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第二百四十二話

「貴方達! 何でこんな所にいるのよ!?」


「お前は……リン」


 成鍛寺の本堂に現れたのはエルフの領主の娘リンだった。


「リン様? 彼らは?」


 リンの右後ろに控えていたエルフの男がリンに訊ねる。エルフの男は子供にしか見えないリンとは違って二十代半ばくらいの外見でどこかのんびりとした雰囲気を持っており、両手で布にくるまれた包みを大切そうに持っていた。


「……前に言ったでしょ? わざわざ中央大陸からやって来た冒険者とその僕の魔女達よ」


「私は魔女じゃないわよ」


 リンが不機嫌そうにアルハレム達を見ながらエルフの男に答えると、リンの視線を気にくわないと思ったアリスンが苛立った声で反論する。


 そして相手を見下すような目をするリンに苛立っているのはアリスンだけではなくリリアを初めとする魔女達も同じで、成鍛寺の本堂は戦乙女と魔女達の怒気によりたちまち重苦しい空気となる。しかしリンの後ろに控えているエルフの男はそんな中でものんびりとした態度を崩さず納得したように頷く。


「魔女達を僕にする冒険者……成る程、ではそちらの方は魔物使いなのですね。いやぁ、本当に良かった。魔物使いの冒険者さんが見つかっていたのなら、私達も『これ』を持ってきた甲斐がありましたよ」


「これって? と、言うより貴方は?」


「ああ、これはどうもすみません。自己紹介が遅れました」


 アルハレムに聞かれたエルフの男は小さく頭を下げてから自己紹介をした。


「私はここにいるリン様の父君、エルフの領主であるサン様にお仕えしていますリョウと申します。そして今言った『これ』というのは……」


「ちょっと! 一族の秘宝をこんな奴らに見せるつもり?」


 エルフの男、リョウが先程から持っている包みをほどいて中身を見せようとするとリンがそれを止めようとする。


「そうは言いますがリン様? 魔物使いの冒険者ということは彼らが封印されている魔女を助けてくれる方々なのでしょう? でしたら早い内にこれの事も話しておくべきでは?」


 少しばかり困った表情を浮かべるリョウの言葉に、リンは苛立ちを隠そうともせずまるで噛みつくようにリョウを見て口を開く。


「だからって! そもそも私は魔女なんかを助けることには納得して……」


「リン様」


 突然リョウが表情を真面目なものに変えてリンの言葉を遮る。


 リョウの口から出たのはたった一言。怒鳴った訳でもなくただリンの名前を呼んだだけだったが、有無を言わせない圧力があり、リンも思わず苛立ちを忘れて黙ってしまった。


「過去の魔女の暴走は成鍛寺と私達エルフ両方の責任。故に私達エルフは封印されている魔女を救う事に協力を惜しまない。……これが領主サン様の決定だったはずです。その領主の決定に逆らうのですか? 領主の娘である貴女が?」


「そ、それは……」


 リョウの言葉にリンは何も言い返す事が出来ずに目を逸らし、それを見ていたリリアがアルハレムに近ずいてそっと彼に呟いた。


「あのリョウってエルフ、リンをああもあっさり黙らせるなんて中々やりますね。エルフにしては話せる人なのではないです?」


「そうだな」


 リリアの呟きに彼女と同じ感想だったアルハレムは頷いた。

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