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20 病気の母

楽しんでいただけると幸いです。

「おにいちゃんたちがしてくれるの?!」


依頼主の家は、普通の家よりぼろかった。というか、隣は貧民街で、一歩間違えると確実にそちらへ行くだろうというボロさ加減だった。が、それでもラシュが戸を叩くと、少女が顔を出した。目を丸くして嬉しそうにする様子に、ラシュは思わず笑みがこぼれる。


「ああ。だが、まずは君のお母さんにもう少し詳しく話を聞きたい。入っても大丈夫か?」


「あのね、お母さんには内緒なの。だから・・・」


「大丈夫です。私はあなたのお母さんの病気が気にかかります。お母さんの診察をするということで、お母さんに話したらよいでしょう。」


「うん、わかった。」


少女の言葉に、サイカが言い訳をさらりと教え、少女は嬉しそうに中へと入って行った。


「サイカ、いらないことは言うなよ、アッシュも。」


「わかっていますよ。患者に不要なことは話しません。一応僧侶ですからね。」


ラシュが再度釘を刺す。


「お兄ちゃんたち、入って。」


少女に促され、四人は家の中へと入る。そこには、ベッドに横たわった女性がいた。まだ年も若いようだが、頬が痩け、体力が衰えているようだった。


「こんにちは。私は僧侶のサイカ。そのお嬢さんに頼まれましてね、少し、診察させていただいても?」


「いらっしゃいませ、レイヌーと申します。まあ、この子が、すみません。僧侶様、ありがとうございます。」


サイカが僧侶だと聞いて、母親は体を起こした。


「申し訳ありません。僧侶様に見て頂けるなんて、本当にありがとうございます。」


「いえいえ、お嬢さんがあなたを思う気持ちがひしひしと伝わってきましたから。では、・・・」


サイカが母親を看ている間、少女とラシュたちは別の部屋で待っていた。


「俺はラシュ、こっちはシグ、これはアッシュ。」


「私はレベッカです。おにいちゃんたち、来てくれてありがとう。」


「ええんよ~、依頼なんやから。よろしくな~。」


「きっと、ピュアエキュルイユを見せる!」


にこにこと挨拶するレベッカに、シグもアッシュもにこにこと返す。

と、挨拶をしていると、サイカが戻ってきた。


「ラシュ、これはまずいですよ。」


「なんだ、どうした?」


厳しい表情のサイカに、ラシュが問う。


「アシピレヒドという毒に侵されているようです。一応、毒消しを飲ませましたが、一刻を争います。ピュアエキュルイユなんて言っている場合ではありません。」


「で、その毒、どうやったら消せるんや?」


シグが真剣な顔で尋ねる。


「アシピレヒドは本来、オリジンに含まれていますが、きちんと処理すれば全く問題なく食べられるものです。が、処理がきちんとなされなかった場合、じわじわと体を侵し、殺してしまいます。レイヌーさんはアシピレヒドを口にしてからかなりの時間がたっているようで、衰弱が激しくなっています。このままではおそらく、明日、明後日の命でしょう。アシピレヒドはそのウェンベルク地方にある、ローンガイア高原に咲く、ロイエという花の蜜を煎じて飲めば、毒素を消すことができます。」


「ウェンベルクってこっから5日はかかるやん。どうやっても間に合わんやん!ロイエって売ってないん?」


サイカの言葉に、シグが叫んだ。


「通常では販売されていません。基本的に食用ではありませんし、稀少ですから。王宮御用達ぐらいにならないと。それに・・・」


サイカの言葉を遮ったのはラシュだ。


「いや、ロイエならたぶんあるぞ。」


「本当ですか!?」


ラシュの言葉にサイカが驚く。


「戦術級魔術陣を書くときに、ロイエを使うんだ。というか、ロイエはローンガイア高原ではなく、王宮で栽培されている。魔術陣に関わるものだから、王宮がほぼ独占していて流通していないというのが現実だ。」


「王宮にあっても、ここからでは3日はかかります!それでは間に合わないんですよ。」


「まあ、ちょっと待ってろ。」


ラシュはごそごそとかばんの中をあさりながら、家を出た。


「ラシュ、何するつもりや?」


ラシュが消えてから、シグがつぶやいた。


「たぶん、王宮につなぐんだろう。」


「王宮に?!ラシュ、つて、あるんか?!」


アッシュの言葉に、シグが驚く。


「まあ、俺らの師匠が元々王宮にいた人だったから、それでつないでもらうんだろう。きっと行き先は冒険者ギルドだ。」


「なるほど、それならば納得がいきます。最悪、僧院からシグに盗ってきてもらわなければならないかと思っていましたから。」


「っていうか、レベッカの願いはピュアエキュルイユやで?そんなに払えんやろ?過剰な手助けはレベッカがしんどいやん。」


アッシュの言葉に、サイカがうなづくが、シグが険しい顔をする。


「本来、捜し物ならええけど、治療薬作るんやったら、この金額じゃあたりんわ~。レベッカ、これ以上払えるんか?」


「私のお小遣い、全部あげた最初の依頼料の分だけしかない。」


「王宮から取り寄せても、支払えませんね。」


「うん、だから、いいよ。最後にお母さんにピュアエキュルイユを見せてあげたい。」


少女は母の死を覚悟して、サイカたちに頼んだ。

設定20

毒消しの魔法はなんでも効くわけではなく、毒素を薄くするためのもので、全ての毒に効きません。とくに今回の毒素はめずらしくはないものの、扱いが難しいので、僧院や神殿で診てもらえば、ゆっくりと治してもらえるはずでした。が、レベッカたちの家は貧しいので、費用がないことと、時間がたちすぎていたため、あきらめていたのでした。

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