表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/266

第八十八話

「これでいいのか……?」


「なんだか変な感じ……」


 衣裳室で礼服とドレスに着替えたアルハレムとアリスンはなれない服に落ち着かず戸惑った声を出した。


 アルハレムとアリスンが着ている礼服とドレスは、王城の衣裳室に納められているものらしくデザインも仕立ても一流のもの。更には兄妹二人とも顔立ちが整っているのため、最上級の礼服を着た二人はまさに貴族の子息と令嬢……と言いたいのだが、その姿からは礼服を着なれていない感じが丸分かりで、なんとも言えない違和感があった。


 所謂「服に着られている」状態である。


 以前にも何度かドレスを着たアストライアはまだマシだが、それでもやはりどこか着なれていない感じがして、窮屈そうにため息をついた。


「やはりこういう服にはなれないな……。しかもこんな服一着を仕立てるためだけに、下手をしたら鎧装備が一揃えできる金をつぎ込むとは王都の人間の考えは理解できん」


 貴族とは到底思えない文句を言う母親の言葉にアルハレムとアリスンは苦笑いを浮かべながらも内心で同意していると、誰かが衣裳室のドアを叩いてから開いた。ドアを開いたのは、アルハレム達をこの衣裳室に連れてきたメイド達のまとめ役をしていた四十代くらいのメイドだった。


「マスタノート辺境伯様。アルハレム様。アリスン様。お連れ様方のお着替えが終わりました」


 メイドはそう言うと衣裳室に入り、彼女に連れられてきた五人の女性……ドレスに着替えたリリア達五人の魔女も衣裳室に入ってきた。


「これは……」


「ほぉ……」


「ぐぬぬ……」


 ドレスに着替えたリリア達五人の姿を見てアルハレムとアストライアが感嘆の声を漏らし、アリスンが悔しそうな声を出す。それほどまでにドレス姿の魔女達は魅力的であったのだ。


 リリアは胸元と翼と尻尾を出すために背中を大きく開いた黒のドレスで、サキュバスらしい妖艶さを演出。


 レイアは種族特性で人間の姿になっていて身に纏っているのは緑のドレス。その色はラミア時の下半身の鱗と同じ色だった。


 ルルはリリアと同じ黒だが、こちらは顔と手以外素肌をさらさないデザインのドレスで、これによりグール特有の青白い肌を強調。


 ツクモはリリアと同じくらい胸元が開いて、スカートにも切れ込みが入っていて脚が見えるデザインのドレス。スカートの切れ込みからは美しい脚線美を描く脚が覗かせる。


 ヒスイはレイアの緑のドレスより色が薄い、若草色のドレス。五人の中では彼女が一番落ち着いたデザインのドレスを着ていて、淑やかな印象を受けた。


 他種族の雄を誘惑する魔女の性というのか、リリア達はドレスを第二の皮膚と言えるくらいに完璧に着こなしていて、自分達の魅力を十二分に引き出していた。そんな彼女達の姿を見てアルハレムは、どんなに美しい令嬢でも、この五人には敵わないだろうと思った。


「アルハレム様。貴方のリリアのドレス姿、どうでしょうか?」


「………」


「我が夫。ルル、似合、う?」


「ツクモさんってば、実は今日がドレスに初挑戦なのでござるが……アルハレム殿、変なところはないでござるか?」


「あの……似合いますか?」


「うん。皆、本当によく似合っているよ」


『…………………………♪』


 感想を求めるリリア達にアルハレムが素直に感想を言うと、五人の魔女達は飛び上がらんばかりに喜んだ。


「皆さん大変美しい方ばかりで、このような最高の素材にドレスを着せることができて、私達メイド一同眼福の思いでした」


 メイドもアルハレムと同じ思いだったのか頬を僅かに赤くして言った。同性すら興奮させる魔女の魅力、恐るべしと言ったところか。


(それにしても……貴族の俺達よりも、魔女のリリア達の方が礼服やドレスが似合うってどうなんだろうな……)


 アルハレムはリリア達のドレス姿を見ながら内心でそう苦笑するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ