第六十七話
「……これで終わりか?」
「……う、ん。多分、そう」
「そうか……。やっとか……」
ルルが神殿の扉を開ける方法を調べてから数時間後。アイリーンが一本の木の前で疲れきったようなうんざりとした表情で聞くと、同じく疲れた顔をしたグールの魔女が答える。
『………』
アイリーンとルルの後ろには、アルハレムを初めとした仲間達全員がいたのだが、彼らもまた二人と同じように疲れた顔をしていた。
ルルが調べた霊亀が囚われている神殿の扉を開ける方法。それは扉を封印している十本の木を決められた順番に切り落とすというものであったが、実際に実行してみるとこれが非常に大変だった。
扉からルルが読み取った記憶を頼りに封印の木がある場所に向かっても、そこには同じような木が何本も生えていてどれが封印の木なのか分からず、結局それらしい木を何十本も全て切り落とすことになり、魔物と戦っていた時以上の時間と労力を使用したのである。
「では早速切り落とすとしよう。……はぁ!」
輝力で身体能力を強化したアイリーンが手に持った双剣で目の前の木を一撃で切り落とす。すると……、
パキィン!
神殿の方から何かが割れたような音が聞こえてきて、それを聞いたアイリーンはこれで神殿の封印が解かれたことを確信したのだった。
「やれやれ……ようやく封印が解けたか。それではこの地に百年以上も囚われている魔女を迎えに行くか」
☆★☆★
「……ようやく。ようやく、猫又の一族の悲願が達成できるでござるね。そう考えるとツクモさんも少し緊張するでござるな」
封印が解かれた神殿の扉の前でツクモが弱冠緊張した様子で呟く。
神殿の扉を開いて最初に霊亀と顔を会わせるのは、長年霊亀を救出するために尽力してきた猫又のツクモ達であるべきとアイリーンが主張し、皆の代表としてツクモが神殿の扉を押すと扉はゆっくりと開いていった。
神殿の中は窓の一つもなく日の光も射し込まない巨大な広間であったが暗くはなかった。何故ならば広間の中央には明かりの代わりとなるものがあって、それが周囲を照らしていたからだ。
広間の中央にある明かりの代わりとなっていたもの。それは静かな光を放つ一本の木で、木の幹には一人の女性が一糸纏わぬ姿で張り付けられていた。
外見から見た女性の年齢は二十代後半から三十代くらいだろうか。緑色の髪を腰まで伸ばしていて、どこか儚げな感じのする美貌の持ち主だった。
女性の体で一番最初に目がいくのは胸に実ったリリアを上回る豊かな乳房だろう。だがよく見るとその乳房の後ろ側、背中の辺りから鱗らしきものが僅かに見えて、彼女がただの人間ではないことを現していた。
「……霊亀。やっと、会えたでござる……!」
この神殿の中にいた以上、疑う余地はなかった。ツクモは木に張り付けられている女性、霊亀を見て声を漏らした。
百年以上にもわたる猫又の一族の悲願が叶ったせいかツクモの声は震えており、彼女の後ろに立つ二人の猫又、タマとミケも涙ぐんで霊亀を見ていた。
文章が短くなってすみませんでした。
「霊亀」のイラストなど探して見たんですけどあまり見つからず、最終的にほとんど人間と同じ姿の魔女になりました。
リクエストしてくれた龍刀さん、期待していたのと違っていたらすみません。
魔女のリクエストまっています。




