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第二百四十四話

「成る程。その壺が……」


 リョウの持つ壺が開祖の兄が使用したというエルフの神術だと告げられてリリアが目を細める。


「それ、が……全、て、の、元凶」


「……!」


 リリアに続いてルルが呟き、グールの魔女の隣ではレイアが忌ま忌ましいとばかりに目元をしかめてリョウの持つ壺を睨み付けており、今すぐにでも壺を奪い取って床に叩きつけそうな感じであった。そしてそんなラミアの魔女の怒りを感じ取ったアルハレムが彼女をいさめる。


「リリア、だから止めろって。リョウさん、俺の仲間が何度もすみませんでした」


「いえいえ、気にしてはいませんよ。コシュ殿から事情を聞いたのなら仕方がありません。……この壺の名は『心狂わす月の雫』。水と誰か一人の血を入れて月の光を一晩浴びせることで、中の水に神術の力を宿らせます。私達はその水を『術水』と呼んでおり、術水を飲んだ者は数日間の間、壺に血を入れた者に服従するようになるのです」


「……何だかどこかで聞いたような効果ですね?」


 謝罪をするアルハレムにリョウは首を横に振って答えると、次に自分の手の中にある壺、エルフの一族に伝わる神術「心狂わす月の霊水」について説明をする。すると以前、中央大陸で戦ったある一人の戦乙女の事を思い出したヒスイが呟く。


「というかそれって悪用されること前提の神術よね?」


 シレーナが心狂わす月の雫をそう評するとリョウは表情を僅かに苦くして頷いた。


「その通りです。ですから歴代のエルフの領主は、この神術が同族のエルフに使われるのを避けるためにこれを厳重に保管してきました。しかし昔、一人のエルフが盗み出して成鍛寺の開祖の兄に使わせたのです」


(『同族のエルフ』に使われるのを避けるために、か……)


 リョウの説明にアルハレムが内心で呟く。今の言葉使いには少し引っ掛かるところを感じたが魔物使いの青年はそれについて言及せず、リョウの説明の続きを聞くことに専念した。


「今言ったように術水の効果は強力ですが永遠ではありません。しかし魔物使いと契約をして魂が繋がった魔物に使用した場合、効果は永遠となるそうです」


「そうですか……。それでコシュさんの話だと、その神術を解除したら封印されている魔女の暴走が収まると聞きましたけど、解除方法はあるのですか?」


 アルハレムの質問にリョウは難しい顔をして頷く。


「はい、術水の効果を解除する方法は二つ。一つは時間の経過によって自然に効果が切れるのを待つ事。もう一つは別の人間の血を使った術水を飲ませる事。……前者の方法は効果が永遠となっているため不可能。そうなると自然に解除する方法は後者となるのですが……」


 そこでリョウが一旦言葉を切ると、コシュが引き継ぐように説明の続きを言う。


「封印されている魔女が飲んだ術水は開祖の兄の、魔物使いの力の影響を受けております。これに対抗して効果を解除するには、同じ魔物使いであるアルハレム殿が開祖の兄と同じ状況で術水を使う必要があるのです」


「……それはつまり、俺が封印されている魔女に契約の儀式をして、その後で術水を飲ませるってことですか?」


 リョウとコシュの説明に嫌な予感を覚えたアルハレムが訊ねると、二人は重々しく頷いた。


 契約の儀式を行うということは封印されている魔女ということである。リリアを初めとする九人の魔女を仲間にしているアルハレムは、魔女の強さ、それと敵対した時の恐ろしさをこの中で最もよく知っている為、思わず額に一筋の冷や汗を流した。

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