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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【序章】 異世界で死と背中合わせのサバイバル
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03-03 【無知の中の研鑽】 Ⅲ

ブックマーク登録が何と400名を超えました。

皆さん登録ありがとうございます、とても励みになります。

亀の歩みで更新中ですが、楽しんでもらえるように修錬しながら描き上げますね。


―数時間後


 今僕は川に到着している。

 荷物は直ぐに運び終わり簡単な引っ越しは済んだ。今日からはあそこが僕の隠れ家になる。


 焚き火を試してみたが煙がそのまま上の方に行って流れてくれたので内部で使えることも確認した。これで夜中暗闇に怯えながら過ごす事もない。眠ることが出来ない真っ暗の夜はかなり神経をすり減らすから、焚き火があるだけでかなり変わってくるだろう。更に白骨死体もない。万歳、新しい洞窟。


 この川にはもうすでに何度も来ているので慣れたものだ。

 魔の森…つまり迷いの森の割には、周囲の道は迷わずに進めているのが不思議だ。毎回迷ってたら流石に詰むからこれはこれで助かっているが。


 場所は結構開けていてこの辺りだけは木々があんまり生えていない。茂みなどはナイフなどで切り払ったので、簡単な広場みたいな感じになっている。偶に動物などを見かけるが手に入れたことはない、流石に野生の動物は直ぐ逃げてしまうし僕には捕まえられないだろう。ウサギはこっちを見ると襲い掛かってくるが…


「2日も探せなかったからな…今日は頑張らないと。」


 魚を捕る時はいつもウサギの牙を使っている。

 そこそこ持ちやすく先端が尖っているので魚を狙って突き刺しやすいのだ。かなり頑丈で未だに先端が丸まっていない、武器に使えるというデータが間違っていないことがわかる。耐久度が無い(見えない?)のでいつ壊れるかひやひやしているが。


 すぐ近くには焚き火も用意している。別に此処で魚を焼く訳じゃない―ハウンドはまだわからないけどウサギは火を避けていくので安全性が確保されるのだ、夜どうしても眠くなってしまった時は表に出て焚き火をつけ仮眠をとった。時々寝過ごして消えてかけていた時は肝を冷やすけど。


 牙を構えいつもの様に魚が来るのを待つ。流石に何度もやってると慣れてくるものだ。何も食べ物が取れなくて泣きながらオロオロしてた僕にしては成長していると思う、食料が取れる…十分な成長だ、前はそれすら出来なかった。


 澄み切っている川なので魚が泳いできたら直ぐに分かるのが嬉しい。後は狙い目の魚が泳いでくるのを期待するだけだ。


 勿論その間も直ぐ横にショートソードを置くことは忘れていない。魚取りに集中しすぎてモンスターに襲われてしまっても運が良ければ迎撃出来るはず…出来ればその前に気づきたい、というか焚き火を見て逃げて欲しい。耳は周囲に傾け目は川の中の動きを見つめる―この数週間で僕も多少はマシになっただろうか。


「っ! 居たっ! 結構大きいな…」


 ゆっくりとした速度で泳いでくる魚を見つけられた。

 いつも食べている魚より一回りほど大きな魚だ、でかい分動きが遅いのかのんびりと泳いでいるように見える。取る側としてはこれほど有り難いことはない。

狙いをつけてそのまま一気に振り下ろす―!!


「……っしゃあ! 一発で取れた!」


 珍しく1発で魚を取ることに成功した、上手く行けばやはり嬉しいものだ。

それに心なしかいつもより振り下ろす速度が上がっている気がする。


 これがもしかしたら【速】の恩恵なのかもしれない。このままこの調子で魚を取ることにする、ちょっとだけ保存するいい方法を思いつけたのだ。


 それは後ほど実践することにしてまずは魚を取り続けることにした。


「……目標は5~6匹取りたいな、それだけ有れば結構保存できるだろうし…おっ? もう来たっ!」


 時間と闘いつつ漁を続けていく―


………………


―1時間後


 今日は驚くほど大漁だった、たった1時間で11匹の魚が取れたのだ。

 今日見つけた洞窟といい運が良すぎて後が怖い。ここでハウンド辺りに来られて取られでもしたら暫く立ち直れそうにないので直ぐに魚を捌いていく事にする。


 焚き火のすぐ近くでナイフを使い腹を裂き内蔵を取り出す。何回もやっていると魚の血程度じゃ気持ち悪くは無くなってしまった。川の水で汚れを洗い流しウサギの毛皮の上に置く。


「おとと…忘れる所だった。【弱風】」


―ヤスオは【弱風】を唱えた!!


 僕が魔法を唱えると涼しい風が流れ始める、勢いは扇風機の中~大位だ。一定時間【目視範囲内の望んだ場所】を起点に風を起こす魔法【弱風】流石に攻撃などには使えそうも無いけど、煙などを避けたりこうやって魚とかを乾かすのにはとても使える。こうして乾燥させれば干物として保存できる筈だ。


 干物にするためには何かが必要だったのは覚えているけど、それが何だか思い出せないしそもそも素材が無いので単純に乾かしていく。腐らなければ食べられるし味なんて気にしたものじゃない……結構重要だが。


 11匹の魚をそうやって乾かしている間は手持ち無沙汰だ。

 持って帰って乾かす事も考えたけど、丁度開いている時間だから剣の練習でも行おうと思う。焚き火はあるから多少は安全だろう。


 流石に洞窟の中で剣を振り回して壁にぶつけでもしたら一大事なので、こういう広い場所で練習するしかない。一朝一夕で身につくようなものじゃないけど、【剣修錬】と言うスキルを覚えているのだからやっておくに越したことはないはずだ。


「【速】が2点増えてるし、【剣修錬】を覚えてる。少しは身体が動くといいな…」


 ショートソードを片手で持ち態勢を整える。

 名前の通りこの剣は結構小さいので両手で持つには不便な武器だ。両手で使う時は前のようにとどめを刺す時にの様に全力を込める時位しか使えないだろう。握る部分が短いからそこはまぁしょうがない。


 でも力の無い僕にもよく馴染む剣だ、重さも恐らく1キロも無いだろうと思う。だからこそ僕でも扱えるのかもしれない、これがロングソードとかそう言うのだったら闘うことすら出来なかったのではなかろうか。


 構えなんてよくわからない。

 厨二的な武器の持ち方ならそれこそ何十も覚えているが、実際にそれでウサギと戦えるかと言われたらごめんなさいするしかないので役に立たない。なのでいつもウサギと戦っている自分を思い出し剣を構える。


 相手は小さいので必然的に身体を曲げる形になる、そのまま左から右に薙ぐように剣を振るうのが今の僕の戦い方だ。


「…っ! はぁっ!! たぁっ!!」


 まずは軽く素振りをする。

 運動不足なのと【力】が少ないのもあり素振りをするたび重心がぶれるがそれでも前よりは扱えるようになってきた気がした。武器の攻撃力は十分足りている足りないのは自分の力と経験そして冷静さだろう。


 特に僕は冷静さが一番大事だ、此処ぞという時に焦るからこの前みたいな目に合う、恐怖はそう簡単に拭い去れないけどあいつには【勝てる】のだから、ほんの少しでも冷静でいられるようにしたい。


 ウサギを仮想敵として考え集中して剣を振る。あいつに対しての攻撃方法は薙ぎ払いか振り下ろしか切り上げしかないのでそれを練習する。突きも考えたが素人の僕が突きをした所で外れてしまうだろうし、そうなれば此方が隙だらけになるので練習はしていない。


「相手をよく見て、集中して、冷静に……最後まで目標を見て、剣を下ろすっ!!」


 今はまだハウンドとの戦いは想定していない。

 見た目もそのまま犬にしか見えなかったので戦う場合はそれを参考にするしかない、犬と戦ったことなど生まれてこの方1回も無いが―


 ただハウンドが相手なら振り下ろしは危険だろう。突撃してくる巨体に攻撃を当てて止められる気がしない。やはりウサギと同じように基本は薙ぎ払いがメインになるはずだ。首元に薙ぎ払いが入れば流石に切れるだろう、そのまま切断できるかは僕の力によるけど。


「薙ぎ払い、何にせよ薙ぎ払いだ。これを安定して使えるようになればウサギに勝てるはず。」


 何度も何度も馬鹿の一つ覚えのように薙ぎ払いの練習をする。偶に振り下ろしに変えたり、切り上げに変えたりもするが。やはり一番簡単で相手に当てやすそうな薙ぎ払いがやりやすい。


 そういえば剣を何度も振るっている割にはあまり呼吸も乱れていないし疲れもあまり感じない、【力】と【体】が上がったお陰だろうか。出来るなら【知】【魔】【運】が上がって欲しいけど満面なく上がったほうが生き残りやすいかもしれない。


「と…魚そろそろ乾いたかな? ………よし今日はそろそろ戻ろう。食料をしまったら今度は武器か防具になるものを探しに行かないと。」


 毛皮の先と先を縛って袋状にし持ち運ぶ。

 たった一枚の毛皮がここまで役に立つとは…世の中無駄なものはなにもないのかもしれないと悟りそうだ、食料を落とさないように抱え新しい隠れ家に向かい急いで帰宅する。今日はまだまだやることがあるのだから、急がないと行けない―




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