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43 騎士団からの依頼

楽しんでいただけると幸いです。

「ん?誰だ?」


突然の声に、シグとラシュの視線が混じり、ラシュがいぶかしげに返事をした。


「ああ、すまない。俺は地方騎士団マジェンタ領所属メリクルウッド=ヴェンザー。君のペンダント、魔術陣が付与されているんだろう?」


現れたのは、地方騎士団から支給される騎士服とアーマーを来た典型的な騎士だった。短い金髪の男は、シグのペンダントを指差して言った。


「ああ、そうや。」


シグが頷くと、メリクルウッドはラシュの方を向いて尋ねた。


「で、君がこれを作ったと言ったね。」


「聞いていたんだろう?」


「ああ。冒険者に魔術師がいるなんてめずらしいから思わず声をかけてしまったんだ。」


「別に構わないだろう?宮廷魔術師にならなければならない規定はないはずだ。」


ラシュとメリクルウッドは視線を交わらせ、外さない。ラシュは睨みつけるように、メリクルウッドはどこか余裕をもち、楽しそうに視線を向けている。


「ああ。でも、魔術師となるまでどこで研鑽をつんだのか気になるね。今回の魔物の大移動も天災なのか、人災なのかまだわかっていない。もし、人災であるならば、魔術師が関わっている恐れも十分にあり得る。つまり、在野の魔術師は監視対象になる。」


「で、あんたは俺を疑っているのか?」


「いや、そんな痴漢撃退用なんて芸の細かい魔術道具を作る魔術師がまさか魔物の大移動をそそのかすようには見えないさ。まして、彼女の痴漢対策を練る彼氏なんて初々しいじゃないか。」


「「彼女じゃない!!」」


ラシュとシグが揃って声をあげた。


「まあまあ、恥ずかしがらなくていいだろう?同じパーティのメンバーに彼女がいたら心配なのもわかる。だから自分だけ限定解除なんだろう?そんな細かい魔術陣の技術がある君ならきっと魔物の大移動に関わる何かを調べられるかもしれないだろう?騎士団の手伝いをしてくれないか?」


「魔物の大移動の謎を解くのを手伝うのはやぶさかではないが、とりあえず、彼女はやめろ!それから、俺は騎士団には入らないからな。」


びしっとラシュがメリクルウッドに指を差して言っている横から、アッシュがのんきにラシュに声をかけてくる。


「なあ、ラシュ。いつからラシュとシグは恋人になったんだ?」


「阿呆かアッシュ。今、俺はなってないって否定しただろうが!!」


ラシュは冷たい目でアッシュをにらむ。


「いえいえ、シグさんとラシュさん、とっても仲がいいんですもの。きっと恋人同士だろうっと思っていました。」


うふふとにっこり笑顔でリーザが追い打ちをかける。


「ちょお、リーザまで何言ってんのや!!」


「何、顔を赤くさせて反論しているのです。あなたたちが仲がいいのはいつものことでしょう。私たちは気にしませんから、どうぞ勝手に仲良くしていてください。」


シグが慌ててリーザにひっつくが、サイカが淡々と言い放った言葉に、ラシュはため息をついた。どう反論しようが風向きを変えることはできないと思ったラシュはあきらめて話を戻す。


「・・・くそう、ばかばかしい。シグ、ほっとけよ。で、何をどう手伝わせるつもりだ?あんたは。」


「魔物の進路と動きを探知して,その動線を追いたい。何が原因か突き止めることができるかもしれない。今までの発見報告と現在している索敵でなにかわかることがあるだろうからな。魔法の痕跡があるならば,魔術師がいる方がより確実だろう。」


「宮廷魔術師は出てこないのか?」


「宮廷魔術師は別の仕事がある。私たちのメインは魔物の討伐だからな。ただ、原因が究明できればそれに越したことはないだろう?」


メリクルウッドの言葉に、ラシュは少し考え、頷いた。


「わかった。いいだろう。」


「助かる。では、このまま討伐に向かってくれ。現場で得られた情報と,統合した情報を向こうの仮本部で合わせたい。」


「わかった。」




ラシュたちがそんな話をしているうちに、馬上の騎士が剣を振り上げて話し始めた。その姿に、集まっていた冒険者たちの視線が集まる。


「大量の魔物が王都やこの町に現れる前に、我々で討伐を行う!!冒険者には、協力感謝する。では、出陣する!!」


「うおおおおー!!!」


地方騎士団の声が響き渡る。冒険者たちは、魔物討伐へのやる気で熱気溢れているようだ。騎士団は使命感に燃えているが、冒険者たちにはいい小遣い稼ぎだと思っている者もいる。意識の違いはあれど、両者は馬車や馬に乗り込み、魔物の群れの潜む森へと向かった。




「で,なんであんたはここにいるんだ?」


「いや~、名前聞きそびれたからな。」


冒険者たちが詰め込まれた馬車に、ごそごそと乗り込んできたメリクルウッドに、ラシュが頬杖を膝について、じろりとにらんだ。


「そうでなくても狭いんやから、騎士団のあんたはこんといてや!!」


荷物の上に腰をかけ、他の冒険者から距離をとっているシグが文句を言いながら見下ろす。


「その通りなんですが、シグが言うことではありませんねぇ。」


「私も何も言えませんね。」


サイカがシグを見上げて言うと、シグの隣に座っていたリーザもくすくすと笑う。冒険者達が詰め込まれた馬車にはすでにいくらかの食料の入った木箱が置いてあった。暑苦しい男達が乗り込む仲、シグはリーザの手を引いて、荷物の木箱の上に陣取ったのだ。もちろん、屈強な男達が座ったら壊れそうな木箱だが、身軽なシグとリーザでは問題にならない。


「まったく、シグの言う通りなんだが、名前なんて別にいいだろ?」


「毎回、君って呼ぶとわかりにくいし、上司に連絡できない。」


「・・・ラシュだ。パーティ『笑う太陽』のラシュトリカ=レヴェヌだ。」


「な?!『笑う太陽』だって?!」


設定43 メリクルウッド=ヴェンザー

地方騎士団マジェンタ領所属。短い金髪の男。軽そうに見えるが、マジェンタ領の第3隊ウィルコット隊第5大隊長。たまに哨戒任務についたりする。今回はたまたまラシュ達のペンダントを見て話しかけた。抜けているところも周りから愛される男である。武器は大剣。投げナイフなんかの飛び道具も得意。

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