39 依頼 < 王都
だいぶん日が開いてしまいましたが、楽しんで頂けると幸いです。
「・・・しかし、平和なものですねぇ。アッシュの事ですから、会場ごと、破壊してしまうのかと思いましたが。」
「ほんまや。地面がえぐれただけですんだなんや、いつもやったらありえんやん。しかも、アッシュよりラシュの魔法の威力のせいやし。」
「すごいわ~。」
ものすごい歓声の中、サイカ、シグ、リーザは,アッシュとラシュが満足そうに闘技場を歩いて戻ってくる様子を見ながら驚いていた。サイカとシグの驚き方は酷いが。
「うおおおーーー!!すごい、すごいぞ!!」
「いや、たまげた!!やるなあ、あの魔法使い。」
「さすがだな、ラシュ。魔法使いであれだけ剣が使えるのか!!」
「やっぱり、剣士がいいよな!!大剣振り回しているのがいい!!」
「魔法使いのあの壁に、攻撃、見事だ!!」
「な?!なんだと?!アッシュが一度も壊さなかっただと?!」
「アッシュが壊さないだなんて、な、何が起こるんだ?!天変地異の前触れか?!」
「よくやった、ラシュ!!アッシュが壊さないなんて快挙だ!!」
何も知らない観客はアッシュとラシュの演舞に感嘆しているが、知り合いたちは、アッシュのことを全く信用していない。酷い言いようである。
アッシュとラシュが控え室へと消えると、アナウンスが本番の師範についての話を始めた。
「あー、一仕事した後の酒はうまい!!」
ギルドに戻ったラシュは飲んでいた。隣では、アッシュが肉にかぶりついている。二人の様子を、テーブルの向こうでサイカたちがにこにこと見ていた。
「ま、今日は天変地異でも起こるんやないかって言われてるけどな。まあ、会場壊さなかったからええやん。」
「なんだ?天変地異の前触れって。」
シグの言葉にアッシュがつまみを食べながら尋ねると、ラシュが答える。
「アッシュがそれだけものを壊しやすいってことだろ。」
「・・・悪口だな!!・・・まあいいけど。」
もぐもぐと食べながら、アッシュは気にする気もないようだ。その様子に苦笑しかない。
「よう、ラシュ。今日は無事終えてくれたな、ありがとよ。」
「まったく、面倒な依頼、持ってくるなよな~。」
リーザの後ろから声をかけてきたのは、ライルだった。ラシュはため息をつきつつ、酒を飲む。
「いや、しかしお前たちの演舞には目を見張ったよ。大剣のアッシュと魔法使いのラシュが剣で闘うことで、剣舞とし、魔法に色をつけて魔法が見えるようにする。ただの魔法使いでは思ってもできないだろう。さらに防護壁をバネに使って見せたり、剣戟と共に風魔法を出したり、魔法の良さを存分に出していながら、大剣で全て薙いでみせる。おかげでどれだけ魔法がすごくても、剣技があれば、魔法にも対応できると言っているようなものだった。あれを見るだけで、魔法のすごさと共に、剣を極めた者の強さが引き立つ。魔法をうまく使って剣を生かすなんて考えるとは思わなかった。ラシュに頼んでよかったよ。ありがとうな。」
ライルの言葉に、ラシュは眉をあげた。
「剣をメインにって言ったのはあんただろ。ちゃんと要望に合うように組み手を考えただけさ。別に俺が魔法を使うのは問題なかったんだがな、アッシュが張り切りすぎて面倒だった。もう、ああいう依頼は持ってくるなよ?俺もアッシュも人前で見せるようなものじゃないんだ。」
「わかったよ。高い要求にも応えてくれる(笑)は助かるからな。無理は言わねえようにするよ。今回は助かった。」
ラシュのするどい視線に、ライルは苦笑しつつ去っていった。
「ほほう、今回はそんな話だったんですねぇ。ラシュがそれほどまでに考えていたとは、生真面目ですねぇ。適当にすればよいものを。」
くすくすとサイカが笑う。
「あ?適当だよ、適当。見栄えを求めればあんなもんになるだろ。」
「あれだけ丁寧に解説されるなんて、こっぱずかしいことないわ~。あはは。」
からからと笑うシグに、ラシュは不機嫌そうに酒をあおった。
「で、次はどうする?」
ラシュたちはギルドの依頼掲示板の前に立っていた。ちらりと見たシグがべりっと一枚をはがす。
「うち、これがいいわ。王都へ向かう商人の護衛。王都なんか最近行ってないやろ?そろそろ王都で建国祭始まるし、ついでに行って遊ぼうや。」
「いいね!建国祭、行きたい!!」
「そっか、そろそろ建国祭だっけ。俺も行きたい~!!」
「そうですね、王都へ行けば、もう少しよい品物も手に入りますしね。」
「建国祭か。だいぶ先だけど、早めに行かないと宿がとれないしな、いいぜ。行こう。」
「ほんなら、うちが受理してもらってくるわ~!」
それぞれの思惑がありつつも、満場一致で依頼を受けることにし、シグが喜々としてカウンターへと向かう。
「建国祭といえば、パレードが見たいな。」
「パレードを見るなら、大通り沿いの宿を取るか。」
リーザの嬉しそうな声に、ラシュがつぶやくと、リーザは目を瞬かせた。
「いいの?高めよ?」
「依頼料が入れば泊まれるだろ。」
「俺は屋台でいろいろなもの食べたいのと、コロシアム・・・」
「コロシアムはダメだって言ってんだろ、毎年。人前に出る破壊活動はダメだ。」
「建国祭は人が多いですが、流入してくるものも多くなりますからねぇ、資金が欲しいところですねぇ。早めに行って、いくつか依頼をこなすのはよい手か。」
それぞれに、依頼よりも、建国祭の方が目的になってきた一行だった。
設定39 建国祭
ラシュたちが住んでいる王国の建国記念日を祝う日。初代国王が周辺地域を統合し,王国の号令をした日である。が、すでに結構な時が流れているため、ただの祭りである。王族と騎士団のパレードがあったり、屋台が増えたり、王都が賑やかになる。そのほかの土地でもそれなりの祭りになっている。




