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第七十九話

『好色皇子でハーレム勇者……!?』


 ギルシュの勇者、ローレン皇子の二つ名をアルハレムが言うと馬車の中の魔女達五人が戦慄の表情を浮かべる。


「相手が人間とはいえ、まさかアルハレム様以外で『戦えるハーレム』を築き上げる猛者がいるだなんて……!」


「………!」


「世界、は、広、い」


「これでアルハレム殿が勇者になれば間違いなくアルハレム殿も『ハーレム勇者』と呼ばれるでござろうから、どちらが真のハーレム勇者に相応しいかそのローレン皇子とライバル関係になるでござるな」


「きっと旦那様のように素敵な方なんでしょうね」


「いや、ちょっと待ってくれお前ら。何で俺はまだ一度も会っていない皇子とライバル関係にならないといけないんだ?」


 口々に言うリリア、レイア、ルル、ツクモ、ヒスイの五人をアルハレムが止めようとするが、彼女達は聞いておらず更なるローレン皇子の情報を己の主に求めた。


「それでアルハレム様? ローレン皇子とはどんな方なのですか?」


「……さっきも言ったように一度も会ったことがないから話でしか知らないが、歳は俺と同じくらいらしい」


『…………………………!?』


 アルハレムの言葉に再び五人の魔女達が戦慄の表情を浮かべるが、今度は無視して話を続ける。


「何でも子供の頃から変わり者だったらしくて、よく城を抜け出しては城下の街で遊び回って、更にはスラム街から親がいない孤児の女の子を見つけては城に連れ帰っていたそうだ」


 当然、そんなローレン皇子の行動を城の人達がよく思うはずがなく、口が悪い貴族達はこの頃から皇子のことを「好色皇子」と呼んでいたと聞く。


「だけど時間が経ってローレン皇子が保護した女の子達の数人が戦乙女の力に目覚めると周囲の視線は一変。十人くらいの戦乙女の従者を持って、騎士団にも匹敵する戦力を手に入れた皇子を貴族達は『変わり者』から『先見の明を持つ優秀な皇子』と手のひらを返したかのように誉めちぎったんだ」


「随分、と、都合、の、いい、人達」


「まあ、貴族にはそんな人間が多いでござるから、今更言っても仕方ないでござるよ」


 ルルが呆れたような顔で呟くと、ツクモがそれに首をすくめて言う。アルハレムはそんな二人の会話に内心で同意見のようで、苦笑をすると話を続ける。


「そしてローレン皇子が冒険者となったのは今から二年前。ある日突然皇子がいなくなって王都は大騒ぎになったらしくて、その数日後にボロボロの姿になって帰ってきた彼の手にはクエストブックが握られていたんだ」


 国の第三皇子が冒険者となったことを知った王宮は、すぐにローレン皇子をギルシュの勇者に任命すると、それと同時に彼に付き従う戦乙女達を専属の騎士団として認めたのだった。


「こうしてローレン皇子は、クエストブックのクエストをこなしながら自国だけでなく他国でも活躍して『ハーレム勇者』なんて呼ばれながらも、人気があるんだ」


「……なるほど。大体は分かりました。戦乙女のハーレムを築き上げ、自国だけでなく他国でも人気のある勇者。まさにアルハレム様のライバルに相応しい方です! 相手にとって不足ナシです!」


「なんでだよ」


 馬車の中で叫ぶリリアにアルハレムは思わず突っ込みを入れる。


「どうしてお前達は俺とローレン皇子をライバル関係にしたがるんだよ。……ほら、街も見えてきたしこの話はここまでだ」


 馬車の窓から今日泊まる予定の街が見えてきたのでアルハレムは話の終わりを切り出すと、リリアが口を開いた。


「分かりました。……では最後にアルハレム様に聞きたいことがあるのですが」


「聞きたいこと? 何だ?」


「はい♪ 今もこうして馬車の振動で揺れている私達の乳房なのですが、アルハレムはどれが一番魅力的だと思いました?」


「いっ!?」


 リリアの言葉にアルハレムは驚いた顔となって硬直する。どうやら魔女達は揺れる乳房を見られていたことにずっと前から気付いていたようだ。


『…………………………』


「え、え~と、それはだな……」


 五人の魔女達の期待するような瞳で見られたアルハレムは、どう答えたらいいか分からず早く馬車が街に到着することを祈るのだった。

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