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第二百五十四話

「……」


 空を飛ぶ幽霊船(レムは豪華客船だと断固主張している)の外見をしているダンジョン、エターナル・ゴッデス号内部にある寝室で眠っていたアルハレムは朝日の光を浴びて目を覚ました。


 アルハレムが成鍛寺の山に封印されていた魔女と契約の儀式を行った日から今日で三日が経っていた。


 あの日、契約の儀式で魔女を自分に従わせたアルハレムは、エルフの一族に伝わる神術「心狂わす月の霊水」で作り出した術水を飲ませた。それによって魔女の暴走は治まり、魔女の力の影響で凶暴化していた魔物達も元に戻ったのだった。


 その後も少しばかりの騒ぎがあったのだが、その騒ぎも無事に終わってアルハレム達は今こうしていつも通りの朝を迎えていた。


「しかし……契約の儀式よりもいつもの生活の方が大変なのは気のせいか?」


 アルハレムは三日前の契約の儀式での戦いと普段の生活、特に昨夜の事を思い出しながら呟くと自分が寝ている寝台の上に視線を向ける。


 寝台の上ではリリアを初めとするアルハレムに従う九人の魔女達が一糸纏わぬ姿で安らかな表情で眠っていて、魔物使いの青年も何の衣服も着ていないことから昨夜も彼が魔女達から肌を重ねていたのは明白であった。


 魔女は肌を重ねた相手から大量の【生命】を吸い取ってしまう為、普通であれば魔女と肌を重ねることは死を意味する。


 三日前の契約の儀式も確かに危険な戦いではあったが、毎日のように行われる魔女達との情事と、どちらが大変で命の危険かと聞かれると後者だとアルハレムは思う。


「はぁ……」


「……お兄様」


「アリスンか」


 自分の普段の生活が危険で満ちていることを再確認してアルハレムがため息を吐くと、彼の側で下着姿のまま眠っているアリスンが寝言で兄の名を呼ぶ。


「コイツもなぁ……。一体どうしたらいいものか、はぁ……」


 アリスンはアルハレムの旅と同行してからずっと兄と寝所を同じくしている。……それは魔物使いの青年が自分の魔女達と肌を重ねている時でもだ。


 当然、兄妹で肌を重ねてなどはいないがそれでも今のような状態は問題しかなく、アルハレムはもう一度ため息を吐く。


「ため息を吐いてどうかしましたか、主様?」


 アルハレムがため息を吐くと、寝室の扉が開かれてそこから寝室に入ってきた人物が魔物使いの青年に話しかけてきた。


 寝室に入ってきたのは着物を着た金髪の女性。外見の年齢はヒスイと同じ二十代後半から三十代くらいで、胸元を見れば着物の上からも分かるくらい豊かな乳房が揺れている。


 だが以上に特徴的であったのが彼女の頭と腰。金髪の女性の頭部には人間の耳の代わりに狐のような耳が、腰には三本の狐の尻尾が生えていた。

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