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第二百六十四話

 アルハレム・マスタノートの朝は体の違和感から始める。


 寝返りを打とうとしても腕や足が全く動かない不自由さからアルハレムが少しずつ意識を覚醒していき、目を開くと目の前に広がるのは仲間のの魔女達と実の妹の戦乙女が自分の体に群がっているという今ではお馴染みの光景。


 アルハレムの体にしがみつく形で眠っている魔女達は全員が絶世の美女で、肌から直に感じる柔らかな肉と肌の感触は極上の一言につきた。更に言えば彼女達からは甘く、それでいてどこか野性的な香りが漂ってきていて、昨晩も何度も肌を重ねたのにもかかわらず体の奥から情欲が沸き上がりそうになる。


「よっと……」


 魔女達を起こさないよう、アルハレムはゆっくりと少しずつ四肢を動かして彼女達の拘束から逃れようとする。


「………」


「……ん」


 右腕を動かすと右手がレイアの乳房とウィンの尻に触れて二人がわずかに身じろぎする。


「あ、う……」


「うんん……」


 左足を動かすとルルと股間とシレーナの胸の谷間と擦れて二人の口元が歪む。


「にゃ、ふぅ……」


「あん」


 左腕を動かすとツクモの太ももとレムの腰を撫でてしまい二人の口から甘い声が漏れる。


「……ん、んん……」


「……っ」


 右足を動かすとヒスイの背中とアルマの腹部を刺激してしまい二人の体が震えた。


 そして何とか拘束を逃れてそのままベッドから降りようとした時、魔物使いの青年はベッドの隅で眠っている一人の女性の姿に気づく。


「………」


「アリスン……」


 ベッドの隅で眠っているのはアルハレムの実の妹である戦乙女のアリスン。戦乙女の少女はリリア達を初めとする魔女達程ではないが、充分に豊満な乳房や健康的な裸体をさらしており、その姿は魔物使いの青年に妹だと分かっていながらも「女」だと意識させるものであった。


「全く……。そんなのだと嫁の貰い手がいなくなるぞ」


 流石に実の妹の裸体をさらしたままにしておくのは抵抗があったのか、アルハレムはアリスンの上にシーツを被せると今度こそベッドから降りた。


 その時、魔物使いの青年は背後から「チッ」と舌打ちする声を聞いた気がするのだが……気にしないことにした。


「さて、俺の煙管は……」


「あの、主様……」


 昨晩九人の魔女と肌を重ねた為大量の【生命】を消費したアルハレムが猫又一族の薬草と愛用の煙管を探していると、いつの間にか側に現れたメイが話しかけてきた。彼女の手には薬草を詰めた煙管と火付け用の蝋燭を載せた盆があった。


「ありがとう、メイ。気が利くな」


「ええ、本当にそうですね」


 煙管を受け取ったアルハレムがメイに礼を言うと、彼女の後ろにいたリリアが魔物使いの青年の言葉に同意する。そしてサキュバスの魔女の手には水の入った水差しがあった。


「おはよう、リリア」


「はい。おはようございます、アルハレム様。メイさんを見習ってみて冷たい水を持ってきたのですけど、喉は渇いていますか?」


「そうだな。もらおうか」


「では失礼をして……ん」


「ん?」


 リリアはそう言うと水差しから直接水を口に含み、次にアルハレムに近づくと口移しで水を飲ませた。その際に抱き合うくらいの距離まで接近した事により、サキュバスの魔女の豊かな乳房が魔物使いの青年の胸板に押し潰され、卑猥な形に変形する。


「……ぷは♪ それにしても随分と私達に慣れてくれたみたいですね」


 口移しでアルハレムに水を飲ませ終わったリリアは、顔を赤くしながらその様子を見ていたメイに笑いかける。


「……え?」


「だって以前のメイさんでしたら今頃はこの部屋から逃げ出していたのにこれは大きな進歩です。この分でしたら近いうちにアルハレム様に『ご奉仕』できるでしょうね」


「あ……!」


 リリアの言う「ご奉仕」がアルハレムと肌を重ねる事だと気付いたメイは赤かった顔を更に赤くして俯く。


「あ、あの……それは……」


「おい。リリア、あまりメイをからかうな」


 羞恥のあまりまともに話せなくなったメイを見かねたアルハレムがリリアに言うと、サキュバスの魔女は肩をすくめる。


「からかった訳じゃなくてこれは新人のメイさんへの教育なんですけどね。……まあ、いいです。今日はいよいよお祭りの本番、メイさんが人前にデビューする日なんですか」


「……はい」


 リリアの言葉にメイは緊張した面持ちとなって頷く。


 クエストブックに二十回のクエストが記され、クエストを達成する為にアルハレムとコシュがメイの復活を祝う祭りを行うと決めてからすでに二ヶ月が経過していた。


 会場の設置を始めとする祭りの準備はコシュ達成鍛寺の僧侶によって完了しており、アルハレム達が祭りの招待状を配ったエルフや猫又一族、霊亀の一族の招待客も集まって来ていて、メイの為の祭りが始まろうとしていた。


 ☆★☆★


 アルハレムとリリアとメイの三人が話をしていた頃、地上から遥か上空に十歳くらいの少女が浮かんで地上を見下ろしていた。


 少女の名前は女神イアス。この世界イアス・ルイドを創造した唯一神である。


「うんうん♪ 今日も皆さん、元気で頑張っていきてますねー♪」


 地上を見下ろしながらイアスは上機嫌に頷く。少女の姿をした女神は地上にいる人間にモンスター、それ以外の全ての生物の姿が見えていた。


 生物を始めとするイアス・ルイドに存在する全てのものは女神イアスが創造したもの、あるいはその子孫であり、その活動を見守る事は女神イアスの義務であると同時に最大の楽しみであった。


「ふんふんふ~ん♪ ……おや?」


『……』


 いつもの様に女神イアスが世界を見守っていると、そこに突然光の玉が現れて少女の姿をした女神に呼びかけた。


「おおー、これは◼︎◼︎様。お久しぶりですー」


 突然現れた光の玉は異世界の神……正確にはその一部で、異世界の神は思念を放って女神イアスに語りかける。


『……』


「え? ◼︎◼︎様が私にお願いですか? 一体何でしょうか?」


『……』


「ええっ!? それって大変じゃないですか!」


 異世界の神が思念を受け取った女神イアスであるが、その内容はあまりにも予想外なもので思わず驚きの声をあげてしまう。


「それでお願いというのは……」


 何となく嫌な予感感じた女神イアスは、彼女にしてはとても珍しく表情を引きつらせて異世界の神に聞く。それに対して異世界の神はどこか戸惑った様な「間」を取った後、思念を放って少女の姿をした女神に「ある事」を頼んだ。


『……』


「えっ!? ええーーー!?』


 異世界の神が女神イアスに頼んだ「お願い」に少女の姿をした女神は先程よりも驚いた顔となって叫ぶのであった。

「英雄機ドランノーガ」という小説も書き始めました。

よろしければそちらも読んでみてください。

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