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第六十話

「ふぅ、こんなところか……うわっ!?」


「お疲れ様です! アルハレム様♪」


「………♪」


「我が夫、お疲れ、様」


 土と岩の人形を倒したアルハレムが身体能力強化を解いて一息つくとリリアとレイア、ルルが抱きついてきた。その際に彼女達の豊かな乳房が押しつけられて、服ごしに柔らかな六つの感触が伝わる。


「お前達、こんなところで……って、アレ?」


 リリア達を引き離そうしたアルハレムは、アイリーン達を初めとした兵士達がいまだに驚きの表情でこちらを見ていたことに気づいた。


「アルハレム……お前、今の身体能力強化はどういうことだ? 何故お前が輝力を使える?」


 アイリーンがこの場にいる人間達を代表してアルハレムに問いただす。


「今のはリリアのお陰です。サキュバスの種族特性でリリアの輝力を俺に移して、それを使って身体能力強化を発動させたんです」


「リリアの……?」


「……♪」


 アルハレムに説明を聞いたアイリーンがリリアを見ると、女騎士の視線を受けてサキュバスは笑みを浮かべて会釈し、ツクモが何かに思い当たって納得した表情となる。


「そうか……。戦う前にアルとリリアがしたあの口づけ、あれで輝力を移していたでござるね」


「はい。そうです」


 アルハレムが答えると周囲からざわめきが生まれる。


「サキュバスの種族特性で輝力を移す。そんなことができるだなんて……」


「お兄様も私達のように輝力を使える……本当なの?」


 アルテアが純粋に驚いた表情となり、アリスンが驚きと喜びが入り交じった複雑な表情を浮かべる。


「これがアルの、魔物使いの戦い方か。正直驚きましたけど、これで頼れる戦力が一つ増えましたよね、アイリーンさん?」


「……………」


 ライブが話しかけるがアイリーンは答えず、厳しい顔でアルハレムを見ていた。


(……やっぱりアイリーンさんも気づいている。アルがどれだけのことをしたのか)


 サキュバスの種族特性を使って男でありながら戦乙女の如く輝力を使う。


 これが大きく世に知られたら、女性だけが輝力を使えることに不満を持つ男だけでなく、他国との戦争を考える好戦的な国も彼らを狙うだろう。


 戦乙女の力は確かに強大だがその数は少ない。どの国の軍隊も、兵士のほとんどが戦乙女ではない男の兵士だ。


 だがリリアが輝力を分け与えれば兵士達の全てとはいかないが、兵士達の数名を戦乙女と同等の戦力に変えることができる。


(アルもそれなりに気をつけているみたいだけど、このことはもっと徹底して秘密にしないとな。……アイリーンさんも同じ考えだろうな)


「お前達! いつまで呆けている! 予想外の出来事があったが、私達はまだダンジョンに入ったばかりだ! 早く先に進むぞ!」


 ライブがアルハレムとリリアの心配をしていると、アイリーンが大声をあげて兵士達に指示を飛ばす。確かに彼女の言うことはもっともだが、ライブにはそれが先程の友人の活躍から兵士達の意識をそらそうとしているように聞こえた。


「そうでござるな。以前来た時と比べてダンジョンの様子も変でござるし、ここはアイリーンの言う通り急いで先に……」


 そこまでツクモが言ったところで、突然地震でも起きたかのようにダンジョンの全体が激しく揺れ始めた。


「こ、これは!? ツクモさん、今度は何が起きるんですか?」


「い、いや! これはツクモさんにも分からんでござる。こんなことは今まで一度も……!」


 ツクモが首を横に振ってアルハレムに答えようとした時、ダンジョンの左右に列していた無数の大樹が地面を滑るように動き、アルハレム達に迫った。

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