15 やっぱり壊した
『笑う太陽』が護衛依頼者に厭われる理由はこれです。
アッシュ=破壊神
ラシュ=修理屋
楽しんで頂ければ幸いです。
「よし、これで終わりやな。」
と思いきや、もう一体立ち上がり、ドドドと前を見ずに走り出した。逃げているようだが、前をみていないようだ。その先には馬車がある。
「・・・ん?サイカっ!そっちに行ったぞ!!」
ラシュの声に、サイカが手をあげる。
「明王の護り!」
ホルンレオパルトは馬車の前で、サイカの防御魔法に阻まれ、倒れたところに、後ろから追いついたアッシュが一刀両断する。それを見てラシュが叫ぶ。
「あっ!馬鹿っ!!」
が、アッシュが力を入れすぎたせいで、地面が割れる。
と、その地割れに馬車が巻き込まれ、車輪の一つが穴に落ちる。
「うわあっ!」
「きゃああっ!」
「わわっ!」
馬車の三人が突然の衝撃に叫ぶ。
「大丈夫かっ!!」
ラシュが馬で馬車の傍へ駆け寄り、馬車の中を見る。
「うう、驚いた。」
ひっくり返っているミーシャが涙目でラシュを見る。
「一体何があったんだ?」
ジャクソンが体を起こしながらラシュに尋ねる。
「魔物は?」
外の様子が知りたいが、頭を打ったらしいザックの問いに、ラシュが答える。
「魔物は全部倒したんだが、アッシュが起こした地割れに馬車が巻き込まれたんだ。怪我はないか?・・・頭を打っているのか、サイカ!」
馬車の外で地割れを見ていたサイカをラシュが呼び、馬車から出てきた三人をサイカが診る。
倒したホルンレオパルトたちはアッシュがかばんを使ってさっさとしまい込んでしまい、ラシュに返しに来た。シグも罠やラシュが投げた魔石を馬に乗って拾い集めていた。ラシュはサイカと共に三人の様子を診ている。
「心配はないようですね。冷やしておきましょう。ラシュ。」
「ん?おう。」
ラシュがかばんから氷の魔石を取り出してサイカに渡す。
「これを当てておいて下さい。・・・ラシュ、この馬車の車輪、壊れていますよ。」
ラシュがサイカの視線の先を追うと、確かに落ちた車輪の一部が折れている。
「くっそ、こうならないためにアッシュを外で走らせていたのに・・・。」
「ラシュ、頼みましたよ。」
「サイカは三人を頼むぜ。アッシュ、あの馬車をとりあえず持ち上げるぞ。」
「おう。」
「フライ。」
ラシュが浮遊魔法を使い、軽くしたところで、アッシュが軽々と安全なところへ動かす。
「さてと。アッシュ、お前なあ、最後の最後で壊すなよな!」
「ごめん、ラシュ。」
「ごめんですんだら、金に困らないんだよ。で、とりあえず、木がいるぞ。あの辺の木、取ってこい!」
「わかった!!」
アッシュが木を取りに行っている間に、ラシュはかばんからいろいろな道具を取り出し始めた。
「ラシュさんのかばん、本当に便利ですね。」
「道具が無くても、ラシュは大概の物を作ることができますよ。あの相棒がいるかぎり、ラシュは技能がどんどん高くなっていくんですよ。」
ミーシャの言葉に、サイカがくすくすと笑った。
ラシュが道具を並べ終えた頃、アッシュが1本の木を切って担いで持ってきた。
「なかなかいい木を見つけてきたな。」
「うん。最近、いいなっていう木がわかるようになってきた気がするんだ!」
「そりゃいいが、せめて壊す数を減らせよ。」
「おう。ごめん。」
ラシュに褒められ、怒られたアッシュはしゅんとしつつも、ラシュの作業の手伝いをする。こまかい作業はラシュが行い、アッシュが木を抑えたりして二人でうまく作っていく。
「へえ、息があっているねぇ。」
「毎度壊しては直していますからね、息もあってくるってことでしょう。」
「そんなに壊すんですか?」
「アッシュはなかなか力加減ができないんですよ。まったく、周りからしたらはた迷惑なんですよね。」
サイカの物言いが耳に入ったアッシュが、顔を上げて抗議する。
「ごめんって言ってるじゃないか、サイカ。」
「こらアッシュ、よそ見するな!ずれるだろ!」
「わっ、わかった!!」
ラシュに怒られて作業に戻るアッシュを見て、ミーシャたちもくすくすと笑った。
どうにかこうにか車輪を直すと、一行はようやく目的の街のレイフェンの街についた。
「いや、ここまでどうもありがとう。」
「こちらこそ、馬車を壊してすみませんでした。」
「いやいや、ちゃんと直してくれたのだから、かまわないさ。おいしい料理もいただいたからねぇ。」
「では、ギルドへ報告をしますので、これで。」
「ああ、これをよろしく。」
ギルドへの仕事終了届けに印をつけて、ザックがラシュへ渡す。
「では、また。」
「ええ、また。」
街の入り口で別れたアッシュたちは、さっさと街のギルドへと向かう。
設定15
『笑う太陽』にあまりいい噂がないのはこの「アッシュ=破壊神」のせい。
ラシュが度々修繕スキルを上げられるほどに、直しているが、直せないものもあるので、商人たち護衛対象からは恐怖の対象であり、怒りの対象である。
ラシュのおいしい料理の話もなきにしもあらずだが、あまりにも壊す頻度が高いので、忌み嫌われている。
逆に討伐依頼では期待以上の成果を出す。




