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40 持ち歌とパトロン

楽しんでいただけると幸いです。

「げげ?!!『笑う太陽』だと?!!いかん!!絶対にいかーん!!」


ラシュ達が護衛依頼の待ち合わせ場所に到着したとたん、大きな怒鳴り声が聞こえた。立派な馬車と数人の男達が囲っている初老の男性は顔を真っ赤にしていた。周囲の男達も表情は硬い。


「久しぶりだな。べームのじいさん。」


ラシュがにこにこと声をかけた、体格も声もでかいが,白い髭をはやし、頑固そうな眉と口をした一人の男、ロイディス=ベーム。ベーム商会の会長をしている。若かりし頃はきっと女性にもてたであろう容姿をしている。


「この生意気小僧たちめ。」


顔を真っ赤にして怒るじいさんに、シグはケラケラと笑ってなだめる。


「まあまあ、そう怒ることないやん。持ちつ持たれつやって。」


「この間、お前らが割ったあの皿は国宝級の皿だったんだぞ!!どれだけ損害が出たと思ってる!!」


「そのかわり、滅多に捕まえられないアンフィスバエナの脱皮した皮、あげたやんか。儲けたやろ?」


「ぐっ、それはそうだが。お前らが割らなかったら、お前らにたすけられることはなかったんだ!!」


「正論ですねぇ。」


にやにやと笑うサイカにさらにじいさんが怒る。


「へらへらと笑う貴様らが一番気に食わん!!」


とじいさんはラシュ達にびしっと指をさす、が、見慣れない顔に目を丸くする。


「なんだ?また増えたのか?」


また増えた、つまり、このベーム商会、よく『笑う太陽』が護衛を引き受けているのだ。最初はラシュとアッシュのみ、次にサイカ、そしてシグと人数を増やしながら複数回護衛をしている。それでも、護衛を断らないのは,ギルドがぎりぎりまで隠していることと,最終的には利益がでているからである。もちろん、被害はアッシュによるものが多く,その補填はラシュの修理と魔術陣付与であったり,幻の生物との遭遇による恩恵であったりする。


「ああ。リーザレインだ。」


ラシュはリーザを紹介しながら,リーザに場所をあける。リーザは頭を軽く下げ、にっこりと笑って挨拶をする。


「旅芸人のリーザレインです。このたび、仲間にさせていただきました。よろしくお願いしますね。」


「また変な奴が入ったな。」


「そんなこというなよ!リーザレインはすごいぞ!曲も歌も!!」


失礼なもの言いに,アッシュが吠える。また変な奴の仲間であろうサイカとシグはまったく気にせず,くすくすと笑っている。


「ほう、ではやってみるがいい。」


「ここでですか?う~ん、わかりました。それでは,歌劇『ヒューイット』から劇曲『花畑』。」


リーザレインは楽器を取り出し,朗々と歌い上げる。その音は,優しく,明るい。そして歌い上げる声はよく伸び、周囲を歩いている者達が足を止めて聞き入っている。少しずつ周囲に人が集まり,一曲終えるころにはたくさんの人が集まり,曲が終わった時には盛大な拍手が鳴り響いた。


「は~、すごいな、リーザ!!」


「やるやん。めっちゃよかったわ~。」


「さすがは劇団員。すごく美しい調べだった。」


「まさに気持ちのよい波長でしたねぇ。」


アッシュが目をきらきらさせて感動を伝えると、シグもラシュもサイカも,にこにこと褒める。


「ううむ。これは・・・。お前、わしのところに来ないか。」


「まさかの勧誘?!」


ベームはリーザレインに見惚れたのか、ぼうっとした様子でリーザレインに話しかける。今までとは打って変わった様子に、ラシュが思わず突っ込むと、シグが即座に反応した。


「ベームのおっちゃん、リーザはうちの子やで!借りたいんやったら契約、取引やで!」


「さらに身内からの売り出しって、おい、シグ、その辺りはリーザの意思を聞けよ。」


「わかっとるって。何にせよ、今はうちらの仲間や。勝手にどっかいってもらっちゃ困るし、仲間で手伝いに行くにしろ,契約はきちんと手続きしてもらわな!」


胸を張って交渉を買って出るシグに、くすくすとリーザが笑う。みんなに褒められて嬉しい、喜んでもらえて嬉しいという柔らかい笑みを浮かべているリーザはとても幸せそうだ。


「うふふ。シグったら。私は『笑う太陽』のメンバーと一緒にいたいので,お断りします。それに、私には戻る劇団もありますから。」


「ふうむ、そうか。また手が空いたら手伝ってくれると助かるんじゃがな。」


「そうですね。またの機会にしましょう。うふ。」


リーザの微笑みに、ベームは満足そうに頷いた。別に今でなくてよいということなのだろう。ラシュはそのうち何か頼まれるのだろうと思いながらリーザの肩を叩いた。


「よかったな、リーザ。もし俺たちがいないときに困ったらベームのおっさんも力になってくれそうだな。」


「ええパトロン見つけたやん、リーザ。ベームのおっちゃんなら気前もええしな、な~。」


シグもラシュに乗っかってリーザの背中を軽く叩き、ベームにウインクする。と、それを見たベームはふんっと鼻で笑い、にやりとする。


「おめえさんの金にがめついところは嫌いじゃねぇなあ。まあ、芸人のお嬢ちゃんは助けてやらんこともない。」


「強がらんときぃや。ただし、リーザを頼るときは必ずうちを通すんやで!リーザもええな?」


「『笑う太陽』にいる間はもちろんお願いするよ。」


リーザのにっこりとした返答にに、シグは満足そうに頷くと腕を振り上げた。


「さ、ベームのおっちゃん、王都に行こうや!目指せ、王都の祭り、やで!!」


「おい、俺が頼んだのは王都への護衛だぞ。」


ベームは、シグの言葉にじと目でにらむも、シグはなんのそのとにこにこ言いかえす。


「もちろんや。護衛はアッシュとラシュでなんとかなるやろ?うちはその先の王都での祭りをメインに考えてるんや。」


「「仕事しろよ!」」


ベームとラシュの二人分の突っ込みが入ったのだった。


設定40 

ロイディス=ベーム

 ベーム商会の会長。体格も声もでかく,白い髭をはやし、頑固そうな眉と口をした初老の男。意外と芸術にも理解がある。嫁シェラリスと息子3人、娘1人、孫3人、など家族も多い。長男のラックスとその嫁イズリーとその娘ハルピュイアスと息子レイモンドが王都で商売をしている。次男イドニスとその嫁ニアと息子ニクスは別の町に支店を構えている。三男バイアスは仕入れに勤しみ,娘シュリーは別の商人に嫁いだ。

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