え切れないモンスターばかりになる。タンクが居るならじっくり攻められるけど、居なければ攻撃される前に落とす…これが基本だよ」


 戦闘では何より火力が物を言う、相手が攻撃する前にどれだけ早く敵を全滅させられるかが重要になるのだ、そうしなければ防御系の人が居なければ此方が大ダメージ、もしくは壊滅してしまう。アリアちゃんやカノン、僕が使う全体攻撃魔法を防御出来なければ相手は全員ダメージを受けてしまうし、そうなれば動きが鈍る。HPたMPで自分の状態は理解できても、痛みなどは残ってしまう…腕が折れたら剣は使えないし、喉をやられたらHPやMPがあっても魔法使い系は終わる。だからこそ全体を守る事が出来るタンク系は必須だし、敵を安定して撃破出来るだけの火力が求められる。


 オッターさんが言っていた、時間を掛けて戦う自分の様なタイプや探索に特化したシーフ等は低ランクの頃は需要が無いと、高ランクになっても火力を中心として考える人達が多いらしい…やらなきゃやられると考えれば確かに1手でも遅くなる、火力がない味方が居るのは辛いだろうが……でもだからって折角の探索シーフやデバフメイジを外すのは本末転倒だと思う…それってつまり背伸びしすぎてヤバイって事なんだろうしね…適性の場所で適性のパーティで適度に稼ぐ…それが一番安定してると思う。


「僕らは魔法を使うつまり色々と冷静になって戦わないといけない。魔法は使えば敵を絶対に攻撃してくれるって訳じゃない。ミスすれば自分や仲間を傷つける。常日頃から何が起きたとしても冷静でいられるようにしよう。仲間が倒れたからと激昂してしまえば次に待つのは自分や味方の死だ」


「き、肝に銘じます…」


 思い出すのはハウルさんがモンスターに倒された時の事。

 あの時は頭に血が上りすぎて、滅茶苦茶切れてたなぁ…あれじゃやっぱりだめだよな…メンタルを鍛えないとこれから先あぁいうことが無い訳じゃないんだから。


「そういえば魔法ってやっぱり本でしか覚えられないんですか? 聞いたら魔法書は【上級・上位】までは覚えられるって書いてましたが」


「うん、魔法は魔道書を読んで相性さえ合えばステータスが足りていれば魔法を取得できる。戦士の閃きが【武神の加護】と言われるように僕等魔法使いは【賢神の加護】と呼んでるよ」


 【武神の加護】に【賢神の加護】か…こう、厨二魂が燻られるネームだなぁ。


「ただ、最上級魔法は専用の魔導書が必要になる。もしくは龍や聖なる神殿で継承を受けるなんて方法もある。後者はよほどステータスが高く無いと無理だけどね。だから大体の魔法使いは上級・上位で止まってる。まぁ治癒や時空の上級/上位を使えれば、国の王宮魔術師に抜擢されるんじゃないかな?」


「治癒と時空ですか…なんか凄いですね…ってあれ? 最上級魔法まで行かなくてもいいんですか?」


「魔法はどれも強力だけど、中級から更に使い勝手が良くなる。上級下位や上位はそれぞれ威力や効果に特化したものも増えていく。でも最上級はそういう次元じゃない、神が邪悪な龍や同じ神を倒すために作ったと言われるくらいだからね。どれもこれもすさまじい効果がある、それゆえに代償も多いけどね」


「だ…代償………」


 魔法を使うとデメリットがあるやつもあるのか……最上級魔法は何かとんでもないんだな…なんて思ってたら、そんな僕の考えを木っ端微塵にするような説明をエスタさんは教えてくれた。


「僕が引退するまでに、最上級魔法は2回ほど見たことが有る。両方共、出来ればもう見たくないな。特に、片方の魔法は代償が自身の魂の消滅だからね…一応効果を聞きたいかい? 正直現実味がわかないけど?」


「は…はい。エスタさんが辛くないんでしたら、聞いてみてもいいですか? 効果を知っておけば万が一そんな魔法をみても逃げられるかもしれないし…まぁ、そんなの使う相手に会えばそれ以前に死にますけど」


「これら最上級の魔法の対処法は一つ…使われる前に相手を倒すか逃げる…逃げるのは転移とかで相手から数百キロ位離れるのが前提だね、じゃあ説明しよう」



―【灼熱煉獄降臨】

―地獄の炎を自らを中心として半径【魔】キロを覆い尽くす。

―敵味方問わず、地獄の炎で焼きつくす。

―【炎】を糧とする存在以外は【耐性/無効/吸収/反射】を【貫通】

―使った後、永遠に五感消滅、【魔】0になる。


―【生誕天使降臨】

―自らの魂を生贄に、大いなる大天使を召喚する。

―大天使は呪文行使者の意思を引き継ぎ【魔】時間の間敵を永遠に攻撃する

―更に味方全体を永続的に回復させる。これには死亡回復も含まれる。

―ただし、この魔法で呼び出された天使は仲間以外に一切の容赦はせず

―敵を殲滅するまで辺りを崩壊させていく。



「対処方法がありません、本当にありがとうございました…」


 なに…この…なに…ぼくがかんがえたさいきょうの魔法??

 発動されたら終わるし、使った奴も終わるじゃないか…デメリットとかそれ以前にこれアグレッシブ自殺だよね…


「どちらも覚える方法が難しい上に代償が酷い。お目にかかることなんて一生に一度あれば奇跡だよ。何故か僕は二回見たけど…ほんとよく生きてた」 


「すさまじい世界や……」


「僕が使えるのは2種の属性の上級・下位まで。最上級なんて有る方が稀だよ。例え覚えても使いたくないしね、灼熱煉獄降臨なんて使った後永遠に五感消滅、【魔】0になるっていう効果だし…」


「生きててもそれじゃ何も出来ないですね…植物状態より酷い…」


 自意識は残ってるだろうけど、永遠に真っ暗で何も聞こえず感じないまま生きてるだけ…いっそ死んだほうが幸せレベルだよそれ。


「あれを使わざるを得なかった…そういう状況じゃないかぎり最上級は封印するべきだ。まぁ、覚える機会が無いから僕等には意味のない心配だけどね。ま、怖がらせたけど最上級魔法は上級の大魔法使いレベルにならないと覚える条件すら整わないからね。安心ていいいよ、さ…今日はここまでにしようか」


「はい! 今日もありがとうございましたっ」


 少しずつ少しずつ、冒険者として生きていくための知識を学んでいく。本格的に冒険者になろうとしている人が見たら怒りそうなやり方かもしれないが、それでも僕はこのやり方で頑張っていこう。鍛冶を鍛え、体を鍛え、心を鍛えよう。こうしなくちゃいけないという縛りは無いのだから。



―29話終了…30話に続く



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