50 プテラディアン
だいぶん時間がたってしまいましたが,
楽しんでいただけると嬉しいです。
「いやあ、すごいなぁ。あの子たちを一撃で倒すなんて一体何者だい?」
サトゥは目を丸くして,楽しそうに微笑んだ。
「何者って言われてもな?」
「冒険者?」
問われたことに、ラシュとアッシュはキョトンをして顔を見合わせる。
「・・・うん,ただの冒険者だな。」
「おう,目指すは英雄な。」
「おまえはそうだけど、俺は違うぞ。」
「え?ラシュは賢者だろう?」
「そりゃあ賢者になれたらいいけど,スー爺にはなりたくない。」
と,そこへシグの声が後方から飛んでくる。
「アホゥ!そんな話しとる場合やないやろ~!!」
「ふふふ,アッシュとラシュは冒険者パーティ『笑う太陽』の名物コンビ『破壊神』とその『保護者』ですよ。」
サイカの言葉を聞いて,ラシュが睨みつける。
「サイカ,この野郎!!そんなあだ名は教えなくていいだろうが!!」
「へえ、破壊神か。君にはそんな名前がついているんだねぇ。おもしろい。」
サトゥはラシュたちのやりとりをおもしろそうに見ていたが,ふと目をつぶり,ぶつぶつと言い始めた。
「・・・ああ,そろそろ約束の時間が来てしまったようだ。・・・魔物達もだいぶん騎士団に押されているようだし,頃合いのようだ。私は王都騎士団の相手をしなければならない。・・・冒険者君たちと、ジオの妹。今日は楽しませてもらったよ。・・・ただし,俺のかわいい魔物達の借りはまた返そう。」
ふふふと笑いながら,魔物使いサトゥは片手を空にかざした。すると,頭上に大きな魔術陣が描かれる。
「でかっ!」
「まあ!」
「大きいっ!」
「すごいですねぇ。」
「うわっ!なんて大きな魔獣召喚陣だ!?!」
五人がそれぞれに口を開けて見ていると,魔術陣から大きな翼竜が現れた。
「すげえっ!!プテラディアンじゃないか!!」
「強いの?」
「プテラディアンは空を飛ぶ肉食恐竜で,ワイバーンたちとよい勝負をすると言われている魔物です。大昔にすでに絶滅したと思われていたのですが,世界のどこかに生き残っていたのですかねぇ。」
驚くラシュに,リーザが尋ねると,傍にいたサイカが答えた。
「・・・すごいんですね。」
サイカの話を聞いてもよくわからなかったリーザは首をかしげた。
「ええ,なかなか見られませんよ。」
5人が見上げていると,サトゥは手を下ろし,地面を指差す。
「おいで,プテラディアン。」
「ギャオーン。」
サトゥの声に応え,プテラディアンがサトゥの目の前に降り立つ。
プテラディアンの羽ばたきの風が5人に吹き付ける。
「わあっ!」
「ぶっ!」
5人が風から身を守っている間に,サトゥはすっとプテラディアンの背に乗った。プテラディアンは降り立ったときと同じようにまた大きく羽ばたき,土埃を舞い上げると,サトゥを乗せて空へ飛んでいった。そう,反対側の王都騎士団の方へ。
「あっ、逃げた!!」
ようやく土煙が見えなくなり,アッシュたちが顔をあげたときには,プテラディアンは森の向こう側へと姿を移していた。
「いや,逃げたんじゃなくて,王都騎士団を相手にしに行ったんだろ。」
「ラシュ,追いかけるぞ!あいつにも王都騎士団にも勝つんだ!」
アッシュが目を輝かせて走りだすのを,ラシュが叫びながら追いかける。
「まて,アッシュ!王都騎士団は味方だー!!」
走っていくアッシュとラシュの後ろ姿を見ながら,シグが肩をすくめる。
「あー,なんやいつものパターンやん。うちらも行こか。」
「そうですね,置いて行かれちゃいそうです。」
「仕方ありませんねぇ。」
のほほんとシグたちは二人を追いかけ始めたのだった。
一方,マジェンタ領所属騎士団は善戦していた。そんな中,森の最奥部で複数の魔術陣が宙に輝き爆発したり,大きな魔物の姿が見えたりしたので,パーヴァス騎士団長たちは驚いていた。
「あの多重魔術陣ができるのは賢者か宮廷魔術師の一部のはずだが・・・。」
「すごいですね,あれほどの数と大きさの魔術陣を描くなんて相当の手練れですよ。」
サイザル副隊長が感心してつぶやく。
「だが,どうも逃げられたな。あの大きな魔物に乗って王都の方へ行ってしまったようだ。」
「王都側からも王都騎士団が来ているはずですから大丈夫でしょう。」
「まあな。」
パーヴァス騎士団長はラシュたちがいるであろう森の最奥を見つめ続けた。
そのころの王都騎士団。
「行け!!ひるむな!!我らが抜かれれば王都はすぐ!!我ら王都騎士団の手で魔物から王都を守るのだ!!」
王都騎士団を率いるのは,馬に乗り,短い金髪を輝かせる騎士。
「ふふ。あまりに手強ければ俺たちが手を貸すぞ。」
「まったく。どうしてあなたはそういうことばっかり言うかな。王都を守るのは王都騎士団だろう?王都騎士団には魔法使いもいるんだから大丈夫だよ。」
騎士の隣に馬を寄せ,にやりと不敵な笑みを見せる黒いフードをかぶった男の言葉に,騎士は呆れながらもにこりと笑って見せた。
「そうだといいがな。」
「当たり前だろう。私が鍛えた騎士団をなめるなよ。」
胸を張る騎士に,くっくっくと男が笑う。
「ロディの言う当たり前は当たり前でないことの方が多かった気がするがな。」
「・・・イシュレイの独りよがりの方が問題だと思うな。」
「・・・お二人とも,今は戦闘中ですから,口論は止めてくださいね。」
二人の口喧嘩が始まりそうになると,傍に控えていた青年が声をかけると,騎士は照れくさそうに笑い,男は不服そうに口を閉じた。
【設定50】
プテラディアン 翼竜。大昔に絶滅した。はずだった。サトゥと契約していた。




