28 魔奏
更新が遅くなってしまいました。
楽しんでいただければ幸いです。
「そろそろ飯の支度をするか。ラシュ、作るんだったら、俺たちのも作ってくれ。」
「それ、依頼料くれるのか?」
「いいぞ。デンバーにも食わせてやってくれ。これでどうだ?」
トーマスが屋根の上にいるラシュに声をかけ、金の入った袋を投げ上げる。
ラシュが片手で受け取り中身を確認する。
「いいのか、こんなにもらって。」
「晩飯も頼むつもりだが。」
「ならもらっておく。」
ラシュの返事を聞くと、トーマスは開けた場所に馬車を止めた。
「昼飯にするぞー。」
トーマスの声に、デンバーも馬車を止め、降りてくる。
「今日はラシュの料理を食べられるぞ。」
トーマスの嬉しそうな様子に、馬車から下りたシグが、屋根からひらりと下りたラシュにつかみかかる。
「ラシュ、またただで引き受けたんか?」
「まさか。ちゃんと料金をいただいたさ。ってことで、アッシュ、薪集めて来いよ。」
「おう!」
ラシュの声にアッシュは元気よく返事をして森の中へと入っていく。
「シグ、水がどこかにないか探してくれ。」
「しゃあないなぁ。リーザ、一緒に行こうや!」
「はい。」
ラシュに言われてしぶしぶ動き出すシグはリーザをひきつれていった。
ラシュはすぐに石で竃を作ると、かばんから料理セット材料を取り出し調理し始める。その様子を、椅子に座ってトーマスとサイカは茶を飲みながら眺めている。デンバーはどうしようかと迷うが、ラシュに声をかけに行った。
「ラシュさん、俺、何か手伝えませんか?」
「あ?ああ、ならこれの皮むいてくれよ。」
「はい。」
野菜を手渡され、デンバーは皮むきを始める。手際の良さに、ラシュは目を細める。
「うまいな、デンバー。」
「まあ、トーマスさんの手伝いしますから。」
「君みたいに積極的に手伝ってくれればいいんだがなぁ。」
「他の方は手伝ってくれないのですか?」
「みんなやる気がないからな。」
「アッシュさんは?破壊神とはいえ、料理の手伝いくらい・・・」
「アッシュはな、細かいことは頼めない。壊されるだけだ。」
「野菜を壊すってどういうことですか?」
「文字どおりだ。つぶれる。」
「食べられなくなるんですね。」
「まあな。」
ラシュとデンバーはたわいもない話をしながら、材料を切っていく。
そのうちにアッシュが薪を竃に入れ火を付け、シグたちが水を持って帰ってきた。
「いっただっきまーす。」
嬉しそうに食べ始めるアッシュを見ながら、みんなが食べ始める。
「わあ、ラシュさん、料理とってもおいしいです。」
頬をほころばせてほほ笑むリーザに、ラシュも笑みを浮かべる。
「口にあってよかった。今日はデンバーも手伝ってくれたから助かった。ありがとな、デンバー。」
「いいえ、俺、ラシュさんの飯、おいしくて大好きだ!」
デンバーは口いっぱいに食べ物をつめこんで食べている。
「本当に、アッシュの破壊神がいなけりゃ、ラシュの飯と護衛の確実さで喜ばれるのになぁ。」
トーマスがため息をつく。
「これでもまだましになったほうなんだが・・・。」
ぱくぱくと食べているアッシュを見ながら、ラシュが答える。
「ああ、今のところ何も壊れていないからな。」
「アッシュさんの破壊神ぶりは商人ネットワークの中でもかなりの話題にあがりますからね。」
デンバーも会話に入ってきた。
のほほんと昼飯を食べ終わると、片付けて再び馬車へ乗る。
屋根の上で一応警戒しているが、ラシュは瞑想し、アッシュはのんびりと空を眺めている。
しばらくして、ラシュがゆっくりと瞳を開く。
それを見て、アッシュが声をかけた。
「終わったのか?」
「ああ。それにまた魔物だ。今度は結構多い。10頭と5羽というところか。」
「ふーん、どうする?」
「せっかくの群れだ。リーザにも闘ってもらうか。」
ラシュは後ろにいる馬車に手を振り、指で指示する。
すると、シグが頷く。
それを見たラシュは、御者席に声をかける。
「トーマス、また魔物だ。ビアベア10頭に、ホーンラビット5羽だ。ある程度開けたところで戦うが、いいか?」
「わかった。馬車は進めた方がいいか?」
トーマスの問いに、ラシュは頷く。
「あと少しで接触するだろうから、そのまま進んでくれ。魔物はこちらで引き受ける。サイカ、守りを頼む。」
「ええ、こちらは任せてください。まあ、私一人でも大丈夫ですしけど。楽をさせてもらいましょう。」
サイカの答えにいら立つものの、ラシュはさっさと魔力を溜め始める。
「あとどれくらいだ?」
「カウントするか?・・・10、9、8・・・1、0!!」
がさがさという音と共に、ビアベアとホーンラビットが馬車に襲いかかる。
「アクアスピア!」
水の矢がビアベアとホーンラビットに突き刺さる。
さらに追撃してくるビアベアとホーンラビットに、後方の馬車からナイフが跳んで来る。
団体で出てきたビアベアに、アッシュが馬車から飛び出して剣をふるってとどめると、綺麗な音色が響く。
リーザレインの魔奏である。
馬車から飛び降りた、ラシュ、シグ、リーザレインはアッシュを援護し始めた。
設定28
魔奏 魔力を込めながら楽器を演奏することで、周囲への付与魔法をかける。
曲によって付与魔法の効果が異なるが、全ての魔奏者が同じ曲を弾くわけではなく、人によって違いがあることが多い。
そのため、かなりその性能には差がある。
状態異常等の付与に適している。




