53 騎士団長と魔術師団長と魔物使い
ずいぶん間が開いてしまいました。
楽しんでいただけると幸いです。
「イシュレイ!」
「君だろうとは思っていたけど、あの魔術陣をこの短時間で模倣するなんてさすがだね。」
ロディは笑顔で、サトゥは呆れた顔をして出迎えた。アッシュとラシュは現われた魔術師の青年にぽかんとしている。
「ふん。魔物の召喚と送還の魔術陣はもういただいたぞ。だがなぜこんなことをしでかした?」
いぶかしむ顔をしてみせる魔術師イシュレイに,サトゥも不機嫌そうに返す。
「あのさあ,ぼくだってしたくなかったんだよ?でも,ジオに言われちゃあ,手伝わない訳には行かないだろう?それに,騎士団を鍛えるためだって聞いたけど,本当に王宮のいざこざじゃないのかい?」
「王宮のいざこざならこっちで片をつけておくが,召喚師ジオがそんな馬鹿な奴の依頼を受けはしないだろう?どちらかといえば,ジオの暇つぶしにしか思えない。」
冷静に答えるイシュレイの隣で、ロディが首をかしげる。
「う~ん,ジオは遊び半分で依頼を受けてもおかしくはないと思うけど,うちの王宮にそんな気合いの入った人,いるかなぁ?」
ほわほわと考えているロディを見て,イシュレイが呆れた目を向ける。
「お前は外面しか見ていないからそうとしか言えないのだろうが,貴族なんてのは足の引っ張り合いが普通だ。早くお貴族の機微にも慣れろ。」
「焦らされても元冒険者の私がすぐには慣れないよ。王宮の陰謀なんて,そんな人間関係の難しいもの,イシュレイに任せるよ。」
「・・・まあいい。貴族の流儀っていうのは・・・ここで言い争っても仕方ないか。サトゥ,ジオと連絡は取れるのか?」
「いいや?」
イシュレイの問いに,サトゥが答えると,ロディが目を丸くして尋ねる。
「じゃあ,この戦いの決着はどうするつもりだったんだよ。」
「決着も何も,数日いたらひくつもりだったよ?」
きょとんとして答えるサトゥに,イシュレイがさらに尋ねる。
「その後のジオとの連絡手段はないのか?」
「そうだねえ。特に考えてなかったよ。」
「・・・まあ,ジオだし,サトゥだし。」
サトゥの答えに,二人は視線を合わせて肩を落とした。
「・・・ジオが現れるまで,お前は実行犯として捉えるぞ!!」
イシュレイが指先にふわりと光の輪を浮かばせるのを見て,サトゥが悲鳴をあげる。
「げー!?それは嫌だー!!」
「術士の拘束だから,これを使うのが当たり前だ。」
イシュレイが指先に浮かばせた光の輪は術士の魔力を吸収して拘束する力を発揮する物で,術を使おうとしても使えなくなるのだ。魔力を吸収されるので,脱力感がひどく,立つことが精一杯になるほどである。
「そりゃ,そうでしょ。この魔物達連れてきたの,サトゥなんだから。」
嫌がるサトゥに,ロディも呆れた目をして見せる。
「僕は捕まらないぞ!」
「諦めろ。」
逃げだそうとするサトゥだったが,イシュレイが指を一降りするだけで,サトゥの腕と足が拘束され,ばたんとその場へ倒れた。
「ぶっ。」
顔を地面に打ち付けたサトゥは地面に転がってもだえている。
「さてと,事の顛末はおよそわかったし,魔物も片付いたし,私たちの仕事はここまでだね。サトゥとジオの件はそっちで頼める?」
ロディの言葉に,イシュレイが眉をひそめる。
「何を言う。ジオの捜索も,サトゥの連行もお前達がしろ。そもそも,俺がここにいるのはお前に連れてこられたからで,俺の部下は来ていないだろうが。」
「うーん,まあ拘束してくれたし,連行はするよ。ただ,ジオの捜索は魔術師の方が得意でしょ。それに王宮の陰謀の方も。私には手がつけられない気がするから,イシュレイ頼むよ。」
ロディにお願いされて,イシュレイはしぶしぶ頷いた。
「・・・わかった。探索と陰謀はこっちでするが,事後処理と確保はおまえがやれよ。」
「えー,わかったよ。ありがとう,イシュレイ。」
ロディはにっこりと微笑むと,横でやりとりを見ていたラシュとアッシュの元へ歩いて行く。
「お疲れ様、君たちのおかげでかなり早く片づけることができたよ。助かった。あとは事後処理だね。君たちはどこから来たんだい?」
「おれたちは反対側から地方騎士団と合同で戦っていたんだ。ただ,元凶らしきあいつを追い詰めたら逃げられて追って来たんだ。」
「あ、もしかしてあれが仲間かい?」
ロディが指差す先にある,森の奥から人影が見える。のほほんと歩いてやってきているようだ。
「おーい!」
アッシュが手を振ると,リーザが手を振り替えしてくれたようだ。
「合流できてよかった。では私は騎士団を率いて周囲の確認をしてから地方騎士団と連携を取ることにするよ。君たちは?」
「俺達も一度戻って冒険者ギルドだな。」
三人が歩いてくるのを見て,アッシュが駆けていく。その様子を見ながら,ラシュは返事をした。
「そうか。・・・私の名前はロディスティルリー=アポロス。この国の王都騎士団の団長を務めている。国の危機に手を貸してくれて感謝する。」
騎士団長としての挨拶を受け,ラシュは頷く。
「こちらこそ,共闘できてよかった。さすがは騎士団長の闘い。見事だった。あちらの方は?」
ラシュが目で尋ねる。視線の先にいるのは,騎士団にサトゥを任せている魔術師だ。
「あれは私の旦那のイシュレイ=アーヌベルグ卿で,宮廷魔術師団長だ。」
「・・・そうか。さすがは宮廷魔術師。扱う魔術陣の幅が広いな。」
二人からの視線を受けて,イシュレイが二人を見る。互いの視線を交わして,イシュレイとラシュは目を見張った。
「・・・そういう君の魔法の腕はよさそうだ。名は?」
「俺はラシュトリカ=レヴェヌ。あれはアッシュ。」
「ラシュトリカにアッシュか。また会えるのを楽しみにしている。王都に来たならば,ぜひ寄っていってくれ。」
王都騎士団長ロディスティルリー=アポロスはラシュに手を差し出した。ラシュはその手を取り,握手する。そして彼女は騎士団員の待つ方へと駆けていった。
【設定53】
王都騎士団 対人 基本的に貴族。
地方騎士団 対魔物 平民からなる。
国境騎士団 地方騎士団の中でも強い人が配置される。国境は魔物が強い。
近衛騎士団 国内最強騎士団 王を守る。強さと賢さと美しさが求められる。
騎士団は下積みが3年、地方騎士団で5年。




