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第六十一話

「き、木が動いている……!」


 そう言ったのは一体誰なのか。無数の大樹が地面を移動してこちらに向かってくるという信じられない光景に、その場にいる全員が声を失った。


「……そ、総員退避!」


 アイリーンが皆に指示を出すがすでに遅い。地面を滑るように移動する大樹はアルハレム達に突撃すると彼らを弾き飛ばした。


「ぐっ!?」


 大樹に弾き飛ばされたアルハレムは地面に転がり、その間にも大樹が動く音が聞こえたが、それもすぐに聞こえなくなった。


「うう……。一体何が……?」


 アルハレムが起き上がって周囲を見回すと、すでに大樹は動きを止めて再び壁のように並び立っており、地面には兵士達が倒れていた。


「アイタタ……。アル、無事でござるか?」


「あ、ツクモさん。ええ、俺は平気……あれ?」


 頭を押さえながら立ち上がったツクモに答えたアルハレムだったが、違和感を覚えると再び周囲を見回す。


「む? どうしたでござるか? アル?」


「……………姉さん達がいない。リリア達も」


「にゃんと!?」


 見れば今まで自分のすぐ側にいたアイリーン、アルテア、アリスン、リリア、レイア、ルルの六人の姿がどこにも見えなかった。


「まさか、今の大樹の移動に巻き込まれてはぐれたでござるか?」


「……くっ! 皆、急いで自分の周りを確認しろ! はぐれた仲間がいないか点呼をとれ!」


 アルハレムが兵士達に指示を出す。兵士達も先程の彼の実力を見ていたため、すぐに指示通りに点呼をとる。それによってはぐれたのは、アルハレムの家族と仲間の魔女達六人だけだと分かった。


「アイリーンさん達は一体何処に……? それにさっきの大樹の移動は何なんだ? ツクモさん、何か分かりませんか?」


 ライブの質問にツクモは顎に手を当てて考えると口を開いた。


「……多分でござるが、これもダンジョンの防衛機能によるものだと思うでござる。このダンジョンには核にされた霊亀の意志の他に、エルフ族が設定した防衛の意志が宿っていることは話したでござるな?

 以前来た時はツクモさんの他にタマとミケだけでござったが、今回は三十名ほどの兵士達に魔女が六人、戦乙女が三人、そして今や戦乙女と同じ戦闘力を持つアル……。戦力は比較にならんほどに高いでござる。

 ダンジョンの防衛機能はこの戦力の高さに危険を感じて過剰な防衛行動をとり、あの地面を移動した大樹は戦力を分断するためでござろう」


「それじゃあ姉さん達は……」


「うむ。アイリーン達はこの向こうにいるはずでござる」


 ツクモはアルハレムに頷いて答えると、壁のように生え並ぶ大樹の列に目を向ける。しかし大樹と大樹の間には、背の高い植物も無数に生えていて、向こう側に行くのはおろか様子を見ることもできなかった。


「それでツクモさん? これからどうします?」


「う~む。ツクモさんとしては先に進みたいのでござるが……戻るか進むかはアルに決めて欲しいでござる」


「え? 俺がですか?」


 ツクモの言葉にアルハレムが自分を指差すとライブが頷く。


「それはそうだろう。アイリーンさん達がいない以上、この部隊の指揮を執るのはアルだけだろ?」


 ライブの言う通り兵士達はアルハレムの指示を待っており、兵士達の視線を受けたアルハレムは少し考えてから自分の決定を口にする。


「……俺はこのまま先に進もうと思う。幸いダンジョンはさっきと同じ一本道のままだし、姉さん達もきっと先を目指しているはずだ」


 アルハレムが前を見るとダンジョンは最初と同じ一本道で、この先に霊亀が囚われているエルフ族の廃墟があるはず。目的地が同じであるならば先に進めばはぐれたアイリーン達六人と合流できるという考えにツクモも同意する。


「そうでござるな。アイリーンならば先に進むことを選ぶでござろうし、あの六人が簡単に負けるとは考えられんでござる。となれば後はこちらの戦力でござるが……アルはリリアからもらった輝力、どれくらい残っているでござるか?」


「あっ、はい。ステータス」



【名前】 アルハレム・マスタノート

【種族】 ヒューマン

【性別】 男

【才能】 4/20

【生命】 1260/1260

【輝力】 62/0

【筋力】 29

【耐久】 30

【敏捷】 34

【器用】 32

【精神】 33

【特性】 冒険者の資質、超人的体力

【技能】 ☆身体能力強化(偽)、☆疾風鞭、☆轟風鞭、★中級剣術、★中級弓術、★中級馬術、★初級泳術、★契約の儀式、★初級鞭術

【称号】 家族に愛された貴族、冒険者(魔物使い)、サキュバスの主、ラミアの主、グールの主



 ツクモに聞かれてアルハレムは、自分のステータス画面を呼び出して見せる。


「さっきの人形との戦いで輝力を消費しましたけど、後一回か二回の戦闘なら輝力を使えます」


「なるほど。ならばその輝力、いざというときまで取っておくでござる。ここからの戦闘はツクモさん達が前に出るでござる」


 ツクモがそう言うと二人の猫又、タマとミケが前に進み出る。


 ツクモ達三人は強力な魔女であり、ツクモにいたってはアイリーンよりも才能を強化した二十回クラスの実力者だ。この三人が前に出て戦ってくれるなら、この先の道はずっと安全になるだろう。


「お願いします、ツクモさん。……よし! それじゃあ皆! 先に進むぞ!」


 アルハレムは兵士達に指示を出すとダンジョンの先を目指して進みだした。

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