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2 田中屋食堂

依頼を終えて帰って来ました。

パーティ「笑う太陽」の日常。

「たーだいまー。田中さんっ!飯、飯くれ~っ!!」


街にある田中食堂のドアを吹っ飛ばしながら中に入ってきたのは、剣士のアッシュだ。短い髪に銀の鎧をしっかりと着込み、大剣を背中に背負っている。


「ちょっ、アッシュさんっ!!毎回ドア、壊さないで下さいよっ!!」


店主の田中里央が涙目になりながらアッシュへと怒鳴る。成人しているはずなのに、10歳ぐらいの子どもにしか見えない田中だが、この店の店主である。


「すまない。田中さん。・・・このアホアッシュ!!お前の飯はドアを直してからだっ!!」


アッシュが壊したドアを通り、田中に頭を下げ、アッシュの首根っこをひっつかみドアへと戻っているのは、魔術師のラシュトリカ=レヴェヌ。黒い髪を長めに垂らし、右目のモノクルにかぶるようにしている。左頬には魔術師らしく紋章が彫られている。普通にしていれば二人とも好青年のはずだが、ドアを壊しながら入り、叱られている姿は、保護者と子どもにしか見えない。


「だああ、俺の飯~。」


「田中さんに迷惑をかけておいて文句言うな。まずはドアを直せっ!」


アッシュはラシュによって店の外へと連れ出されていった。


「すみませんねぇ、いつも、いつも。」


「本当に、懲りないんやから。あ、田中さん、うち、チャーハンな。」


「私は今日のおすすめを。」


二人が出て行った後にやってきたのは、白いローブを身にまとい、肩まで髪を伸ばした僧侶、サイカと、長いバンダナで髪を覆い、ポケットの覆いジャケットや短パンを身につけた身軽な女性、シグ=アクィナスだ。


「はい、チャーハンと今日のおすすめですね。」


二人がさっさとカウンターに座るのを見ながら、田中は料理を作り始める。


「おう、シグ、今日もアッシュが元気だな。」


「今日はラシュが止められなかったのか?」


他のテーブルに座っていた男達がシグに声をかけてきた。街の守備兵をしているロックとディンだ。今はたまたま休日だったらしい。


「ギルドを出たところまではよかったんやけどな。ご飯に行こうって話になったときに、運悪くラシュが女性の落とし物を拾ったんや。渡してる間にアッシュが走り出してしもうて。」


「それでそのままどーんかよ。」


「アッシュも学習しないなぁ。」


「ほんまや。ラシュはそろそろアッシュに紐でもつけるべきやで。」


「それじゃあもう、犬じゃねぇか。」


「首輪をつけておかないといけないな。」


「すでに保護者と子どもですが、とうとう、飼い主とペットですねぇ。」


「いえてらあ!」


シグとサイカ、ロック、ディンが笑っていると、田中さんが料理を完成させて出してくれた。


「はい、どうぞ。」


「いっただっきまーす。」


「いただきます。」


シグとサイカがさっさと食べ始めるのを見て、ロックが尋ねる。


「おい、ラシュたちを待たないのか?」


もぐもぐと飲み込んでから、シグが答える。


「だって、今からドア直すんやで?すぐに直るわけないやん。」


「いいんですよ。一応、今日の仕事はお互い終わりましたから。自由時間です。」


シグもサイカもあっさりと答えると食べることに集中し始めた。

二人が食べ終わる頃にようやくアッシュとラシュが店に入ってきた。


「たなかさ~ん、できました~。」


「そうじゃなくて、謝れっ!!」


ラシュに頭を叩かれながらアッシュが田中に頭を下げる。


「すみませんでした~。」


「はい、直して下さったのならいいですよ。はい、オムライスをどうぞ。」


田中は直ったドアをちらりと見ると、笑顔でオムライスを差し出した。今回のドアの意匠は気に入ったようだ。ドアのまん中にフォークとナイフの絵が彫ってある。おそらくラシュがしたのだろう。以前いかにも壊れましたというようなドアをアッシュが一人で作ったときには、包丁が飛んでいた。


「わあ、田中さん!ありがとー!」


お腹をすかせたアッシュはばくばくとものすごい勢いで食べ始める。

それを横目で見ながら、ラシュもオムライスを食べ始める。


「ラシュ、先にあがるわ。」


「おう、わかった。」


シグは食事を終えて代金を払い、奥の階段へと消えていった。

ラシュが周りをきょろきょろと見ていると、そばに座っていたディンが声をかけた。


「どうした、ラシュ。」


「ああ、サイカはどこにいったかと思ってな。」


「サイカならさっき出て行ったぞ。」


「そうか、まあいつものことだろ。」


ラシュもようやくご飯を食べ始める。


「田中さーん、おかわりー。」


「はい、どうぞ。」


すっとオムライスのおかわりがでてくるとアッシュは満面の笑みを見せる。


「さすが、田中さん!」


ぱくぱくと食べるアッシュを見て、ラシュが苦笑いをする。


「いつもありがとう、田中さん。」


「いえいえ、ラシュさんたちがひいきにしてくれるのはこちらもありがたいんですよ。」


にこにこと話してくれる田中に、ラシュも笑顔になった。

設定2 田中屋食堂

「笑う太陽」がいつも使っている宿屋兼食堂。

アッシュが入るたびにドアを壊し、ラシュに怒られながら直している。

ラシュが引き留められた場合のみ、無事。

いろいろな人が食べに来るが、アッシュのドア破壊は日常茶飯事のため、常連客にはスルーされている。というかよく絵柄の変わるドアをおもしろがられている。

ロックとディンも常連客。

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