29-01 【上級の指南】 Ⅰ
平和な日々、ファンタジーだからギスギスするという事は特にありません。
この町の外はわかりませんが(汗
―雑貨屋【スーパーエキセントリック・焼き芋フィーバー】
道具屋の直ぐ近くにある雑貨屋さんがここ…名前が何かすごい場所だ。実は此処に来るのは初めてだったりする。ここの店は基本的に一般向けの雑貨しか置いていないので、冒険者とかはあまり足を運ばないのだ。多種多様に物が置いてあるが、香水や人形、衣服におみやげの食品など…まぁ何でも屋さんと言っても良いかもしれない。
今回此処に足を運んだ理由は、いつも世話になっている人達に……プレゼントをと考えたのだ―
僕は今までこういう事をやったことが無いので、いつもより緊張している。喜んでくれるか、それとも怒られてしまうか…流石に何が好き? と聞くのは難しかったので店主さんと相談しつつ選ぼうと思っている。
「おじゃましまぁ…す」
中はリサイクルショップなどのように色々乱雑に物が置いてあった。でも掃除は欠かしてないのかとても清潔感あふれる場所になっている。
「おやいらっしゃい、いつ此処に来るかと思ってたんだよ?」
「あ、ナッツさんこんにちは」
ここの店主であるナッツさん種族…不明。 いやどう見ても人間には見えない姿なんですよこれが、なんというかこう…動物? が衣服を着て歩いてる感じなのだ。実はこの世界、基本的な人間の姿以外にもエルフとかドワーフとか天使や悪魔まで人間のカテゴリーらしい。
ナッツさんはなんだろう…この辺詳しく聞いてないんだよな…あまり聞いちゃいけないことだろうし。あ、このナッツさんとは店以外で偶に会ったりするんだ。この前もハウンドの皮を集めて欲しいという依頼で会ったし、食堂で会うこともある、いつも店開いてるからおいでって言われてたので、それも会ってここに来ているのもあったり。
「今日はプレゼントかい? 色々あるから見ていってよ。あっ、そうだ!」
「ん? どうしたんですか?」
「僕の家族がさ冒険者なんだ、クラスはアーチャーだからもし良かったら一緒に組んであげてよ」
「はい、その時はこっちからお願いしようと思います」
「うん、有難う。それじゃ欲しいのがあったら教えてね?」
ニコッと笑うナッツさん。人好きしそうな顔だ。こう…動物的な可愛さがある。
「えーと…その、色々な人にプレゼントしたいんですが、何をプレゼントすればいいか…」
「おや? うーんそうだなぁ、こういう時は下手に考えないで思うままに選んでみたらどうだい?」
「思うままに、ですか?」
「そう、下手に凝るとさ逆に深みにはまっちゃうんだ。それで失敗したら目も当てられないでしょ? だからまずプレゼントを上げる人の性格とかを考えて無難なものを渡すのが良いと思うよ?」
「な、なるほど…」
確かに僕は無駄に考えで失敗することがよくある……ここはナッツさんの助言通りに皆の性格とかを考えて選ぶことにしよう!!
「有難うございます! 沢山買っていきますんでちょっと待っててください」
「うん、それは嬉しいね。のんびり待ってるよ、どうせこの時間はあまりお客さんも来ないからね」
まずは助言通りに色々見回ってみた。
流石雑貨屋、本当になんでもあるな…フィル君には服がいいかもだけど、流石に寸法までは分からないから……槍を研ぐための砥石とか買うのもいいかも。親方とセレナちゃんのプレゼントはさっき思いついたから大丈夫として……
そんな風に色々物色している途中、ふと目に止まったものがあった。
「……香水、か」
紅い小瓶に入っている香水、値段もちょっと高めの15万Rだ。どこかのブランドものなのか、それとも……
「……ティルさんに合うかな?」
いつも念話をしてきてくれるティルさん。僕の事を心配してくれたり、叱ってくれたり、日々あった面白いことなどを教えてくれる人。僕に姉がいたらこんな人だったかもなぁ、なんて思うほど温かい人だ。
そんな彼女に何かお礼をしたい、少し格好つけかもしれないがこれでちょっとでも喜んでくれたら、嬉しいよな。
「よし、他のも探そう」
…………
「全部で46万5700Rだね。おまけして45万でいいよ」
「え…いいんですかそれ?」
「いいんだよ僕のお店だからね」
「じゃ、じゃあこれで」
「お、100万R紙幣じゃないか、ヤスオ君も冒険者として頑張ってきてるね」
100万R紙幣。冒険者や大金持ち御用達の特殊紙幣だ。基本的に一般人は宝くじで大金でも当てないと手に取る事がないそうだ。僕もこの前のダンジョンアタックで手に入れたお金がかなりの物になったのでいつも素材などを卸してるセイルさんの店で初めてもらったのだ。
100万という大金がたった一枚の紙幣の中に凝縮されてると思うとなんか怖いよな…日本じゃ玩具の紙幣で1億とか100万円札とか見るけど、これは実物で実際使えるやつだし。あ、ちなみに流石に普通のお店でこれを使う人はいない。単純に大金過ぎるから迷惑になるのだ。10円ガム買うのに1万円使うのとおなじ感覚で考えてみるといいかもしれない。
「はいお釣りね。沢山買ってくれてありがと、この調子で沢山買ってくれたらオーダーメイドとか特殊な商品も売ってあげるよ」
「なかなかに商売上手なんですね…」
「あはは、こういうのは顔繋ぎが重要なんだよ。どんどん買っていってね?」
「はい、これからも利用させてもらいます、それじゃ」
「うん、有難うございました~」
皆に渡すプレゼントはこれでよし…これを家に置いてきた後はエスタさんの所で剣の鍛錬をする予定だ、無理をせずにゆっくりとね。




