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38 演舞

楽しんでもらえると幸いです。

「冷静でいろよ、アッシュ。」


「わ、わかってる。」


アッシュとラシュは領主の演舞大会の会場に来ていた。すでにたくさんの観客が闘技場を埋め尽くしている。そして、正面には領主が開会の挨拶をしていた。闘技場には、演舞する者が並んでいた。アッシュとラシュの他に、がたいのよい男たちが数人並んでいる。


「おお?!あれはレンドバーグとテイモックじゃないか?!」


「すごいな、結構な力自慢じゃないか!!」


「パワーズの二人なら派手な闘いが見られそうだな!!」


盛り上がる観客席の中に、シグとリーザ、サイカの姿があった。


「あんまし、出場する人、いないんやなぁ。領主、人気ないんや?」


シグは闘技場の外で売られていた焼き鳥をほおばりながらつぶやいた。同じく、飲み物を飲んで、サイカが答える。


「それは違うでしょう。こういう場所で目立つと、領主に誘われて軍隊に入れられてしまう可能性が高いんです。目立ちたい男たちにはよいでしょうが、冒険者ギルドもただの荒くれ者には紹介できなかったんでしょう。そうすると、まっとうな人に誘いをかけると、これはまた軍属することを嫌がる人も多いでしょうから、あまり集まらなかったのでしょう。」


「軍属したら、定住して安定した生活が送れるやんか。うちは嫌やけど。」


「ですから、そうした人の方が多いから出場する人がいないのでしょう。ラシュも最初断ったはずですよ。ラシュが何かに仕えるのは嫌だと言っていましたからね。」


「でも、二人とも、目立つね。」


リーザの言葉に、シグはにやにやと答える。


「そうやね、何しろラシュがローブ姿やん。筋肉もりもりの戦士系の中に一人魔術師。」


「というより、周囲の視線が残念すぎますね、くすくす。」


サイカが笑う通り、二人を見つめる視線は残念すぎた。


「あ、あれは(笑)のアッシュじゃないか?!」


「ええ?!大丈夫なのか?この闘技場!!」


「あいつ、暴れて壊すんじゃないだろうな!!」


「領主様がいるんだぞ、怪我させないだろうな!?」


「でも隣にラシュがいるからまだましか?!」


「いや、ラシュでも交戦中なら難しいかもしれん!!」


「逃げるか?!」


「でも、演舞は見たいぞ!!」


「いや、パワーズがいるなら、なんとかなるかもしれん。」


「う~ん、パワーズ、がんばれ!!」


いかに、アッシュの評価が低いかが分かる周囲の会話である。


「アッシュ、安定の信用のなさやなぁ。」


けらけらと笑うシグ。サイカもくすくすと笑うだけだ。リーザはあいかわらずにこにことしている。




気合いのよいかけ声と共に、演舞が始まる。どのペアの力自慢が互いに打ち合わせていて、その打ち合う音がひどく大きく、迫力がある。大剣やハルバードをぶんぶんと振り回すその姿も頼りがいがある。片方が剣をはじいて終わるところもあれば、互いにここまでと武器を置いて終わるところもあった。その豪快さに会場が沸いていた。


数組の演舞の後に、最後に順番が回ってきたのがアッシュたちだ。この順番に冒険者ギルドのアッシュへの不安が見えてくる。せめてほかのチームの演舞が普通に終えられるようにしているのだ。


「いくぞ。」


「おう。」


控えの場所から、アッシュとラシュが中央へと歩き出す。アッシュは騎士の兜といつもの鎧を身につけ、ラシュはローブと帽子、モノクルと、いつもの姿だが、持つ武器がいつもの杖ではなく、この日ようにあつらえた装飾付きの剣だ。いつも杖かショートソードだが、アッシュの大剣を受けるのに、ショートソードでは耐久力に欠けるので、通常の剣にしたのだ。装飾付きにしたのは、単に見栄えである。


中央に向かうと、会場に礼を向け、互いに剣を向ける。胸の前で構え、騎士の礼をとると、互いに構える。静寂の後に、最初に動いたのはアッシュだ。アッシュはラシュが静かに魔法をその身にかける時間を取ってから走り出したのだ。アッシュがラシュに剣を振る。その剣戟を全て、ラシュはひらりひらりと躱してみせる。それは、大柄なアッシュと魔法使いらしいラシュの姿を見る人々にとって、驚愕の姿だった。本来、魔法使いはあまり体力や素早さに欠けると思われている。だから、ラシュの軽やかなステップに驚くのだ。


そして、アッシュが一息ついてラシュから離れると、今度はラシュから仕掛ける。それは先程のアッシュとは違いかなり早い打ち合いとなる。それまでの大きな音の迫力ではなく、しっかり見ていなければわからないようなとても速い剣戟に、観客は目を凝らす。アッシュの周りを跳ぶように駆けるラシュと、それを子蠅のように振り払っているアッシュ。そして、その剣戟を捕らえたアッシュが力を込めてラシュを宙へと吹き飛ばす。それすらも二人の予定であり、空中で、ラシュが目に見える光り輝く防御壁を展開し、その壁をバネのようにして体勢を整えると、そのままアッシュへと剣戟を飛ばす。魔法のかかったそれをアッシュは豪快に斬って捨てる。目に見える魔法の使い方に、観客がほうと感嘆のため息をもらした瞬間に、魔法が斬られた事に、さらなる驚きが加わる。


さらに、ラシュは魔法を使って剣戟を飛ばす。どんどんアッシュへと攻撃の手を緩めないが、全てアッシュが切り捨てる。おかげで、地面がぼろぼろである。が、闘技場の柱などは壊されていない。二人は徐々に距離を縮めていき、再び剣の間合いになると打ち合う。その一瞬、ラシュの剣がアッシュの兜を跳ね上げると、アッシュはラシュの剣をはじき飛ばす。


地面に落ちたのは同時。


そして、歓声が闘技場を包み込んだ。

設定38 

戦闘用の魔法を見えるようにするのは、あまり一般的ではない。なぜなら、見えない方が、攻撃に適しているからだ。だが、攻撃でない魔法の場合は目に見える方が、周囲の人が安心するため、何もなくても色をつけるなど、魔法のイメージを付け加えることはある。また、魔法を行使するときは色をイメージするほうが、より具体化しやすいという事実もある。

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