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第八十五話

「お待ちしておりました。マスタノート辺境伯」


 王城シャイニングゴッデスに入城したアルハレム達を出迎えたのは二人の女騎士だった。


 二人の女騎士は動きやすそうな服装の上に銀の胸当てを身に付けており、更には腰に一振りの長剣を差していて、その凜とした雰囲気は城塞都市マスタロードで留守を守っているアイリーンに似ていた。


「長旅お疲れ様でした。……それでそちらにいる方が例のご子息様ですか?」


 女騎士の言葉にアストライアは頷き答える。


「そうだ。私の息子のアルハレムだ。コイツを連れてきた理由はすでに伝わっているな?」


「はい。そしてその事で国王陛下がマスタノート辺境伯とお話をしたいと。ですのでどうか私についてきてもらえないでしょうか? アルハレム様達は彼女が部屋まで案内します」


 二人の女騎士のうち右側に立つ女騎士が言うと、左側に立つ女騎士がアルハレム達に向かってお辞儀をする。


「国王陛下が? 分かった、すぐに向かおう。……? そういえばお前達は……。フッ、そういうことか」


 アストライアは二人の女騎士の顔を見て何かを思い出すと面白そうに笑った。


「アルハレム、そしてお前達。私は今から国王陛下の元に向かうので、お前達は彼女について行け」


「分かったよ、母さん」


「こちらです」


 アルハレムは母親に返事をすると、仲間達と一緒に女騎士の後ろについて城の中に入っていった。


 ☆★☆★


 王城シャイニングゴッデスの中の通路は、外壁と同じく壁も床も汚れ一つない純白で、窓から射し込む光を反射して輝いて見えた。


 流石は女神イアスが百の試練を達成した偉大な王の為に建てた巨城といったところか。通路の壁や床、天井にはさりげなく精巧な装飾が施されていて、王が住まう城であると同時に神殿のような雰囲気が感じられた。


「通路も広いのね。これじゃあ掃除とかも大変そう」


「いえ、この城の掃除は最低限で済みますので、想像されているほど大変ではないと聞いています」


 通路を見回しながら呟いたアリスンの言葉に先頭を行く女騎士が振り向きもせずに答える。


「この城には様々な不思議な力が宿っていて、その中には自動で壁や床、天井の塵や汚れを清める効果があるらしく、掃除は家具などの上にあるホコリを払う程度でいいそうです。……まあ、それだけでもこの広さなので大変のようですが」


「へぇ、そんな不思議な力があるんですね」


 アルハレムが驚いたように言うと女騎士は目的の部屋に向かいながら話す。


「はい。そしてこのシャイニングゴッデスには他にも多くの不思議な力があると聞いています。城に傷がつけば時間をかけて自動で修復する力とか、中庭で植物の種を植えたら一日で実を実らせる力とか。これらの力を利用すれば、戦争が起こって敵軍に王都まで攻め込まれても、三年は籠城できると言われています」


「……もう何でもアリですね」


 そこまで言われてアルハレムはひきつった笑みを浮かべて言葉を漏らし、女騎士もその意見には同感なのか頷いてみせた。


「私もそう思います。……さあ、つきましたよ」


 話している間に目的の部屋につくと女騎士はドアを開いて見せた。


『………』


「……え?」


 部屋の中には先客がおり、武器を携えた軽装の女性が数人、アルハレム達を待っていた。そして女性達の中心には身なりの良い男性が一人、椅子に座っていて、アルハレムの姿を見ると男性は椅子から立ち上がり笑みを浮かべながら挨拶をしてきた。


「やあ。やっと来たんだね。待っていたよ。僕はローレン。ローレン・ペルシド・ギルシュ。このギルシュの第三皇子で『勇者』をやっている。……よろしくね『後輩』クン?」

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