第八十四話
王都に入ってからしばらく馬車の中で揺らされているとアルハレム達の一行は、王都ウルフポリスの中央にある王城シャイニングゴッデスについた。
王城シャイニングゴッデスの外壁は、全て汚れ一つない純白で昼は太陽の、夜は月と星の光を反射して輝いて見えることから「シャイニング」という名前がついたそうだ。
そして城を見る人の目を引き付けるのは外観の美しさだけでなく、その城の巨大さも人の目を引き付ける大きな要因でもある。ちょっとした街並の広さがあり、五つの階があるその城はもはや白く輝く小さな山のようだった。
馬車から降りたアルハレム達のほとんどは王城シャイニングゴッデスを驚きの目で見上げた。驚いていないのは以前にも来たことがあるアストライアとツクモだけで、二人は苦笑を浮かべてアルハレム達を見ていた。
「これが王城シャイニングゴッデス……」
「話には聞いていたけど、本当に大きくて綺麗……」
「ここまで立派なお城は見たことありませんね」
「………!」
「スゴ、い、お、城……。ここ、に、王様、住んで、る?」
「こんな大きなお城を建てるだなんて人間さん達って凄いですね」
「それは違うでござるよ。この城は人間の手で建てられたものではござらぬ」
アルハレム、アリスン、リリア、レイア、ルル、ヒスイの順番で皆が王城シャイニングゴッデスを見た感想を言うとツクモがヒスイの言葉を訂正した。
「え? ツクモさん、それはどういうことですか?」
「この王城シャイニングゴッデスは今から百五十年程昔、このギルシュを建国した初代国王が女神の力を借りて建てたものにござる」
猫又の魔女は霊亀の魔女に王城シャイニングゴッデスが一体どの様に建てられたのかを説明する。
「ギルシュの初代国王はクエストブックに選ばれた冒険者だったでござる。
初代国王は長きにわたる試練の旅の末にクエストブックに記された百のクエストを達成すると、褒美を与えに降臨した女神イアスに王が住まうに相応しい城を故郷の地に建てて欲しいと願い、願いを聞き届けた女神イアスは王が住む城……つまりこのシャイニングゴッデスをたった一晩で建てたそうでござる。
シャイニングゴッデスのゴッデスとは城を建てた女神イアスのことを指しているのでござるよ」
そこまでツクモが説明するとアルハレムが頷いて口を開く。
「そして初代国王はシャイニングゴッデスを拠点としてギルシュの建国を宣言すると着実に国土を増やしていき、今では中央大陸の南半分を支配する大国にまで成長したんだ。そんなこともあってギルシュの王族達は、優秀な冒険者を見つけては自分達に忠誠を誓わせ、彼らにギルシュにとって利益になる願いを叶えさせることを考えた。それが『勇者』ってわけだ」
「この国の初代国王が冒険者で、この国から『勇者』という言葉が生まれた。……つまりギルシュの初代国王は世界で最初の勇者ってことですか?」
「まあ、そういうことになるな」
ヒスイの言葉にアルハレムは一つ頷いて答えるのだった。




