54 あのかばん、どこいった
ひさしぶりに書きました。
楽しんでいただけたらうれしいです。
「なんや,もう敵倒しても~たんか。」
ラシュが騎士団長との話を終え,4人の所へ歩いていくと,シグがアッシュから話を聞いてがっかりしていた。
「ああ。あっちの王都騎士団長がな。他の雑魚は宮廷魔術師が送還した。」
アッシュのざっくりした説明ではそこまで詳しくはなかったのか,ラシュの説明にシグが驚く。
「ええ?!なんで王都騎士団長と宮廷魔術師がここにおるんや?王都騎士団も宮廷魔術師も王都ん中から出ぇへんもんやろ?」
「事情は知らないが,いた。」
ラシュはもう一度魔術師の青年がいたところに目を向けた。
「魔物の壁もなくなったのなら,辺境騎士団と冒険者のところへ逆戻りですかね?面倒ですが…。」
サイカの言葉に,ラシュは肩をすくめた。
「そうだな。せっかくここまで来たが,一度報告に戻らないとな。」
「えー!!面倒!!このまま王都に行こうや!あっちのギルドで報告したらええやん!!」
「その場合,ギルドへの報告はシグがお願いしますねぇ。我々はあなたのわがままにつきあうのですから。」
「ぐっ、サイカやってそう思うやろ!」
「まあ,そうなんですが。」
シグに言われて苦笑するサイカだが,ラシュが困った顔で話す。
「俺は,ランディとビクタムからかばん回収してねぇから戻りたいんだよ。物の回収先がおれたちんところだから。」
「ええやん。あんたんとこに勝手に入れてるんだから好きに使わせてもらえば。」
「あほか。逆に使われることにもなるから嫌なんだよ。一応かばんごとに転送先は変えてるけどな。」
「さすがラシュさん。きちんとされているんですね。そういえば,メリクルウッドさんたちも今ごろは撤収しているんでしょうか?」
リーザが首をかしげる。
「たぶん,そうだろうな。さっき王都騎士団の団長が馬を駆ってったから辺境騎士団にも連絡を入れているだろう。」
「で,帰るのか?進むのか?」
しびれをきらしたアッシュがラシュに尋ねる。
「だから俺は一度戻りたいんだって。というか、おまえもかばん返せ。」
「え?ああ。うん。えーっと。」
アッシュがきょろきょろとして焦り始める。
「なんだよ。」
「どっかいった。」
「はあ?」
アッシュの言葉にラシュが苛立ち始める。
「いや、途中まではあったんだよ。ちゃんと斬った魔物を入れてたから。でも,プテラ追いかけてたあたりから記憶はない。」
「おーまーえーはー!!」
「うーっ!」
ラシュがはりせんでアシュの頭を叩き,アッシュがうずくまる。
「さーて,ここでアッシュ。うちに手を借りようって気はない?金さえあれば手伝う…。」
「あれ?これってラシュさんのかばんなんじゃないんですか?」
リーザがシグの背中に隠されているものに気付いて声をあげる。
「あっ、リーザ!なんで言うんよー!」
「シグっ!困ってるやつからさらに金をむしり取ろうとするなよ!拾ってくれたならありがたいけどな!!」
思わずラシュがつっこむ。が,その横でサイカがふふふと笑う。
「ラシュ,シグがアッシュの落とした物を拾う訳がないですよ。あれはすったんでしょう。」
「ちょっ!サイカ!あんた何てこと言うねん!うちは小悪党やないで!!」
サイカの言葉に,シグが憤慨するが,ラシュは二人を見ながら少し考え込んで,頷いた。
「…そうだな。サイカが正しそうだな。」
「ちょお,ラシュも何でサイカを信じるんよー!」
シグはふくれっ面をしてラシュにつかみかかる。
「リーザもよく気付きましたねぇ。ほうって置いても面白かったんですがねぇ。」
ラシュとシグがぎゃーぎゃー騒いでいる様子を見ながら,くすくすと笑うサイカに,リーザは少し困った顔をした。
「えと,ラシュさんとアッシュさんがあまりにもかわいそうで。」
「リィィザァァ!!教えてくれてありがとうーー!!」
アッシュがリーザに飛びつこうとするのを,サイカがさっとリーザの手を引いて避けさせる。そしてアッシュの背をラシュが引っ張る。
「きゃっ。」
「アッシュ、あなたはリーザを殺す気ですか?!あなたの抱擁は相手を壊すから止めなさい!!」
「そうだぞ!お前の歓喜の抱擁は病院送りと同意語だって前も言っただろうが。で,シグも早くそれ返してくれよ。」
片手でアッシュを持ち,シグの方へと手を伸ばすラシュに,シグはしぶしぶかばんを返す。
「あーあ,せっかくアッシュに借金させられると思ったのに…。」
「お前は仲間からでも容赦ねぇよな!」
「うちは損なことはしない主義なんや!」
「威張りながら言うことじゃねー!!」
ラシュのつっこみが森に響いた。
「で、かばん返せよ?」
森から帰った冒険者たちは,一様に居酒屋『猫の目』で騒いでいた。焼き鳥の串を持ったラシュがビクタムたちに声をかける。
「ん?かばん?・・・あー、ありがとなっ!」
「おう!返すぜー!!」
二人から返して貰い,ほっとするラシュ。
「いやー、今回は勝負も出来て、金も入ってほくほくだぜ~!」
冒険者たちの夜は遅くまで続き、次の日の朝は死屍累々であった。
【設定54】
居酒屋『猫の目』 王都の前の街の店。たくさんの人が入れるほど大きな店である。
おすすめは店主の自慢の卵焼き。




