16 噂の(笑)
ようやく護衛依頼終了です。
(笑)は仕事中も仕事外でも笑いが取れるのが売りだといい。
楽しんでもらえたら幸いです。
「で、護衛依頼でレイフェンまで来たわけだが、今日バーデン高原へ行くつもりか?」
「いえ、目的の薬草は早朝の朝露と一緒に取らなければ意味がないのです。」
「おい、今は温かいから朝露なんて無理だろ。」
「ふふ、夜に行って冷やしさえすればよいのですよ。ねえ、ラシュ。」
「おい、俺がその薬草を冷やすのかよ!そりゃおかしいだろうが!!」
「いいのですか?せっかくここまで来たのですよ?」
「お前の探求心ついでに来ただけだろうが!!」
「まあ、とりあえず、今日中に討伐依頼を済ませて、明日の早朝にたどり着くようにしたいので、ランチを取ってから移動しましょう。」
「おう。」
つっこんでいたラシュに、くすくす笑うサイカ、気にせず返事するアッシュ。それを傍観するシグ。
四人はてくてくと冒険者ギルドに向かった。
「こんにちは。護衛依頼完了の報告に来た。」
「はい、お預かりします。・・・はい、依頼完了ですね。依頼料をお渡しします。」
「ああ、ありがとう。」
ラシュはさっさと受け取り、換金カウンターへと向かう。
「こんにちは。換金、頼めるか?」
「はい、お引き取りします。」
と、ラシュが出したのが、ホルンレオパルトやグレイウルフの中に、モノケロースがいたものだから、ギルド内がざわめく。
「おい、あれ、一角獣だぞ!!」
「モノケロースだ!!」
「いったいどこで見つけたんだ?!」
「ちょっと、この騒ぎになるのわかるじゃないですか!!訳ありって先に言ってくださいよっ!!」
カウンターの人が半泣きになりながら、奥に引っ込む。と、代わりにごつい男性が現れる。
「うん?!ああ、ラシュじゃねえか。久しいなっ!」
「ああ、久しぶりだな。ビオクス。あんたがいると思って出したんだよ。」
と言いながらラシュはモノケロースを指差す。
「はっはっは。これは確かに個室対応ものの量だぜ?先にひと言言えよ、ラシュ。」
「大概本気にされないからな。」
「まあなぁ。しっかし、さすがは『笑う太陽』だな。モノケロースを引き当てたのか!運がいいのか、悪運が強いというか。」
豪快に笑い飛ばす様子を見て、周りの冒険者たちが落ち着いていく。
「ああ、あれが噂の・・・」
「(笑)ってすげえ。」
「で、いくら出す?」
笑っているビオクスに、ラシュが尋ねた。
「モノケロースか。しかも角、きれいに残ってんなぁ。どうやって倒したんだ?」
「落し穴で串刺しに。」
「ぶはっ、一角獣を落とし穴に落とすなんてよく思いついたな。っていうかよく落ちたな。」
「いっしょにアッシュも落ちたんだ。」
「ぶははっ!あいつもぶれねぇなぁ。そうか、そうか。いい値で買ってやるよ。だが、いいのか?角はいい武器が作れるぜ?」
豪快にビオクスが笑い続ける。
普通なら死んでしまいそうな出来事でも、『笑う太陽』にかかると、毎度生き残ってくるので、笑い事にしか思えなくなるというのがその所以である。ただし、笑うのは冒険者を長く続けた強者だけだが。
「ああ、毛皮と角と目は返してくれるか?骨や肉を売りたい。」
「それなら自分で処理してこいよ。」
「護衛中にそんな面倒なことするかよ。」
「お前ら、護衛依頼受けてたのか?めずらしい。今回は何を壊したんだ?え?」
ビオクスがにやにやと笑い、ラシュが不服そうに答える。
「今回は馬車の片輪だ。アッシュが地割れ起こして落としちまったんだよ。」
「今回は安く済んだな。」
「ああ。修理したら許してもらえた。」
「お前、本当に大工技術すげえなぁ。魔術師だめになったら転職できるぞ。」
笑いながら感心しているビオクスに、ラシュはそっけなく返す。
「隠居後の話だな、それは。で、他のも換金してくれよ。」
「ああ。引き受けよう。いつまでいる?」
「しばらくは飯食ってる。」
「なら、後で声をかけに行く。」
「わかった。」
ラシュはビオクスとの交渉を終え、さっさとテーブルで食事をしている三人のところへ戻ってくる。
「あ、ラシュおかえりー。」
一番に声をかけてきたのはシグだ。サイカはちらりと見てそのまま食べている。アッシュは口いっぱいにほおばったまましゃべろうとする。
「もがもが~。」
「口に入れてるときにしゃべんな。」
ラシュに怒られ、アッシュが頬を膨らませて必死に咀嚼する。
「お帰り、ラシュ!これ、うまいぞ!!あ、でもラシュの飯もうまい!!」
「ああ、ありがとな。あ、これもう一つ頼む。」
アッシュの賛辞にも、ラシュはさらりと礼をいうと、通りかかったウェイターに注文をする。
「で、モノケロースはいくらやった?」
「いい値で買ってくれるとさ。毛皮と目と角は返してもらうようにした。処理も頼んだからしばらく待ちだな。買い物とかするなら行ってこいよ。俺はとくに必要なものはない。」
「ん~、じゃあうちは補充してくるわ。」
さっさと食べ終わったシグは、ひらりと冒険者ギルドを出て行った。
「私もここの僧院に顔を出してきます。」
食べ終わったサイカが立ち上がってラシュに声をかける。
「げ、僧院行くのか?」
以前、アッシュが僧院の物を壊して大変なことになったのを思い出して、ラシュが眉をひそめる。
「ええ。あの薬草の管理がされているかもしれないので、確認してきます。」
「ああ、それなら。密漁なんかにされるのは困るからな。」
「ええ、私も僧院に目をつけられるのは嫌ですからね。」
にこにこと冒険者ギルドを去っていくサイカを見送って、ラシュはちょうど届いたランチを食べ始めた。
設定16
ビオクス=オルガー レイフェンの街の冒険者ギルドのギルドマスター。
英雄世代で冒険者をしていたが、怪我で引退。
無茶をする(笑)はおもしろいガキども扱い。
(笑)はギルドマスター同士でも噂になるパーティ。
大概笑い飛ばされる。そして、職員泣かしである。




