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32 凶年

楽しんでいただけると幸いです。

ラシュが星図にかかりきりになっていると、とんとんと肩を叩かれる。


「ラシュ、なぜあなたが起きているんですか?」


「へ?サイカ?なんでお前が?」


ラシュは振り返った先にサイカがいることに、困惑し、首をかしげる。


「そろそろ私の時間だと思ったのですが、アッシュは寝ているし、あなたは起きている。」


「うわっ、しまった起こすの忘れてた!!」


空を見比べて、ラシュが思わず立ち上がった。


「で、うっかり起こすのを忘れるくらい、あなたはいったい何をしていたんですか?」


サイカがラシュが書いていた星図表と本を覗きこむ。


「本来の今時期の星図と、今の星図を書き比べていたんだ。時間が移るから正確ではないが・・・。」


「星図にまで精通していたんですねぇ、ラシュ。」


「魔術師なら当然だ。で、サイカはこれを見て何か気付かないか?」


「ふふふ、今年は凶年、ということでしょうか。」


「やっぱりか?」


「ですが、凶年であることは数年前からわかっていたことです、渇水、大水、嵐、凶作、何が訪れるかは分かりませんが、僧院の星読みの間では予測済みでした。」


「そうなのか。俺は最近星なんて意識して見てなかったからな、驚いた。」


「ああ、それでいそいそと書いていたのですか?おバカですねぇ。そんなもの、国家機関が気付かないとでも思っていたのですか?だからこそ、今でも凶年だなんて思えない、普通の生活が遅れているわけです。すでに国家が手を打っているのですよ。」


「ぐっ、おまえ、そんなことも知ってたのか。」


「私は僧院という国家とつながりがありますからね。あなたはギルドにつながるぐらいで、そんなことを知る立場にありませんから、当然です。」


「あたりまえなんだが、なんかお前に言われるとすげーむかつく。」


「まあ、自分で気付いただけでもすごいと思いますけどね。」


「で、この間僧院に行った時にはその凶年の片鱗は聞けたのか?」


「いいえ、この辺りはまだ平穏のようです。天候も平年と相変わらずのようです。」


「そうなのか。」


「ふふ。何事もないのが一番よいのですがねぇ。」


「星に凶年が出ている以上、何かあるんだろうなぁ。」


「まあ、私の話を聞いて安心したでしょう?私が見張りをしますから、あなたはそろそろ寝なさい。そして起こされなかったアッシュに朝、笑われたらいいでしょう。」


「くっそー。腹がたつが、俺も眠いし、片付けたら寝るさ。」


「いえ、おもしろいので、おいていてください。私も久々に星図を読みたいです。」


「くっ、まあいい。大事に扱ってくれよ。」


ラシュは机の上をそのままにして、テントへと入っていく。それを見送ったサイカはラシュの作った星図をじっと見つめた。


「これはすごい。かなり正確な星図になっていますね。ほぼ星図大全と同じではないですか。ラシュには絶対言いませんが、これほど正確な星図は宮廷魔術師レベルです。本当に、ラシュはもったいない人ですねぇ。どうしてアッシュと一緒にいるのでしょう。まあ、アッシュの隣にラシュがいないとそれはそれでアッシュは生きていけないでしょうけど。」


サイカはくすりと笑った。


「しかし、この星図を見て凶年としか読めないのはまだ青いですね。まだこの星とこの星の動きを読んでいないのでしょうか?いや、しかし。・・・まあいいでしょう。起こってみなければ何もわかりませんからね。」


サイカはくすくすと笑いながら周囲に張った結界の外にいる魔物を倒すために、結界の外へと向かった。




「ラシュー!!なんで起こさないんだよー!!」


朝早くから、アッシュがラシュに詰め寄っていた。詰め寄られたラシュはまだ寝足りないらしく、目をこすっている。


「ん?ああ。起こし忘れた。」


「俺の順番~!!」


アッシュの大声に、みんな起きたらしく、シグがあくびをしながら現れた。


「なんやの、朝からうるさいわあ。」


「ラシュが起こしてくれなかったんだ!!」


「ええやないの。アッシュが番する代わりにしてくれたんやろ?」


「俺はしたかったんだよ!!」


「そんなら次からあんたが1人ですればええやん!」


アッシュの様子を見て、シグがじろりとアッシュに言うと、アッシュは光り輝かんばかりに目を輝かせて頷いた。


「はっ!そうだな!!そうしよう!!」


アッシュがラシュに詰め寄るが、ラシュはひどく冷たい目でアッシュを見る。


「だめに決まっているだろ。お前が1人でするのは駄目だ。」


「なんでだよー!!」


「お前、一晩してから周りの獲物狩りつくしただろうが。ついでに馬車まで壊しやがって。お前が1人で何も壊さないわけがないだろ!」


アッシュが子供のように文句を言うが、ラシュは全く受け付けない。


「まるで子供みたいですね。」


その様子を見て、リーザがぽつりとつぶやいた。


「そのとおりやで。子どものアッシュには、保護者のラシュがいないと危険やからな。リーザも気をつけとき!」


「うふふ、わかったわ。」


シグの言葉に、リーザは笑って頷いた。


設定32 僧院の星読み

僧院でもかなり高僧が務める星読みの詰所のこと。僧侶の務めとして星読みの修行自体はあるが、高位になればなるほどに、高度な先読みをすることができ、その年の予兆を占う。星読みの詰所で話ができるほど、実はサイカはかなりの高位僧侶である。僧侶、神官、魔術師はそれぞれ高位になればなるほど、星を読むことで未来を予見することができると言われている。

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