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第二百四十三話

「おっとこれは失礼しました。お見苦しいところを見せたことと、リン様の皆様に対する無礼な発言、深くお詫びいたします」


 リンに鋭い視線を向けていたリョウはこちらを見ているアルハレム達に気づくと、表情を元ののんびりしたものに戻して魔物使いの青年達に謝罪した。


「あ……。いえ、気にしないでください」


 リョウの丁寧な言葉遣いにアルハレムは内心で驚きながらそれだけ答えて、他の仲間達も僅かに驚いたような顔を見る。今の彼の対応は普通に考えたら当たり前のことなのだが、これまで魔物使いの青年達が見てきたエルフは、リンを初めとしてこちらを見下すような目で見てきて、たとえ自分達に非があってもリョウのような謝罪など絶対にしそうにない傲慢な者達ばかりだったのだ。


「それでその包みの中身とは一体何なのですか?」


「え? ああ、そうでしたね」


 アルハレムがリョウの手にある包みを指差して聞くと彼は再び包みを開いてそこから出てきたのは、表面にいくつもの文字が刻み込まれている小さな壺だった。


「へぇ……。神術を使うための道具かい。しかもエルフの秘宝と言うだけあってかなりの年季がありそうだね」


「分かるの?」


 リョウが包みから出した壺を見て興味深そうに言うウィンにシレーナが訊ねる。


「ああ……。昔、知り合いのドラゴンが似たようなお宝を持っていたのを見たことがあってね。そのお宝がかなりのレア物でね。あの時はそのドラゴンに嫉妬したものさ……」


 シレーナに答えながらウィンはまるで獲物を見つけた肉食獣のような目でリョウを、正確には彼が持つ壺を見つめており、ワイバーンのドラゴンメイドの視線に危険なものを感じたリョウは思わず一歩後ずさった。


「何と言うか……随分と個性的な方々のようですね」


「すみません。今度は俺達の方が失礼しました。ウィン、それぐらいで止めろ」


「はいはい。分かってるって」


 アルハレムが苦笑を浮かべるリョウに謝罪してからウィンに注意すると、ワイバーンのドラゴンメイドは肩をすくめてそう答えた。……しかしこの時、魔物使いの青年はワイバーンのドラゴンメイドが名残惜しそうにリョウが持つ壺を横目で見ていたのを気づいていた。


「それでリョウさん? さっきウィンはその壺を神術を使うための道具って言いましたけど、それが開祖の兄が使ったという絶対服従の神術なのですか?」


 今までの話から確信を持ってアルハレムが訊ねるとリョウの眉が僅かに上がった。


「……それを知っているということは、すでにコシュ殿から大体の事情は聞いているのですね」


「はい。魔物達の凶暴化の原因が大昔に封印された魔女の影響であること。その魔女が自分の主である成鍛寺の開祖の兄に対する怒りとエルフの神術によって暴走していること。それぐらいはついさっきコシュさんに教えてもらいました」


「そうですか。それならば話は早い。お察しの通り、私が持っているこの壺こそがその昔、成鍛寺の開祖の兄が自分に従う魔女に使った神術なのです」

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