31 不寝番
楽しんでいただけると幸いです。
「今日は誰から見張りをする?」
夜になり、寝る前にラシュがみんなに尋ねた。
「じゃあ、私が。」
「ほんなら、うちとリーザが1番に見張りするわ~。」
リーザが手を挙げると、シグが身を乗り出すようにして、リーザの手をつかむ。
「そうか?じゃあ、その次に俺がしよう。」
めずらしく自分から見張りに名乗り出たシグを見て、困惑しつつも、リーザがいるからかとラシュは納得して二番目に名乗りでる。
「俺、ラシュの次~!」
「では、私が最後ですね。」
アッシュとサイカの順番まで決まると、男三人はさっさとテントの中へと入っていく。
焚火をしている前にリーザとシグは座った。
「いいチームですね。」
リーザがシグにほほ笑んだ。
「そう?うちは他の人と組んだことないからわからんわ。」
「うん。お互いのことをわかってて、言葉が出てることがわかるもの。」
「そう?お互い思うたこと、ぽんぽん言うてるだけやで?」
「ちゃんとお互いがその意図を理解してる気がするもの。」
「ふうん?まあ、ええわ。」
シグはリーザの言葉に釈然としなかったが、ぽいと薪を一本火の中にほうりこんだ。
「うちのチームにおって、優雅な詩なんかできんと思うんやけど。アッシュの化け物っぽい体力と、ラシュのナルシズムな魔法と、サイカの変態な術やで?」
「うふふ。結構英雄らしいチームじゃないですか。それぐらい何かに秀でていないと、英雄にはなれませんよ。シグさんだって、命中率100パーセントに近かったもの。」
「リーザ、よく見てん?うちらのチームぐらいなのは普通。やってることが破天荒だからそう見えるだけやで?」
「うふふ。」
シグの言葉ににこにことほほ笑みを返すリーザに、シグはどうでもよくなって空を仰いだ。
「ええ天気や。最近雨降らんからええわ~。」
「そうですね。雨だとこういう野宿は嫌ですよね。」
「雨は面倒やな。」
「そうですね。」
寝ころんで空を仰ぐシグの隣で、リーザも座ったまま、空を見上げた。
「見張り、お疲れさん。」
テントから起き出してきたラシュが伸びをしながら二人に近づく。
「ラシュさん、よく眠れましたか?」
リーザが温かいお茶をラシュに差し出す。
「ああ。ありがとう。」
ラシュはリーザから受け取ると、仰向けになっているシグを見た。
「あいつ、もしかして寝てるのか?」
「寝てるわけないやろ~。」
目をつぶったままシグが答える。
「気配を感じるにしては、だらけてんなぁ。」
「ええやん。格好やこう、ラシュが気にしなかったらええやん。」
「まあ、何もなかったならいいけどな。さあ、交代するから二人は馬車の中へ行けよ。疲れてるだろう?」
リーザの肩をポンと叩いて、ラシュは二人を促す。
「よっしゃ。寝よ、寝よ。リーザ、一緒に寝よか。」
「そうですね。では、ラシュさん。おやすみなさい。」
「おー、おやすみ~。」
二人が馬車に入ると、ラシュはゆっくりとお茶を飲んだ。
「・・・うまい。」
ラシュは空を見上げながら魔力探知の幅を広げていく。
「今夜は罠にかかりまくってるなぁ。」
ラシュは張られた結界の外へと出ると、シグの仕掛けた罠へと向かった。それぞれの罠に魔物がかかっているため、全部合わせるとかなりの数になる。そんなことを考えながらも、ラシュは1人で罠へと向かった。
一つ目の罠にたどり着くと、ホーンラビットがぐったりとしていた。シグの罠にかかり、大量の出血ですでに虫の息だったが、ラシュは無言で魔法を行使し、息の根を止めた。ラシュはさっさとかばんに放り込むと、次の罠へと歩いていく。
二つ目の罠では、ブルーラビットがまだ動いていた。たまたま罠にはまり、抜けだすことができなくなったらしい。ブルーラビットはラシュの気配を感じ、さらに暴れている。ラシュは慌てることなく、無言でブルーラビットに近づくとやはり魔法を使って息の根を止めた。はたから見ると、ラシュはブルーラビットに近寄っただけで息の根を止めたように見える。いつもならアッシュたちと息を合わせる為に、わかりやすく魔法の名前を叫ぶラシュだが、今は1人のため、ラシュは無言で魔法を使っていた。ひっそりと闇夜に紛れて魔物を殺していく。実は得意な氷の魔法で心臓を凍らせてしまっているのだ。
三つめの罠には、ブレイズドッグが暴れていた。シグの罠からは逃げられず、どんどん締め付けられ、出血が増えていく。ラシュはまた近づき、心臓が止まったのを確認してかばんへと入れた。
「ホーンラビットに、ブルーラビット、ブレイズドッグ・・・結構いたな。」
ラシュは見張りの時間の半分ほどを、魔物を狩るのに費やすと、馬車の所へと戻った。ラシュはしばらく空を見上げると、かばんの中をごそごそと探し始める。かばんの中から取り出したのは、星図表だ。星の巡りと日にちを合わせ、空を見上げる。
「なんで、今の時期にこんな星空になるんだ?」
ラシュはさらに本をかばんから取り出した。ぱらぱらとめくっては空を見上げ、めくっては見上げた。かばんから紙とペンとインクを取り出すと、空を見上げ、本をめくりせわしなく星図を書きあげていく。1枚目を書き終えると、2枚目に取りかかった。
設定31 星図表
元は漁師や羊飼いが星の動きを追っていたが、魔術師は星の動きや光に目をつけ、その動きや隕石などを調べ始めた。ある魔術師がいろいろな人から口伝や風習を集めて星図ができる。さらにそれを一年の動きを組み合わせたものが星図表である。それは、暦とつながり、その風土の季節にあった暦がつくられることになる。ラシュが用いていたのはスー爺の所にあった星図表の本の写し。幻とも呼ばれる「大星図表暦一覧」の写しであるが、中身は半分はラシュが写した。




