3 魔石トラップ 前編
お騒がせパーティ『笑う太陽』 通称(笑)
「よぉ、聞いたぜ、ラシュ。昨日もアッシュがドア壊したんだってな。」
ラシュが冒険者ギルドに入ると、依頼掲示板の前にいた剣士が振り向いて声をかけてきた。パーティ『青い閃光』のリーダー、セイフォード=ロウだ。
「げっ、もう噂になってんのか。」
セイフォードの言葉に、ラシュは苦虫をつぶしたような顔をする。
「アッシュも学習しねぇなぁ。なあ、ラシュ、明日この依頼行くんだけどよ、一緒に行かないか?」
セイフォードに依頼書を見せられ、ラシュはのぞき込む。
「ん~?別に『青い閃光』だけで十分だろ?なんでうちと?」
「ちげぇよ。(笑)じゃなくて、ラシュ、お前を誘ってんだ。」
「俺だけ?魔法使いならリンダがいるだろ?っていうかその(笑)って言い方やめろ。」
セイフォードの言い方に、ラシュがいらっとして文句を言う。
「魔術師のラシュが欲しいんだよ。いいじゃねぇか、(笑)、わかりやすくて。」
「何の魔術陣が必要なんだ?ふざけんな、馬鹿にしてるだけだろ。」
「魔術陣を解かないと、ここ、結界があって進めなかったんだよ。」
セイフォードが依頼書の地図を指差すと、ラシュはじっとみつめて答えた。
「結界なんてここ、ないはずだぞ。前に通ったしな。」
「ええ?本当かよ。昨日通ったら通れなかったぞ。」
「・・・ここが通れたらいいんだろ。ちょっと聞いてくる。」
「は?聞いてくる?」
セイフォードが尋ねるのも聞かず、ラシュが駆けだした。
ラシュがギルドを出て行くのを見送って、セイフォードの隣にいたリンダがつぶやいた。
「ラシュ、あんなに急がなくてもいいのに。いいやつよね。」
「ああ。」
ラシュは宿屋にしている田中屋食堂の階段を駆け上がり、ある部屋をどんどんと叩いた。
「おい、シグ、いるか!」
「ちょー、なんなん。乙女の部屋の前で騒がんといてや。」
部屋の中から出てきたのは、女盗賊のシグだ。
「お前に聞きたいことがある。」
「なんやの?」
真剣なラシュに対して、シグは頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「一昨日の依頼でお前トラップ仕掛けまくってただろ?全部外したか?」
「は?そんなんあたりま・・・あ、やばっ、魔術陣使った壁トラップそのままや。」
シグはトラップを片付けていく様子を思い出していくうちに、顔色が変わった。
「やっぱりかー。セイフォードが通れないって困ってたぞ。」
ラシュはため息をついた。
「え?『青い閃光』の?」
「おう。」
「あちゃー、でも、魔術陣壊せばええやん。」
「あのパーティ、魔術師いねぇから。」
「え?リンダ、魔術師やないの?」
「リンダは魔法使いだぞ。」
「そうなんや、でも、うちが置いとんの、ラシュの魔石やで?」
「あ、そうなのか?魔石なら壊せば終わりだな。・・・でもセイフォードは魔術陣を解かないと無理だって言ってたぞ?」
「えー?うち、ラシュみたいに魔術師やないんやから魔術陣組めるわけないやん。」
「とりあえず、現場に行ってみよう。」
「えー、うちも行かんとあかんの?」
「お前が片付け忘れたんだろ!」
「も-。」
ぶつぶつ言いながらも、ラシュにシグはついて行く。
「そういえば、アッシュは?」
「アッシュは・・・ギルドに置いてきた。」
シグに尋ねられて、ふと思い出し、ラシュは頭を抱えた。
「ラシュ、アッシュのことすっかり忘れとったんやな?」
「・・・何もしてないといいんだけどなぁ。」
「アッシュのことだから何かしとるやろ。」
「しまった・・・」
頭を抱えながらラシュとシグがギルドに行くと、腕相撲大会が開催されていた。
よくわからないまま、セイフォードを見つけると、ラシュたちは歩み寄る。
「すまん、セイフォード。どうもシグが罠を仕掛けたままだったらしい。」
「ええ?」
「ごめんなー。ラシュの魔石使ってそのままやったんよ。すぐ元に戻しにいくわー。」
「あ、いや、よろしく頼むよ。」
シグに謝られて、セイフォードは頬をかく。
「あれ、ラシュの魔術だったのか。」
「細工をしたのはシグだって。で、あの腕相撲大会は?」
ラシュが指差す中に、腕相撲をしているアッシュの姿があった。
「ああ、アッシュが暇してたから、『紅い鉄拳』のイーブスが腕相撲しようって声かけたんだよ。で、アッシュが勝ったもんだから、他のやつらがアッシュに挑んでるんだよ。」
「あー、あいつ、魔法使ってるけどいいのか?」
「は?アッシュ、魔法は使えないんだろ?」
ラシュの言葉に、セイフォードは驚いて尋ねる。
「あいつ、無自覚で筋力強化してんだ。」
「言わなければいいんじゃないか?」
「とりあえず、罠を片付けに行くよ。」
ラシュはてくてくと腕相撲大会の中に入っていき、アッシュを連れて帰ってきた。
「さ、セイフォード、行こう。」
「あ、おう。みんな、行くぞ!」
(笑)と『青い閃光』がギルドを出て行く。
「お?めずらしいな。(笑)と『青い閃光』が連れ立って行くなんて。」
「たぶん、魔術関係だろ。魔術師いるパーティは少ないからな。」
設定3 パーティ『青い閃光』
リーダー セイフォード=ロウ 剣士 さわやかなおにーさん
魔法使い リンダ=ステイシー 長髪のおねーさん
弓術士 イレイズ=ワイザー ひょうきんなおにーさん
格闘家 ウォントル=リーヨン がっしりとした豪快なおにーさん
神官 シンシア=イルディオ 清楚なおねーさん
槍術士 レオニール=オークス 真面目でクールなおにーさん