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第二百五十八話

 朝のリリアとの会話を終えたアルハレムは、サキュバスの魔女とインテリジェンスウェポンの魔女の他にツクモを加えて成鍛寺へと訪れた。


「いきなり押しかけてしまってすみません。コシュさん」


「はっはっはっ。気にしないでくだされ。アルハレム殿達でしたら拙僧らはいつでも歓迎しますぞ」


 成鍛寺の本堂に案内されたアルハレムが謝ると、成鍛寺の住職であるコシュはそれに朗らかに笑いながら答えた後、魔物使いの青年達が今日ここに来た理由について聞いた。


「それでアルハレム殿、本日はどの様なご用件でこちらに来られたのですでしょうか?」


「それなんですけど……コシュさん、この辺りで祭りなどの大きな行事を行う予定がある村とかはありませんか?」


「大きな行事や祭り、ですか?」


 アルハレムの言葉にコシュが首を傾げて聞くと魔物使いの青年が頷く。


「はい。ツクモさんに聞いたのですけど、この辺りの村は大きな行事を行う際にコシュさん達、成鍛寺の僧侶に女神イアス様への祈祷をお願いするのですよね。だったら今言った大きな行事の予定がある村を知っていると思うのですが?」


 アルハレムの言う通り、このシン国では祭りや工事などといった大きな行事をする時、農作の祈願や工事を成功を願ってこの世界の創造主である女神イアスへ祈願する風習がある。そしてこれも魔物使いの青年が言う通り、この周辺の村々での女神イアスへの祈祷は全て成鍛寺が行なってきていた。


「確かにその通りなのですが、何故アルハレム殿はその様な事をお聞きになるのですか?」


「……実は、メイに関することなんです」


「メイ殿がどうかされましたか?」


 コシュに聞かれたアルハレムが先日仲間にしたばかりの頭に狐耳を生やした魔女の名を口にすると、それを聞いた成鍛寺の住職が心配そうな表情を浮かべる。メイは成鍛寺の開祖の兄が原因で暴走をしてしまった挙げ句、つい先日まで封印されていた為、コシュは彼女に対して一種の責任感を懐いていたからだ。


「メイの奴、暴走をしていた時の記憶が残っているようでその事で自分を強く責めていて、心のどこかに他人との壁を作っているみたいなんですよ」


「……そうですか。それはこう言ってはなんですが仕方がないかもしれませんな」


 コシュがここにはいないメイを思い哀れむような表情でため息を吐くと、そんな成鍛寺の住職の苦渋に満ちた声にアルハレムも頷く。


「はい。俺もそんなことがあったメイに気にすることはないと軽々しくは言えませんでしたが、このままで良いとも思っていません。そんな時、俺のクエストブックに新しいクエストが現れたのです。クエストの内容は従えている魔物……リリア達と一緒に人間の村の大きな行事に参加してそれを成功させること。俺はこのクエストでメイの心の壁を少しでも取り除けないかと思っているんです」


「ほう」


 先程まで暗い表情をしていたコシュは、アルハレムの言葉を聞いてその意味を理解すると思わず瞳を輝かせた。


 成る程。確かに人間の行事に参加して多くの人間と触れ合う機会を作ればメイの心の壁を少しでも取り除けるかもしれない。


 今のコシュにはアルハレムに新しく与えられたクエストが、自分達を救うべく女神イアスが与えてくれた天啓のように感じられたのだった。

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