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第二百四十六話

 成鍛寺の武器庫で錫杖を借りたアルハレムは、その翌日の晩に封印された魔女との契約の儀式を行うことにした。


 魔女が封印されているのは、成鍛寺の裏から出て少し離れたところにある開けた場所で、そこには石で作られた小さな社らしきものが一つあるだけであった。


 魔女が封印されている土地に訪れたのは、契約の儀式を行うアルハレムと、リリアを初めとする彼と契約をした九人の魔女に彼の妹のアリスン。そして成鍛寺からはコシュとヨウゴを含んだ手伝いとして同行した数名の僧侶、エルフ族からはリンとリョウの合わせて二十名程。


 アルハレム達からしたら魔女の封印が解かれると狂化の影響を受けるであろうリリア達、アルハレムと契約をした魔女達には別の場所に待機してほしかったのだが、彼女達は自分達の主人の側にいることを頑として譲らずここまでついて来たのだ。


「あの石の小屋に例の魔女が?」


 石で作られた小さな社を指差してアルハレムが聞くとコシュが頷いて答える。


「そうです。あの社の中に開祖の兄と契約をした魔女が封印されています。……しかしアルハレム殿、こんな急に契約の儀式に挑んで大丈夫なのですか? もっと準備を整えてからでも良かったのでは?」


「いえ、俺だったら大丈夫ですよ。魔物の凶暴化は早く解決しないといけませんし、それに封印された魔女の詳しい情報は無かったのですよね? それだったら準備だの策だの色々考えるよりも戦ってみた方がいいかもしれませんよ」


 コシュの言葉にアルハレムは手に持っている錫杖の重さを確かめながら答える。彼の言う通り、成鍛寺には開祖の兄と契約をした魔女の詳しい情報は残っていなかった。


 どうやら過去に起こったその魔女と成鍛寺、エルフの戦いはかなり激戦だったらしく、魔女の姿や戦い方を書き記しておく余力はなかったようだ。戦いが終わった後で成鍛寺の僧侶やエルフ族が記憶に残った魔女の情報を書いた書物が成鍛寺にあったが、そのどれもが「全身が霧で包まれていた」とか「何やら長く曲がりくねったもので攻撃してきた」といった要領を得ないものばかりなのである。


「それじゃあそろそろ始めましょうか。リョウさん、例のものを」


「ええ、これですね」


 リョウがアルハレムに中身の入っている水袋を手渡す。水袋の中に入っているのは心狂わす月の雫によって神術の力を宿らせた術水であった。当然術水にはアルハレムの血が混ぜてある。


「ありがとうございます、リョウさん。……では行ってきます」


「アルハレム殿、ご武運を」


 リョウに礼を言うとアルハレムはリリア達だけを連れて石の社に向かい、その背中にコシュが言葉を投げかける。


 そしてアルハレム達が石の社のすぐ目の前まで近づいたところでリリアが顔をしかめて口を開いた。


「これは……やっぱりそうでしたか……」


「リリア? 一体どうしたんだ?」


「アルハレム様、あの石の小屋の中を見てください」


 リリアが石の社の中を指差す。社の中には人間大の石像らしきものがあり、その周りの石畳には魔法陣らしき文字が描かれていた。


「……アレ? これってどこかで……」


 社の中にある石畳の魔法陣に見覚えがあったアルハレムが呟くとリリアが頷く。


「ええ、そうです。あれは私を二百年も閉じ込めていた封印の神術の魔法陣と同じものです」


「ああ、そういえば……」


 リリアの言葉にアルハレムは、彼女と初めてあった時に彼女があの魔法陣と同じものによって封印されていた事を思い出す。


「それじゃあ、この社の封印をしたのって……」


「ええ。私を封印した戦乙女かそれに縁がある者でしょうね」


 封印された時を思い出したのか辛そうな表情で頷くサキュバスの魔女を見て、彼女の主人である魔物使いの青年は次に社の中に視線を向ける。


「そうか……。それじゃあ、ここに閉じ込めてられている魔女も自由にしてやらないとな」

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