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第四十三話

今回はいつもより短いです。申し訳ありません。

 猫又のツクモがアルハレム達の前に現れた日の翌日。皆を乗せた馬車はアルハレムの母親であるマスタノート辺境伯が治める城塞都市マスタロードに到着した。


 城塞都市マスタロードは、ギルシュと隣国エルージョとの国境の一歩手前に位置する言わばギルシュの入り口である。そのため都市の大通りには両国を行き来する大勢の商人達で賑わっていたが、同時に長旅から帰ってきたような土ぼこりで汚れた甲冑を身につけた大勢の兵士達の姿も見られた。


 大通りの露店で商人達がギルシュとエルージョ、それぞれの地域の特産品を並べて売り、それを都市の住人に混じって兵士達が買っていく。他の街では見られない光景だが、この城塞都市マスタロードではこれが日常の風景であった。


「何だか賑やかなのか物々しいのか分からないところですね。彼らは傭兵ですか?」


「いや、彼らはうちのマスタノート家の兵士達だ。恐らく商人達の護衛の帰りだろう」


 馬車の窓から大通りを歩く兵士達を見てリリアが疑問を漏らすとアルハレムが答える。


「護衛? 領主様の兵隊が商人達の?」


「そうだ。このマスタノート領は隣国エルージョに街道が続く交易の要だけど、同時に『魔物を生み出す森』がある危険地帯でもあるんだ」


「……」


 首をかしげるリリアに説明するアルハレムの口から「魔物を生み出す森」という単語が出るとツクモが無言で目を細める。


「森から生まれる魔物は基本的に森から出てこないが、中には森から出てきて人に危害を与えるものもいる。しかもいくら倒してもすぐに新しい魔物が森から生まれてくる。

 そしてギルシュとエルージョとの国境の東半分は、以前俺達が越えた山脈があって商人の交通には不向き。大量の商品を運ぶ商人達はマスタノート領の街道を通るしかないんだが、街道の隣には魔物を生み出す森があって商人達が襲われる危険がある。

 だからマスタノート家はエルージョに行く商人達をできるだけ集めてから同時に出発させて、兵士達にその商人達の護衛をさせているんだ」


 商人達を護衛させることを考えたのは初代マスタノート辺境伯であり、今ではこの商人達を護衛するマスタノート家のやり方はギルシュ、エルージョの両国でも、特に商人達から高い支持を受けていた。


「そういうことですか。確かに領主様の兵隊が護衛してくれるなら商人達も安心して国を移動できますね」


「………」


「なる、ほど」


 アルハレムの説明にリリア、レイア、ルルが事情を理解して頷く。


「魔物を生み出す森があることもあってマスタノート領は他の領地に比べて現れる魔物の数が多い。この地を治めるマスタノート家の人間は、商人達だけでなく領民達全てを守る力を求められる。……リリア。俺が初めて神力石を手に入れた時に言ったよな? マスタノート家には『最も強い者が当主になる』という家訓があるって」


「ああ、そういえば……」


 言われてリリアはアルハレムが自分を仲間にした時に、その様なことを言っていたことを思い出すと同時に納得した。確かにこのような環境では領主、先頭に立つ者にこそ力が必要でその様な家訓もできるだろう。


「例の実力主義の極みのような家訓でござるか。……しかしそんな『実力があれば細かいことは気にしない』、『一緒に戦ってくれるのは全て同胞』、みたいなノリのマスタノート家だからこそ、ツクモさんもいられたでござるし、アルも普通に魔女と接してくれるのでござるな」


「……そう言われるとここも中々良い所みたいですね」


「………」


「うん。ルル、も、そう、思う」


 ツクモの言葉を聞いたリリア達三人の魔女は、先程よりも友好的な視線で城塞都市マスタロードの街並みを見つめるのだった。

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