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僕達は前を向いて生きていく。  作者: あさねこ
【1章】 異世界での成長録
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CP-12 【中級のダンジョンアタック】 Ⅲ

モブキャラの名前は無いほうがいいのかな? と悩みつつもう少しでヤスオ君のターンです。


―宿屋 アルス個室



 イクスを固定メンバーに迎え入れ、これで最低限の固定メンバーは揃った。タンク兼物理火力のアルス。回復と支援メインのアリー。後衛魔法砲台のティル。探索及びトラップ解除のイクス。そして将来性を期待している前衛物理寄りの万能タイプ、ヤスオ。


 後はこれに後衛物理のアーチャーか前衛ファイター、または後衛メイジが揃えば盤石と言っても良い編成だろう。


 特にヤスオの万能性は見逃せない、気づけばレベル10相当にまで実力を上げているらしく、物理、攻撃魔法、回復魔法、支援など幅広い面をカバー出来ているそうだ。少し前にアルスがヤスオの事を、未来の凄腕だと言っていたが、それがこの短期間で頭角を現している事に、喜びと不安を覚えていた。


「未来の凄腕、か……それが果たして未来なのか俺には想像もつかなくなってきたな。流石に成長スピードが早過ぎる、聞けばすでに中級一歩手前だ。俺の予想としては早くても半年以上はかかるとみていたが…」


 勿論天才ともなればヤスオより短い期間で強くなる奴も沢山存在している。だがヤスオは戦闘センスもそこまで高くないし、能力的にも特殊だが平凡の域を出ない。それなのにここまで強くなったのはひとえに、仕事が無い時は毎日の様に鍛錬、ダンジョンアタック、組手などを欠かしていないからだ。


 前も休みの時に何をしていいか思いつかなく成る程今の彼は修行漬けの日々を送っている。嫌な顔せず寧ろ好んでやっているのだから尚更始末におえないだろう。


「今はまだ、中級手前だ…だが、すぐにあいつなら追い付いてくる。それ自体は頼もしいし嬉しいけどさ。だけど………あいつ無茶してるんじゃないのか? 俺達とは違う成長の仕方、強敵と戦えば個別で上がるステータス。どれもこれも俺の考えてる以上だ」


 自分達を追い抜くのは問題ないと彼自身思っている。なぜならそれも個人の力の差なのだから。アルスもアリーもティルもヤスオの成長を喜びこそすれ、非難したり恐れる事などはありえないだろう。もしも力量差が離れて、パーティを組めなくなるかもしれんがそれもまた運命だと思っていた。


 だがそれ以前に危惧しているのは、無茶な鍛錬を続けるヤスオがこのままでは潰れてしまうのではないかという不安だった。こればかりは側に居ることの出来ないアルスにはどうしようもない。ティルがこの辺を諭してくれるかもしれないが、どうにもヤスオは一度決めたらとことんまでやり通すタイプらしく、あまり成果があがっていない。


「俺等の中で【念話】が使えるのはティルだけ。生活魔法も相性があるから俺もアリーもだめだった。だからヤスオの情報はティルから聞くしか無い。なぁ、ヤスオ? 俺達はお前が追い付いてくるのを待ってる。だけどな…無理する事を望んじゃいないぞ?」


 ティルはヤスオが強くなっている事を単純に喜んでいるが、ヤスオが無理をしているという考えには至っていないだろう、前に一度注意して彼なりに自制していると言うが、それもどこまで信じていいか。だからこそ、ティルに相談しヤスオがおそらくしているだろう無茶とは思っていない無茶を止めさせなければ行けない。無理が祟って肝心な時にダメになっては本末転倒なのだから―


 と考えがまとまった所でドアがノックされる。


「開いてるよ」


 その言葉と共に開かれるドア。そこからひょこっとアリーが顔だけ出していた。


「ごめんねもう寝る所だった? 入ってもいいかな?」


「いや、考え事してただけさ。どうぞ」


「やっぱりかぁ…うん、お邪魔します」


 ドアを締めてアルスが座っている椅子の真向かいに座る。革製のソファがゆったりと沈んでいく。


「なんだ、俺が考え事してたの気づいてたのか」


「ティルは気づいてなかったみたいだけどね。さっきからずっとヤスオと念話中だし。毎日毎日楽しそうに会話してる」


 余程な事がない限り毎日1回はこの時間に念話をしているティル。寧ろこの念話が出来なかった次の日は凄まじく機嫌が悪かったりする。


「『弟が出来たみたいだお』だったな、俺達は年が近かったしティルにとっては可愛い弟分なんだろうさ。俺としては早く砕けた口調になってもらいたいんだが」


「だね。私も彼の素の口調を聞きたいよ。畏まられるのは私達苦手だしね。で? 悩んでるのはやっぱりヤスオの事?」


「ほんと相変わらず鋭いことで。全くもってその通りだよ、一応案は見つかったんだがな」


「アルスの事くらい私にはお見通しだよ。伊達に小さい頃から一緒に居た訳じゃないんだからね」


「やれやれ、おっかない幼なじみだ。んじゃ、とりあえずティルに伝えてくれないか? ヤスオの事でちょっとな」


「うん、わかったよ。(はぁ…やっぱり間接的に言ってもわかんないかぁ。出来れば気づいて欲しいよね…正面から言うのはまだ勇気が持てないし)」


 そんなアリーの気持ちを知ってか知らずか、ヤスオの事について語っているその姿は友人を心配している男友達のそれだった。そんな子供っぽい彼の姿を見れただけでも今日はいいか―と、受けた伝言をティルに伝えにいくのだった。



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