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第九十五話

「さて、話はこれぐらいにして、そろそろ模擬戦の続きにしようか?」


「……くっ!」


 ローレンが再びダートを投げようとする気配を感じたアルハレムはとっさに駆け出した。


(この距離だと何もできないままローレン皇子に狙い撃ちにされる! 距離をつめて反撃をしないと……!)


 身を低くして交差させた両腕で体を守りながら向かってくるアルハレムを見て、ローレンは笑みを浮かべる。


「そう。それでいい。……しっ!」


 気合いの声と共にローレンが両手にあった数本のダートを一度に放ち、その全てがアルハレムの腕や肩や腰に当たる。


 体の急所は防御しているが、ダートが当たった箇所からはまるで鉄球を勢いよく投げつけられたような衝撃が走る。


(痛……! それに重い! あのダートは確か木製だったはずなのに……。木製のダートでこの威力だったらマトモな射撃武器だとどうなるんだ?)


 アルハレムとローレンとの距離はそれほど離れておらず、全力で駆ければほんの数秒でなくなる距離だ。しかしその「ほんの数秒」が今のアルハレムには非常に長い時間に感じられた。


「……! これで!」


 攻撃に耐えながらローレンのすぐ近くにたどり着いたアルハレムはロッドを勢いよく振るい、ロッドは吸い込まれるようにローレンの右の脇腹に向かっていくのだが……、


「甘いよ」


 パシッ。


 ローレンはアルハレムのロッドをまるで小枝を止めるかのように片手で受け止めた。


「なっ!?」


「中々いい攻撃だったけど残念だったね。少し力が足りなかったみたいだ。さっき言ったよね? 僕はこれでもそれなりに場数を踏んでいるって。実は僕、『二十回クラス』なんだよね」


「二十回クラス!? ローレン皇子が!?」


 アルハレムがローレンの言葉に目を見開いて驚く。今の言葉が本当ならば今の彼らには子供と大人ほどの力の差があることになる。


「そう。そして二十回クラスになるとこうゆうこともできるように……なる!」


「え? ……うわっ!?」


 ローレンは驚くアルハレムの腕をつかむと、腕の力だけでアルハレムの体を空高くにほうりなげた。それは普通の人間ではまずできない芸当だが、二十回以上ステータスを強化した二十回クラスの力がそれを可能にした。


「これはご褒美だ。特別に見せてあげるよ」


 空を舞うアルハレムに向けてローレンが左腕を差し出すと、彼の左腕に巻き付いていた黒い帯みたいなものが独りでに動きだし弓のような形をとった。


「これが君が手に入れる目前まで来ている『力』だ。……しっ!」


 そう言うとローレンは左腕の帯の弓にダートを矢のようにつがえると、アルハレムに向けてダートを放った。


「ぐわっ!?」


「アルハレム様!」


「………!」


「我が夫!」


「アルハレム殿!」


「旦那様!? ご無事ですか?」


 空中でローレンのダートに当たったアルハレムはリングの外に落下し、リリア達五人の魔女が自分達の主の元に駆け寄った。

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