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第三十七話

「……」


「え?」


 短い沈黙の後、ルルはアルハレムに向かって頭を下げた。突然のグールの少女の行動にアルハレムは訳が分からないという表情を浮かべる。


「ルル? 何でいきなり頭を下げるんだ?」


「これは、謝罪。ルル、今、まで、貴方、見くびって、た。貴方、仲間に、頼って、ばかり、だと。でも、違った。貴方、一人、でも、強い」


「当然です。今頃アルハレム様のお力に気づいたようですね♪」


「………♪」


 アルハレムを見くびっていたことを謝罪するルルにリリアとレイアが満足げに頷く。


「だから、もう、ルル、油断、手加減、しない。全力で、貴方、倒す」


「………! ここからが本番ってわけか」


 そう言うとルルは大剣を腰だめに構え、グールの少女の姿から迫力が増したのを感じたアルハレムもまたロッドを構えた。


「……! はぁ!」


 ルルが腰だめに構えた状態から大剣を横凪ぎに振るい風の刃、疾風斬を放つ。剣筋から予測して彼女の狙いはアルハレムの腰より下……つまりは両足。


(この疾風斬は恐らく囮。これを避けて俺が体勢を崩した時に仕掛けてくる二撃目がルルの本命……!)


 相手の狙いが読めていても避けないわけにはいかない。アルハレムがその場で飛んで疾風斬を避けると、予想通りルルが刃を突き立てようと突進してくる姿が見えた。


「う、ああ、あ!」


「させるか!」


「うっ!?」


 アルハレムは自分に迫り来る刃を横からロッドで叩くことで攻撃を剃らす。そして地面に着地すると同時に魔物使いは駆け出してルルに向けてロッドを振るい、グールの少女も相手を迎撃すべく大剣を振るう。


「おおおっ!」


「が、あ、ああっ!」


 一撃。二撃。三撃。四撃。五撃。


 アルハレムのロッドとルルの大剣が五度ぶつかり合い、その度に激しい金属音と響き渡り火花が散る。


(……あのルルというグール、中々やりますね。そしてそれと戦えているアルハレム様……やっぱりとてもカッコいいです♪)


 ここまでのアルハレムとルルのやり取りを魔法陣の外から見ていたリリアは内心で呟き、二人の戦闘力を冷静に分析する。


(戦闘技術は全くの互角。アルハレム様は幼少期より剣の修行をしていたと聞きましたが、あのルルも大剣から前の持ち主だった戦乙女の技術を受け継いでいるのでしたね。

 攻撃の重さはルルの大剣の方が上ですけど、速さはアルハレム様のロッドの方が上ですから、今のところは巧く防げていますね。

 アルハレムに明らかに不利な点があるとすれば……)


 そこまで考えてリリアは、アルハレムとルルが持つ二人の武器を見る。


 リリアが感じたアルハレムに不利な点とはロッドと大剣のリーチの差。サキュバスの従者は自分の主である魔物使いが、ロッドよりずっとリーチが長い大剣を操るグールの少女に中々踏み込めずにいて焦っているように見え、そしてそれは実際にその通りであった。


(くっ! 攻めきれない!)


 アルハレムはリリアの推察通り、思うようにルルの懐に潜り込めず内心で冷や汗をかいていた。


 本来であればルルの大剣のような重量武器は、一撃の隙が大きいものなのだが、このグールの少女は全身のバネを利用してまるで独楽のように回転しながら大剣を振るっていて、隙らしい隙が見当たら見当たらなかった。


(本気を出すって言っただけあって一撃一撃が重い……! 離れたら疾風斬で一方的に攻撃されるし、近づけばこの連続攻撃。一体どうしたら……ん?)


「………。………♪」


 ルルの大剣を必死に防ぎながら打開策を考えていたアルハレムは、突然自分の目の奥が熱くなったのを感じた。視界の端でレイアが意味ありげに笑みを浮かべているのが見えたが、彼女に意識を向けてできた一瞬の隙をついてルルが大剣を降り下ろしてきた。


「余所、見、厳禁!」


「ちぃ!?」


 断頭台の刃のように降り下ろされたルルの大剣をアルハレムは歯を食いしばってロッドで防ぎ、彼の頭上で火花が散った。


「る、ルル……。俺を夫にするとか言っておきながら、随分と本気で殺しにきてるじゃないか……?」


 アルハレムが引きつった顔で言うとルルは薄く笑って答える。


「ルル、言った。油断、手加減、しない、と。そして、今度、こそ、終わら、せる」


「何? ………うわっ!?」


 ルルの大剣から疾風斬の時とは比べ物にならない程の強風が発生し、思わず吹き飛ばされそうになったアルハレムは自ら後ろに飛んで距離を取った。グールの少女の大剣を見ると、大剣の刀身が渦巻く風に包まれていた。


「『轟風剣』。この、大剣の、前の、持ち主、だった、戦乙女、が、開発、途中、だった、技。ルル、大剣、から、知った、知識、使って、この技、完成、させた」

すみません。ルルとの戦闘、もう一話だけ続きます。

次回こそ本当に決着をつけます。

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