29-02 【上級の指南】 Ⅱ
ティアさん(防具屋の店主さん)の名前を変更します。
他の場所の名前も早めに変更します。ティルさんと被るんです(後で気づいた
混乱させてしまい申し訳ありません。
■名前変更
【ティア→エリス】
―防具屋【僕の店で売り子になってよ♪】
「おやいらっしゃい。旦那なら外にいるよ、今日も頑張ってね」
「はい、有難うございます!」
エスタさんに鍛錬を受けるようになってからこれで5回目の訪問になる。防具も買わずただ師事を乞いに来ているだけなのに、そんなこと気にしないとばかりにこの人は笑顔で迎えてくれた。勿論僕が強くなれば沢山防具を買ってくれるだろうという打算もあるよと言われたが、単純に人が良いのだと思う。
頑張って強くなって防具も新調しに来ないとな。
「君はよく頑張ってるし、マリーもそれを見てかなり感化されちゃってね。出来ればあの子もダンジョンに連れて行ってくれると嬉しいな」
「それは此方こそお願いしたいぐらいです。後列での物理火力は凄く頼りにさせてもらってます」
マリーちゃんの後衛火力は侮れないものがある。僕の頭の中では弓=そこまで火力がないと言うゲーム的な考えだったのが打ち砕かれた気分だった。一撃一撃、普通に弓を射る限りでは確かに魔法のほうが何倍も強い。でも僕のショートソードの一撃に勝るとも劣らないあの物理ダメージは支援武器などではなく弓も十分以上に主力武器なんだという事をまざまざと見せつけてくれた。
何より下級魔法は微妙に射程が短いのに対し、弓はそれ以上に長い射程を持つ。そこに技を込めて射放てばブラウンベアー…熊にも十分なダメージソースになる。更に言えば属性を込めた矢を使えば多種多様に属性を使いこなせるという接近で戦う僕からすれば羨ましいほどのパフォーマンスだと思う。
一応僕は魔法で武器に付与できるが、それは一拍間が開いてしまうデメリットがあるから戦闘開始かよほど隙がある時意外は使えないのだ…それらを鑑みて、レベルが僕達より低いとしてもマリーちゃんは是非ともPTに参加して欲しい一人だったりする。
「ふふ、そうなんだ。僕も親だからね娘が褒められると嬉しいものだ、ついつい気が良くなってしまう。という訳でこれをあげよう、君には必要だろう? 売ってもいいんだけどお金は十分あるからね。どうせこの辺じゃ売れないものさ、君が活用してくれるといいよ」
そう言ってエリスさんは僕に石の様な物をプレゼントしてくれた。形といい感じる魔力といい…どう見ても魔石だ。それもこれは……
―ヤスオはインテリジェンスストーン+1を手に入れた!
「ちょっ…これ魔石じゃないですか!? インテリジェンスって確か高いやつじゃ!?」
俺の塩で魔石が並んでたのを見たことがある、その中でも一際高かったのが【知】を上昇させるこのインテリジェンスと【魔】を上昇させるマジックの魔石だ。理由は簡単で魔法使いが手っ取り早く魔法を覚える為に必要なのが【知】で全ての魔法を覚えるために必要なのが【魔】だからだ。特に【知】が低いとメイジもアコライトも全く魔法を覚えられない。中級魔法を覚えるために必要な【知】は【15】であり、それを補うことの出来るこの魔石は他のステータス強化魔石とは一線を画す値段なのだ。た、確か…
「な…七百万R…」
「高かろうが安かろうが使わなければただの石ころだよ。コレを使って君が強くなれば皆を守れるだろう? マリーは見た通り危なかっしいからね君には期待しているよ。前にも言っただろう先行投資だってね」
顔をフードで隠し口元しか見えない彼女がニカッと笑う。これで人妻なのだからエスタさんは犯罪なのではないかと訳の分からない事を考えてしまった。
「有難うございます、きっと活用してみせます! マリーちゃんとも一緒に強くなりたいと思います!」
「うんその意気だ、若いっていいねぇ。頑張りなさいそれを使いたかったら、家から防具でも買うといいこっちは有料だけどね。それじゃ頑張っておいで。あぁ、無理しても身体が壊れるだけなんだから、その辺ちゃんと考えること」
「はいっ! それじゃ失礼します!」
彼女に頭を下げて僕はエスタさんが居るだろう裏に回った―
…………
「お疲れ様。うん、基礎は大体出来てきたね。筋は…はっきり言ってしまえば普通より少し下だけど、それを意思で補っている感じだね」
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
今日は木刀を使った実戦形式の組手だった。
流石というかなんというかもう、まるで相手にならないとかそういう次元じゃなかった。全ていなされ躱され、目の前や首元に木刀の切っ先があった回数などこの短時間の組手だけで50は利かない。こっちが1行動起こす度にエスタさんはその何倍ものスピードで翻弄してくるのだ。
最初の数回でこっちが全力でも無理だということがわかったので全力を振り絞って打ち込み続けた結果、完全にバテました。
「何回か軽い組手をしてわかったけど、君は剣を使ったことがないみたいだね。戦闘中の基本ができていない。それでも戦えるのはステータスが高いおかげと、持っている技のおかげだ」
「けほっ……な、なるほど…」
息も絶え絶えだが、エスタさんの指導を聞き逃す訳にはいかない。
「現状の下級までならそれでもいけるけど、中級以上になるとそれがネックになってしまうから、次回からはそちらの方の鍛錬も組み入れないとだね。自宅…外でも出来るように色々教えてあげるよ」
「あ、ありがとうございます…こほっ…この前までずぶの素人だったので、寧ろこれだけ戦える自分に驚いてますが…」
技と敵を倒せば上がるステータス頼りで戦っているからまぁ、当然といえば当然だろうね…なんせ少し前は家からほとんど出る事もないガチニートだったんだから…
「なるほどね、でもそれでここまで出来ているなら十分さ。足りない経験と技術は僕が出来る限り教えてあげよう、それを実に出来るかは君次第だけどね」
「有難うございます。……ふぅ…呼吸も落ち着いたか…」
「だけどこれは剣に限ったこと僕や君は魔法も使えるクラスだ。剣で足りなければ魔法を使う魔法がだめなら剣を使う。極めれば魔法剣を使う、君のクラスで魔法剣は取得出来るか分からないけど出来る限り教えよう」
「魔法剣と言うと【炎与】とかですか?」
ゾンビとかを攻撃する時にショートソードに支援魔法を掛ける事が良くある。中でも【炎与】は火に弱点を持つモンスターが多いのでよく利用している。一度唱えると刀身が魔法の炎で包まれ火の属性と若干の攻撃力上昇がある魔法だ。相手の弱点を突いて剣を震えばすさまじいダメージを瞬間で出す事が出来る。タフでそうそう死ににくいゾンビでも、この一撃で【三散華】まで持っていけば、7~10割削れるのだ。運が良ければそのコンボだけで倒せる事だってある。
「それはエンチャントだね、属性をまとわせているだけで魔法剣とは違うんだ。魔法剣とは言わば【魔法】と【技】の複合技、HPとMPを同時に消費するけどそのどちらの利点も兼ねた僕等ウィザードナイトの基礎にして奥義だよ」
「そ…そんなのが……魔法と技を複合ですか…」
凄い厨二浪漫あふれるスキルです…こう火魔法と掛けあわせて剣を振る度に猛火が敵を! とか……か、格好いい……
「消費が激しいからそうそう見せられないんだけどね。君がこれを使えるようになれば、前衛、後衛どちらでも臨機応変に戦えるようになれる。これはまだ覚えるだけにしておいてほしいな、君にはまず経験が必要だから」
「はいっ!!」
色々と為になるエスタさんのレクチャーはまだ続く―




