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第二百三十九話

「開祖の兄を食い殺しても魔女の暴走は収まらず、それから魔女は目についた魔物を手当たり次第に狂化して、この地に災いをもたらそうとしました。しかし成鍛寺の開祖はエルフ達と、とある封印の神術を使う戦乙女の協力を得て、強化された魔物達を退治して魔女を封印したのです」


「……封印の神術を使う戦乙女? それってもしかして……」


 コシュの話に出た「封印の神術を使う戦乙女」という言葉にリリアがわずかに眉をひそめて呟いたが、その呟きは誰の耳にも届いておらずコシュはそのまま話を続けた。


「魔女を封印した後、エルフ達は開祖にこの件を口外しない代わりに、魔女を封印した地を含む広大な土地の所有権を与えるという話を持ちかけてきました」


「成る程。話を聞いたかぎりだと、そのエルフの協力者とやらも開祖の兄と同罪でござるからな。見栄っ張りなエルフ達としてはどんな条件を出しても秘密にしたいでござろうな」


 ツクモが納得したように頷く。


 今ツクモが言った通り、エルフの協力者が開祖の兄に絶対服従の命令を下す神術を伝えなければ、話に出た魔女も魔物達も「命令に従わない」という選択肢が残されて魔女が暴走することもなかったかもしれない。


 無論、エルフの協力者が神術を伝えなくても、開祖の兄は魔女と魔物達を道具扱いしたであろうし、同じ結果になったのかもしれない。しかしエルフの協力者が神術を伝えたことが魔女の暴走の切っ掛けを作ったのは紛れもない事実である。


 そしてこれもツクモの言った通りなのだが、エルフという種族は総じて見栄っ張りと言うか自尊心が高い。


 寿命が他の種族に比べて非常に永く、産まれて来る子供は全員、身体能力も高い上に顔の造形が大変整っている。これらの理由からエルフに生まれた者達は「自分達の種族、エルフこそが至高の種族である」と考えて他の種族を「 エルフでない」という理由だけで見下す者が多いのだった。


 そんなエルフ達だからこそ「一人のエルフがヒューマンの冒険者に協力したせいで魔女の暴走が起こった」という話が知られるのはなんとしてでも防ぎたかったのだろう。


「そうして広大な土地を与えられた開祖は魔女を封印した地、即ちこの山に成鍛寺を建てました。開祖がこの地に成鍛寺を建てた理由は、兄のような間違いを二度と起こさないといった戒めの他に、犠牲になった魔物達や封印された魔女に少しでも謝罪をする為だったのでしょう……」


「ここに封印された魔女がいるのですか!?」


 コシュの話を聞き終えたアルハレムは、この成鍛寺がある山に魔物を凶暴化させている原因であるコシュの話に出てきた魔女が封印されている事に驚くが、他の仲間達はその事に驚かず別の事に気を取られていた。


「……要するにアルハレムとは似ても似つかない屑な魔物使いの冒険者と、今も昔も人様に迷惑をかけるエルフが原因でこの国は今、大変な迷惑をかけられているということなんです?」


「え? そこ?」


『……………………』


 リリアの身も蓋も無いまとめに呆気に取られたアルハレムを除いた仲間達が同時に頷いたのだった。

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